適切に情報が整理され、ユーザーにとってわかりやすく構成されたサイトは、検索エンジンにも高く評価されやすくなります。適切に情報が整理されていれば、検索エンジンがサイトやページの情報を取得する際や、内容を解析する際の処理を正確に行うことが可能になるためです。
ユーザーを迷わせない情報設計
ユーザーがサイト内を移動する際に、迷わず目的の情報に到達することができるように配慮された情報設計は、サイトに不慣れな検索経由の訪問者にとって重要であるだけでなく、適切な情報の分類やそれらのリンク構造は検索エンジンによる適合度の計算を助けます。
論理的な整合性が十分に取られ、かつユーザーが直感的に理解しやすいようなメニュー構成や階層構造をサイトに持たせることは、ユーザビリティの向上と検索からの集客増につながり、ひいてはサイトの目的の達成に近づきます。
連続構造、階層構造、網目構造のモデル
情報設計には3種類の代表的なモデルが存在し、それぞれ連続構造、階層構造、網目構造などと呼ばれています。下の画像はそれぞれの構造を簡単に図示したものです。
- 1. 連続構造(シーケンス構造)
- 情報の配置の方法として最も身近でわかりやすい方法です。先頭から順に閲覧していくことを意図した構造で、書籍や動画などはほとんどこの構造です。ウェブサイトにおいては、チュートリアルのようにステップ・バイ・ステップで進んでいくコンテンツに適しています
- 2. 階層構造(ヒエラルキー構造)
- 様々な種類の大量の情報を組織化し、整理するのに最も適した情報構造です。図書館目録やディレクトリ検索に用いられているほか、ほとんどのウェブサイトはこの方法で情報を整理しており、ネット上では最もスタンダードなものとなっています
- 3. 網目構造(ウェブ状構造)
- 関連性や連想、文脈などに基づいてドキュメントを接続していく情報構造で、ウェブ以外ではほとんど見ることのできない構造です。階層を跨ぎ超えて動線を提供することに特長があり、本文中に挿入される参照リンクや、文末に表示される関連記事のリスト、関連商品を紹介するレコメンデーションリンクなどがその典型です
わかりやすい階層構造の設計
多くのサイトで採用されている優れた設計方法である階層構造では、個々のコンテンツがそれぞれの関連に基づいて適切な小グループに分類され、それらが集まって大グループを形成し、大グループが集まってサイト全体を形成する、という形でサイト内の情報を階層状に整理します。
この場合それぞれの分類は、ユーザーが直感的に理解することができるように、わかりやすく分類されている必要があります。このような分類については、Yahoo!カテゴリの構造を想像していただければわかりやすいでしょう。わかりやすい階層構造の設計をおこなうことで得られる利点は次のようなものです。
- ユーザーがサイト内で移動しやすくなる
- ユーザーが目的の情報を発見しやすくなる
- 検索エンジンがテーマに基づく評価をしやすくなる
グループを形成する個々の情報がまちまちであるなど、整合性に欠ける分類が行われていた場合、ユーザーは目的の情報があるページを探すことが困難になりますし、検索エンジンは適切にテーマの分析を行うことが困難になります。これらの点に注意し、わかりやすいサイト設計を行っていくことが重要です。
ユーザーの視点で情報を分類する
情報の分類方法を考えるとき、製品やサービスを取り扱っている部署ごとの分類や、製品の型式番号による分類のように、ユーザーの視点を欠いた分類では、検索結果からアクセスしてくるユーザーのような、そのサイトに不慣れなユーザーが的確に目的の情報にたどり着くことができません。
- 悪い分類の例
- サイトを公開している企業の社内的な都合による分類
- 分類を理解するために予備知識が必要な分類
コンテンツの分類はユーザーの立場と視点で、ユーザーの直感や期待に合致するものである必要があります。社内の都合でおこなわれた分類がユーザーにとって直感的であることはあまりありません。
検索エンジンからサイト内の深い階層のページに直接アクセスしてきたユーザーであっても、迷うことなく関連した情報や商品を的確に見つけられるように、ユーザーの視点を取り入れた情報の分類が必要です。
- 社内的な都合での分類(悪い例)
- 樹脂製品 | 金属製品 | 繊維製品
- ユーザーの視点での分類(良い例)
- 台所用品 | 浴室用品 | トイレ用品
できる限りコンテンツの分散と細分化を避ける
一つのテーマに関連した内容のコンテンツは、できるだけ分散させず、同じ階層の中に置くようにします。同じテーマに関連したコンテンツが階層をまたいで配置されているなど分散して配置されていると、ユーザーはそれらのすべてを探し出すことが難しくなります。ユーザーが必要なコンテンツをすべて発見できるように、まとめて配置しておくことが重要です。
