サイトパフォーマンスとはウェブサイトの表示速度のことをいい、サイトパフォーマンスの最適化とは、サーバの反応速度(レスポンス速度)、ページやその構成要素の読み込み速度(ロード速度)、そしてブラウザによる画面描画速度(レンダリング速度)などのそれぞれを高速化することをいいます。

Google がサイトの速度をランキング指標に採用した理由

2010年の春に Google がサイトの速度をランキングに取り入れたことを発表してからかなりの時間が経ちましたが、この課題に積極的に取り組んでいるサイトはそれほど多くないようです。おそらくこれは、速度がランキングに与える影響がそれほど大きくない(先のソースによれば検索全体の1%未満)ためでしょう。

確かに、コンテンツの品質という文脈では、サイトパフォーマンスと品質の間にあまり強い関係はないかもしれません。しかし、ページやサイトの品質という文脈であれば、パフォーマンスの高さは品質と大いに関係します。

検索ランキングに与える影響が小さいことを理由にサイトパフォーマンスの改善に取り組まないというのは、適切な判断ではありません。なぜならサイトの速度はユーザーがサイト上で最初に体験するものであり、サイト上でのその後のすべての体験に付随するものだからです。

遅いサイトを好むユーザーはいません。遅いサイトでは良好なユーザーエクスペリエンスは得られないからです。このことを検索エンジンから見れば、遅いサイトを検索結果に表示することは、検索ユーザーの体験を悪化させることを意味します。

  • 優れたユーザーエクスペリエンスには、高いサイトパフォーマンスが不可欠である
  • 検索エンジンは検索者に対して、優れたユーザーエクスペリエンスを提供したい
  • サイトパフォーマンスの高いサイトには、高いランキングを与える価値がある

これが Google がサイトの速度をランキング指標に用いる理由です。そしてサイト運営者にとっては、サイトパフォーマンスには単なるランキング指標以上の意味があります。なぜならサイトの速度は、検索経由だけでなくすべてのトラフィックに関係するものだからです。

ユーザーエクスペリエンスとサイトパフォーマンス

この項では基本的かつ実際的なユーザーエクスペリエンスについて掘り下げていきたいのですが、その前に、そもそもユーザーエクスペリエンスとは何かということを確認しましょう。ユーザーエクスペリエンスは ISO 9241-210: 2010 で次のように定義されています。

  • ある人物が製品またはシステム、サービスを使用するにあたって、その結果として得られるまたは予期される知覚と反応のすべて
  • a person’s perceptions and responses that result from the use or anticipated use of a product, system or service

上記はさまざまな製品やサービスの利用も想定した定義であり、適用範囲が広く、いかにも難解です。そこでウェブサイトだけに限って考えると次のようになるでしょう。

  • ユーザーがサイト上で体験することや体験できないこと、またはその結果として得られる感情的・知識的な変化のすべて

上記を価値創造の観点からよりわかりやすくしたものとしてよく知られているのが、情報アーキテクトとして知られ、数々の有益な(どれも必読の)著書を持つピーター・モービルが 2004年に提唱した「The User Experience Honeycomb(ユーザー・エクスペリエンス・ハニカム)」モデルです。

The-User-Experience-Honeycomb

このモデルでは ユーザーが感じる価値(valuable)を中心に、ユーザーエクスペリエンスを構成する6つの要素が配置されています。これらの6つの要素は、次のように2種類に分けて考えることができます。

可能性(Perceived Affordance: 体験できるか)
  • usable(利用できるか)
  • findable(見つけられるか)
  • accessible(到達できるか)
実用性(Utility: 実用性はあるか)
  • useful(役に立つか)
  • desirable(望ましいか)
  • credible(信頼できるか)

上記のそれぞれが十分に満たされた結果、ユーザーにとっての経験価値が創造される、という考え方です。

この考え方は非常に素晴らしいものである一方で、ともすれば抽象的、概念的になりがちな側面を持っており、ユーザーエクスペリエンスについての議論のほとんどは高尚かつ難解なものが多い印象をぬぐえません。

