インターネットがこれほどまでに普及した今、それがメールであれブログであれ、ある程度まとまった量の文章を書くスキルの重要性は、たぶんかつてなかったほどに高まっていると言っていいでしょう。ことにWeb上では、書かない・書けない人は、存在を知られることすらないままに忘れ去られてしまいます。この記事では、書くスキルを身につける非常に簡単な方法をお伝えします。

書くスキルを身につけるための本の読み方

書くスキルを身につけるための簡単な方法をお伝えする前に確認しておきたいことがあります。それは、よくいわれる「書くスキルを身につけるためにはひたすら書くしかない」というのは正論ではあるものの、その最初の「ひたすら書く」時点で多くの人がコケる、ということです。そもそも、難しいのは書くことそのものではなく、書くべきことを見つけ、それを文章としての論理展開に落とし込むことです。

書くべきこともなく、それを表現するための論理展開もないような手探りの状態では、いくら真っ白な紙や空白のテキストエディタに向かったところでまともな文章が書けるはずもなく、そうして駄文をいくら書き連ねたところで、文章が上達することもありません。つまり「ひたすら書く」なんていう方法は、もう少し基礎的な要件ができている人の話なわけです。

そこでお勧めしたいのが「書くスキルを身につけるための本の読み方」です。具体的にどんなことをするのか、といえば、それは次の通りです。

  1. たまに立ち止まり、次の展開を数十秒から1分程度で予測する
  2. 自分なりの予測ができたら、続きを読み進める

これだけです。しかも、読み進めた結果として予測が間違っていても構いません。次の展開を予測する、という作業は、小説を読んでいるときには、たいていの人が自然にやっているはずです。

それは例えば、悪者に捕らわれたヒロインはこの後どうなってしまうんだろう、殺されるのかな、ヒーローが助けに来るのかな、それとも自力で脱出するのかな、ヒロインは強い女で、隠し持ってた道具は見つかってないから、自力脱出のセンが濃厚かな、きっとあの道具が役に立つんだろうな、という具合です。

この作業はつまり、そこまで読んできた内容に含まれていた要素を元に、次の展開を予測する、という作業なわけですが、これこそがまさに、書くスキルの根幹です。論理展開を積み重ねて結論まで持っていく、というのが書くことだとすれば、そのスキルはまず読むこと、そして読みながら展開を予測することによって鍛えられていきます。

論理展開を把握する力と、構成する力を鍛える

書くスキルというのは、結論に到達するまでに必要になる要素を順序よく並べ、論理展開を破綻させることなくスマートに結論まで導く構成力のスキルです。考えるスキルと言い換えてもいいかもしれません。当然ですが、闇雲に書きまくって身につくものではありません。

必要なことは、論理展開を把握する力、構成する力を鍛えることであり、それは「既読の要素を元に先の展開を予測する読書」という簡単なことを日々実践するだけで身につきます。

もちろん、読むのはどんなものでも構いません。ビジネス書でも小説でも学術書でも新書でも、場合によっては漫画でもいいでしょう。質の高いものであれば、ブログでもいいかもしれません。ビジネス書や新書は論理展開がリニアで明快なので、既読部分の論理展開を把握しやすく、したがって次の展開を予測するのも容易なため、初心者に最適です。

その一方で、小説はトリッキーです。結末を予想されないように、ミスリーディングを誘う伏線が張り巡らされ、結末につながる伏線は巧妙に隠されている上に、結末は読者の予想をよい意味で裏切るべく趣向が凝らされています。この意味で、小説を使った訓練は上級者向けだと言えるでしょう。ある程度書くことに慣れている人にお勧めの方法です。

ときには、次の展開を予測しようとしても、まったく予測がつかないことがあるかもしれません。それは頭が悪いのではなく、次の展開につながる既出の要素を読み落としている可能性があります。主にビジネス書の読者で、結論や要点だけを拾い読みするような読書法が身についてしまっている人は、こういう問題を起こしやすいようです。

そういう僕も、わりと長い期間ビジネス書ばかり読み漁り、そのほとんどは拾い読みや流し読みだったのですが、これはいま思えばとてつもない時間の無駄でした。そんな読み方では、知識だけは詰め込まれるものの、構成を把握する力も考える力も書く力も身につかず、要するに検索すれば済む程度の知識のために時間を浪費したとしか言えません。

次の展開を予想する読み方で構成力が身につく

僕は先ほど「結果として予測が間違っていても構いません」と書きました。次の展開を常に正確に言い当てる必要はないのです。異なる展開を予測したとしたら、それはあなたが頭の中でオリジナルを書き上げたということであり、それはまさに、書くスキルがつきつつあることを意味しています。

そして、もしあなたの予測した展開のほうが、著者が記した展開よりも面白いようなら、あなたの書くスキルはかなりのものに育ったと自己評価してよいかもしれません。普通はそこまではいきませんが、それでも、ただ立ち止まって先を予測する習慣をつけるだけで、書くスキルは目に見えて上がるものです。

このような読み方をしても、それによって余計にかかる時間はごくわずかですし、それで失うわずかな時間以上に、得られるものは大きいでしょう。先を予測するために自然と読みこなしは深くなりますし、予測するという作業を通じて考える力が養われますし、論理展開を予測することで書くスキルが向上します。しかもこの読書法は、読書そのものをより深くより楽しいものに変える力すら持っています。

ちなみに、話の先を読む、ということで言えば、それは会話やtwitterで誰でもいつもやっていることでもあります。しかしそれは、論理展開の予測というよりはもう少し情動的なものなので、感情や行間を読むスキルに近く、したがって書くスキルや考えるスキルを鍛えるのとはまた別の種類の訓練です。書く力、考える力を鍛えるのであれば、そこはやはり本を読むことが最良の解でしょう。

読むスキルと書くスキルは同時に身につく

ここまで僕は、書くスキルを身につけることを中心に、簡単な読書法を紹介してきましたが、これは同時に、読解力を鍛え、論理的思考を鍛え、考える力を鍛え、構成力を鍛え、そして最終的には書くスキルの基本がしっかりと身につく、というものです。副次的効果は極めて大きいです。よかったら今日から始めてみてください。

おそらくですが、僕が思うに「書けない」という人のほんどは、読み方が根本的に間違っているか、読み方そのものを知らないだけです。ちゃんとした読書法さえ実践していれば「読み」と「書き」はセットで身についていくものです。