Web標準技術はビジネスをどう変えるか

先日7月15日に六本木ヒルズで行われたイベント「Web標準の日」において、当日の最終プログラムであるパネルディスカッション「Web標準はビジネスをどう変えるか」に、パネラーとして参加してきました。時間の関係で不完全燃焼になってしまったことを受けて、このエントリで僕の意見をまとめておこうと思います。

web標準の日 パネルディスカッション

実装技術はあくまでも道具にすぎない

セッション冒頭で森田さんによって「Web標準でビジネスが変わることはない。Web標準はあくまでも道具であって、コミュニケーションとは別」といった意味の発言がありました。僕はこれに完全に同意しています。

Web標準はあくまでも「実装技術」のスタンダードにすぎず、メッセージやコミュニケーションとは別のレイヤーの話です。ユーザーにとって(また企業にとって)重要なのは、メッセージやコミュニケーションや各種の体験なのであって、それがどんな技術で実装されているかなどはまた別の話です。

ビジネスを左右するポイントは、伝えたいメッセージは何か、誰に伝えたいのか、それをどう表現するのか、会社や商品とユーザーのコミュニケーションをどう設計するのか、といった、メッセージとコミュニケーション中心です。裏側の実装技術がビジネスを左右するのではありません。Web標準だのAjaxだのFlashだのといった実装技術を中心にしていては、何かを踏み外してしまうでしょう。

森田さんが言いたかったはこのことかもしれませんし、違うかもしれませんが、僕が考えるところでは「Web標準くらいのことではビジネスは変わらない」というところです。

技術のことを考えずにビジネスできる未来へ

それを踏まえて次に進みたいのですが、ビジネスの基盤としてインターネットが定着していく過程においては、僕はWeb標準技術は少なからぬ貢献をするのではないかと考えています。それはWebは情報インフラとして機能するための前提のようなもので、それが定着してはじめて、誰もが「技術を意識せずに」そこでビジネスを展開できるようになる、というような考えです。

実装技術よりもメッセージとコミュニケーション。これがビジネスのあるべき姿だと思うのですが、現実のWebはそうはなっていません。その状況が改善されるために、Web標準技術が貢献するのではないか、ということです。

例えば電波媒体の場合で、テレビやラジオが放送局ごとに微妙に異なる技術仕様で放送を行っていて、受信機によって視聴できる放送局に制限がある、といった状況だったとしたら、そこで広告を流そうとする会社も技術仕様を意識せずにはいられません。

しかし、実際には、放送も受信も決められた標準仕様に基づいて行われているため、広告を流したい会社は技術のことは考えずに、受信者に届けるメッセージやその表現に専念することができます。ところが、Webはまだこの段階にまでは達していません。

ビジネス上の要請によってWeb標準は普及する

現状のWebにおいては、ブラウザの標準準拠の状況がおもわしくなかったり、その影響で完全に標準に準拠したページを制作できなかったり、といった状況があります。また、Webの大きな魅力の一つは「情報共有の手軽さ」ですが、手軽にWebページを生成できるツールのほとんどはWeb標準に準拠していない、といった状況もあります。

これらを理由として、どんなユーザー環境であってもすべてのページを過不足なく利用できる、といった理想的な環境はまだできていません。しかし、これからWeb標準が一般化するにつれて、Webはビジネスの基盤としてより使い勝手の良いものに成長していくのはほぼ間違いないでしょう。

つまり、ブラウザの標準準拠、Webページの標準準拠、オーサリングツールの標準準拠、といった環境が整備されていくにつれて、Webはビジネスの基盤としての機能を高めていく、と僕は考えています。

逆に言えば、メッセージやコミュニケーションの伝達といったビジネスに必要とされる環境を整えるべく、ビジネス上の必要に迫られてWeb標準技術が浸透していくのであって、いわば「Web標準がビジネスを変えるのではなく、ビジネスがWeb標準を変える」のだと、僕は考えています。

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