しかしここで最も根本的な部分として注目すべきことは、サイトパフォーマンスが低ければ上記の7項目のすべてが達成できないというシンプルな事実です。読み込みの遅さは、ユーザーエクスペリエンスに関するほかのあらゆる努力を無駄にします。

新しいページを開くたびに何秒も待たされるサイトは、利用しにくく、必要なものを見つけにくく、ユーザーの環境や状態によっては目的のものに到達できず、したがって役に立つ機会は減り、望ましい結果は得られにくく、信頼もおきにくいものです。もちろん高い経験価値は得られません。

ユーザーの集中力の持続と、サイトの無礼な振る舞い

紙や電波などの他のメディアと異なり、ウェブはユーザーが主体的に操作するメディアであるため、反応の悪さはいくつもの問題を引き起こします。ニールセン博士による記事 Website Response Times和訳)では、サイトの反応の悪さが問題となる理由を次のように説明しています。

  • 人間の限界、特に記憶や注意力の分野において。待たされることによって、短期記憶に蓄えられた情報の劣化が避けられなくなってしまい、パフォーマンスが落ちてしまう。
  • 人間の願望。コンピューターの思いつきに動かされるのではなく、自分の運命は自分でコントロールしていると感じたい。また、企業のサービスがすぐ提供されず、待たされることになると、その企業が無礼であるか、あるいは無能であるかのように感じる。

てきぱきとしたユーザーエクスペリエンスは見かけの華やかさに勝る。というのも、単純にいって、人々は自由に動けて、いつ終わるともしれず待つ代わりにコンテンツに集中できるときに、サイトにより多く関与するものだからである。

ユーザーがサイトを利用するときには、情報を取得することやトランザクションを実行することなど、何らかの目的を持っています。この目的を達成するためには集中力が途切れないことが重要ですが、長いページのロード時間に待たされれば、ユーザーの集中力を削がれます。

そして、それがオンラインであってもオフラインであっても、またはビジネスであってもプライベートであっても、お客様をお待たせするのは失礼なことです。この意味においてユーザーは、読み込みが遅く待たされるサイトに対してロイヤリティを形成することはないでしょう。

こうした問題は、企業のサイトにおいては競争優位性と収益性を低下させる重大な問題です。

サイトパフォーマンスがもたらす競争優位性

サイトのパフォーマンスは企業サイトの競争優位(または競争劣位)に直結します。米Aberdeen Group による 160を超える企業を対象とした 2008年の調査では、次のような結果が出たといいます。

ページの表示が1秒遅れると
  • 成約が7%減少する
  • ページビューが11%低下する
  • 顧客満足度が16%減退する

performance-cost

この調査結果はつまり、遅いサイトは利益だけでなくロイヤリティやブランドも毀損するということを表しています。まだ同調査ではさらに、次のようなことも伝えています。

  • ユーザーのうち57%は、ページの読み込みが3秒を超えると離脱する
  • そのうち80%のユーザーは二度と戻ってこない
  • さらにそのうちの半分は、自分のネガティブな体験について他の人々に伝える

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検索エンジン各社も、特定のユーザーグループを対象に検索レスポンスを故意的に遅延させてその反応を見るという実験を通じて、その結果について公式のレポートを公表しています。それぞれ次のようなものです。

  • Google では検索レスポンスが 0.4秒遅延すると、ユーザーあたりの検索回数が 0.59%減少する(ソース
  • Yahoo! では 0.4秒遅延すると5から9%のトラフィックを失う(ソース
  • Bing では検索レスポンスが 2秒遅延すると、ユーザーあたりの検索回数が 1.8%減少し、利益は 4.3%減少する(ソース

ECサイトにおけるサイトパフォーマンスの影響

サイト上でトランザクション(決済)までを完結できるタイプのECサイトにおいては、サイトパフォーマンスの問題はより強烈な形で数値に表れます。ECサイトにおけるサイトパフォーマンスの影響が及は、次のそれぞれのレポートに現れています。

サイトパフォーマンスの話題になると必ず引用される「Amazon.com では表示が0.1秒遅くなると売上げが1%減少する」という有名な報告は、Greg Linden による Make Data Useful(PPT) という資料によるもので、原文では次のように表現されています。

