キーワードやマークアップの調整といった小手先のSEOテクニックは、伝えたいメッセージが貧弱な場合には、手間に見合うだけの効果はありません。しかし強力なメッセージがあるときには、いくらかの有用性もあります。それは「コンテンツをいくらかよく見せる」演出のようなもので、それが過剰になりすぎず、ほどよく使われる限りにおいては、うまく使えばコンテンツの魅力をより多くの人により強く伝える演出として機能します。

僕はこのサイトを立ち上げ最初のSEO書籍を出版した2002年当時から、何度も繰り返し「小手先のSEOテクニックは一時的なもの。最終的にはコンテンツで勝負すべき」というようなことを述べてきました。つい先ほどのエントリでもほぼ同様のことを述べています。

ユーザーの視点だけでなく検索エンジンの視点も意識しながらサイトを制作するのはよいことですが、ユーザーよりも検索エンジンを優先したサイト運営は本末転倒であり、チマチマしたSEOのテクニックを研究したり、高いお金を払って専門の業者に依頼したりするくらいなら、そのコストをコンテンツに振り向けた方が将来的にはプラスになる、というようなことです。

こういった僕の言動から、僕は小手先のSEOのテクニックを否定する立場にあると思われがちですが、実際はそうでもありません。僕は小手先のSEOを完全に否定しているわけではなく、使いどころさえ誤らなければ、または注力する度合いをそれなりにとどめておけば、小手先のSEOであっても十分に有効なものだと考えています。

ソースコードのチューニングなどに代表される小手先のSEOは、検索エンジンに対して「コンテンツを実際よりもいくらか優秀なものに見せかける」テクニックまたはトリックです。サイトの制作や運営に際して、こうしたテクニックやトリックに対するウエイトを大きくし、肝心のコンテンツが疎かになるようでは問題ですが、ほどよい活用であれば必要性はあるものです。

虚偽と演出はまったく別のもの

小手先のSEOはあくまでも「実際よりもいくらかよく見せる」という程度のものであり、粉飾決算のような虚偽とはまったく性質が異なります。例えば、女性のほとんどは化粧をしますが、これも「実際よりもいくらかよく見せる」トリックだと言えるでしょう。虚偽や詐欺のような犯罪行為とは一線を画すものです。

また、食事を楽しむ際には、もちろん料理が中心ですが、料理だけでなく食器や場の雰囲気も重要な役割を果たします。この場合の食器や場の雰囲気もまた「実際よりもいくらかよく見せる」トリックです。多くの人が、就職活動を行う際や客先を訪問する際などには身だしなみを整え、面接のリハーサルをしたりしますが、これも同様です。

こうしたものは、虚偽、偽装、粉飾といった文脈ではなく「演出」として使われるもので、害がないばかりかプラスの効果があります。内面や内容や実質に磨きをかけることが重要なのは当然ですが、だからといって「実際よりもいくらかよく見せる」ということが即、糾弾すべきこと、とはなりません。場合と程度によっては必要なものでしょう。

もちろん中には、化粧にばかり時間やお金をかけて内面には投資しない粉飾決算のような女性もいるでしょうし、食器や店ばかり豪華で料理はお粗末な飲食店もあるでしょうし、テクニックだけで面接や営業を切り抜けようとする中身のない人もいるでしょう。一部にそういう人がいるからと言って、「化粧品は悪」、「豪華な食器は悪」、「対人テクニックは悪」とはなりません。

それが効果的に働くか、または粉飾決算のようになるか、ということは、あくまでもそれらを使う人の問題なのです。そして、内面や実質がともなっていれば、「実際よりもいくらかよく見せる」トリックやテクニックは効果的に働きます。使いどころさえ誤らなければトリックもテクニックも価値のあるものなのです。

より多くの人により強く伝える演出

会議の場などでプレゼンテーションを行うシーンを考えてみましょう。まったく同じ内容のプレゼンテーションだったとしても、プレゼンテーターによってその印象がガラリと変わってしまうようなことはよくあります。

プレゼンテーターのパフォーマンスが悪いために、その内容までもが悪い評価を受けたり、または伝わらなかったり、といったことは頻繁に起こりますが、これはたいへん残念なことです。その内容がよいものであればあるほど、より効果的なプレゼンのスキルをもって、より多くの人により強く伝わるようなプレゼンテーションを行うことが求められます。

僕にとっては、小手先のSEOもこのプレゼンテーションのようなもので、内容や実質がともなっているなら、より多くの人に、より強くメッセージを伝えるべきで、これがウェブサイトであれば、「より多くの人に」というのが広告やSEOやアクセシビリティの役割であり、「より強く」というのは配色や文章のライティングやデザインなどの役割であると考えいます。

もちろん、コンテンツ自体が最も重要であることには違いはありませんが、SEOもアクセシビリティも配色もデザインも「より効果的に伝える」ためのトリックであり、内容や実質と同様に重要なものなのだと僕は考えています。過剰なSEO(過剰な配色やデザインも)は誰にとっても好ましくないでしょうが、ほどよいSEOなら、使いどころはあるものです。