Make-Data-Useful

ECについてはさらに、Forrester Consulting による白書 eCommerce Web Site Performance Today(PDF)で、興味深い調査結果が数多く報告されています。例えば次のようなものです。

  • 52%のユーザーは、サイトの読み込みの速さを重視して同じECショップを利用し続けている
  • 18%のユーザーは、サイトが遅すぎることを理由に決済の途中で離脱している
  • 47%のユーザーはページが2秒以内に表示されることを期待しており、40%のユーザーは3秒しか待てない
  • ページの表示が遅いとほとんどのユーザーは別のことを始める。39%のユーザーはメールなどほかの仕事にかかり、14%のユーザーはほかのショップサイトで買い物を始め、7%のユーザーはブラウザを閉じて買い物そのものを止める
  • 買い物の途中でサイトパフォーマンスに不満を持ったユーザーの79%は、二度とそのサイトで買い物したいとは思わない

今すぐに取り組まなければならない理由

サイトパフォーマンスの改善は、今すぐにでも取り組む必要があります。それは今この瞬間にも機会損失が発生しているという理由だけではありません。改善がなされたとしても、損失が将来にわたって続く可能性があるためです。

Google は Speed Matters for Google Web Search(PDF) の中で衝撃的な報告をしています。

Google の実験は検索結果の表示を意図的に遅らせ、ユーザーの反応がどう変化するかを観察するというもので、遅延を発生させられたユーザーの反応については先ほど紹介した通りです(0.4秒の遅延でユーザーあたりの検索数が0.59%減少)。ところが問題はその後です。

0.4秒の遅延を体験させられたユーザーは、遅延が解除された後の5週間の平均で、検索回数が通常時より 0.21%少なかったというのです。これが意味するところは、悪いサイトパフォーマンスを体験させられたユーザーは、その経験が長期間にわたって行動に影響し続けるということです。

つまり今すぐサイトパフォーマンスが改善されたとしても、改善前の状態の影響を受けているリピーターが本来の利用水準になるまでには、ある程度の時間が必要となるわけです。悪いユーザーエクスペリエンスによって失った信頼は、それだけ大きいということなのでしょう。

一刻も早い信頼回復のためには、一刻も早いパフォーマンスの改善が必要です。改善のための取り組みは中小規模のサイトならそれほど難しいものではなく、実施に役立つ情報もツールも揃っています。

サイトパフォーマンスの改善を実施する

サイトの制作や運用の経験がある程度あり、これから最初の取り組みを始めるという場合には、Google が提供している PageSpeed というツールの利用がお勧めです。PageSpeed は ブラウザにインストールするタイプオンラインで利用するタイプがあり、いずれも日本語化されています。

まずはとりあえず、オンラインで利用できる PageSpeed Insights にアクセスし、管理しているサイトのURLを入力して診断を実行してみましょう。サイトの状況に合わせた高速化のための提案が日本語で表示されます。

提案は優先度の高いものから順に表示されており、改善の方法もごく簡単にですが示されているので、それにしたがって作業を進めるといいでしょう。なお提案の詳細については、ブラウザにインストールするタイプのほうが少しだけ詳しい説明が表示されます。

また Firefox ブラウザ向けには、米Yahoo! が提供している YSlow というアドオンがあり、これは今のところ英語版しかないようですが、先ほどの PageSpeed では提案されない改善策もいくつか提示されるので参考になります。

すでにある程度サイトパフォーマンスの改善に取り組んでいるサイトがより緻密な改善を実施したいという場合や、まったくの初心者が体系的に知識を得たいという場合であれば、そのための専門の書籍をあたるのが近道になるかもしれません。

しかし、ほんの少し英語が読めれば、ほとんどすべての情報はネット上で入手できます。今後は日本語の情報も増えてくるでしょう。まずはツールなどを使い、取り組みに着手することを優先するのがよいと思います。

とにかく重要なことは、できるだけ早くサイトパフォーマンスの改善に取り組み、ユーザーエクスペリエンスを向上させることです。ユーザーが求めているものを可能な限り速く表示することは、ユーザー中心のサイト運用の第一歩です。