このように一つのテーマに関連したコンテンツをまとめておくことは、テーマにもとづく検索エンジンのアルゴリズムにもよい影響があります。同じテーマに関連した一連のページ群をまとめておくことで、検索エンジンがこれを評価することが容易になるためです。
また、コンテンツを分類・階層化するときには、極端に細分化しすぎないようにします。分類が細かくなるにつれて、ユーザーが分類を直感的に理解しにくくなってくるためです。同様に、階層があまりにも深くなると、ユーザーがそのコンテンツを発見しにくくなります。
- 関連性の高いコンテンツはできる限り同一の階層にまとめる
- 分類・階層化の極端な細分化を避け、ユーザーが情報を発見しやすくする
- 階層が深くなりすぎないようにし、ユーザーが情報を発見しやすくする
連続構造と網目構造の併用で階層構造の欠点を補完する
ここまで説明してきた木構造を用いた分類学的な階層構造は、図書館の目録やディレクトリ検索などに応用され、この意味では広く一般に知られたものです。多くのサイトの情報設計にも採用されています。しかし欠点がないわけではありません。階層構造の欠点は以下のようなものです。
- 制作者が意図した分類とユーザーの認識が常に一致するとは限らない
- 複数のテーマにまたがった話題を扱ったページのように、単一の階層にだけに収めておくことが不自然になる情報が存在する
- 取り扱う情報量が増えれば増えるほど、分類や階層構造が複雑になり、予備知識を持たないユーザーにとって不親切なものになる
こうした階層構造の欠点を補う方法として、連続構造(シーケンス構造)や網目構造(ウェブ状構造)を併用することは有効であり、多くのウェブサイトで実際に、階層構造を基礎にして、連続構造と網目構造を併用する形で設計されています。
上の図は、3種類の情報構造を併用したサイトの典型例です。全体としては階層構造を採用し、部分的には連続構造(黄色の背景の部分)を、そしてナビゲーションでは網目構造(緑色の矢印の部分)を併用しています。
ビデオを早送りしたり参考書を飛ばし読みしたりするのと同じように、ユーザーは常に連続構造に従うとは限りません。同様に、上層から下層へと順序よく階層をたどっていくわけでもありません。
ユーザーは自分にとって必要なものを優先してサイト内を移動できるように、または階層にとらわれることなく関連のある情報に移動できるように、上図でいえば緑色の矢印相当する動線(網目構造による情報整理)を提供することは重要です。
網目構造を形成するリンクの挿入の効果
本文中に挿入される注釈的な参照リンクや、文末に表示される関連記事やおすすめ商品のリストなど、順序や階層にとらわれない補助的なナビゲーションは、サイトの情報構造に網目状の構造を付加し、ユーザーの主体的な移動を助けるとともに、検索エンジンによる適合度の計算を強力に後押しします。
注釈的な参照リンクや関連記事のリストを設置することによる効果は、よく知られているところではWikipediaに見ることができます。Wikipediaでは、本文中にたびたび現れる注釈的な参照のリンクを通じて不足していた知識を補いながら本文を読み進め、記事の最後で関連する他の項の一覧を入手することができます。
一般のサイトにおいても同様に、注釈的な参照リンクは足りない知識を獲得する経路として機能し、文末に表示される関連記事やおすすめ商品のリストは次に取得すべき情報の所在を発見する助けとして機能します。これらは情報の理解を助けると同時に直帰率を下げ、サイト内の滞在時間を延ばす効果が期待できます。
またSEOの見地からも、注釈的な参照はアンカーテキストの形でキーワードとの一致性を検索エンジンに伝えることにつながり、関連記事のリストはテーマの関連性を検索エンジンに認識させることにつながるため、網目構造を形成するリンクの設置は有効であるといえます。
わかりやすさは検索エンジンのためでもある
サイトの情報設計はあくまでも、ユーザーにとってのわかりやすさを第一義として取り組むものです。特に、検索を経由してサイトに訪れるユーザーは、基本的にそのサイトに不慣れであるため、SEOを実施するサイトは特に高いユーザビリティを備えている必要があります。
この記事内でここまで説明した以下の3点は、サイト内でのユーザーの主体的な移動を助け、不足強いた知識を獲得したり、次に取得すべき情報についてのヒントを提示するなど、主としてユーザーを助ける目的で行われるものです。
- ユーザー目線でわかりやすく情報を分類する
- 階層構造を基本に、連続構造と網目構造の利点を活かしてサイト構造を設計する
- 本文中に注釈的な参照リンクを、文末には関連リンクのリストを設置し、ユーザーの知識形成と主体的な移動を助ける
同時にこれらは、ユーザーに対してだけでなく検索エンジンにも有用な情報を提供するものであり、SEOの見地からも極めて重要なものです。積極的に利用することで、人間のユーザーにも検索エンジンにもわかりやすく理解しやすいサイトを設計していきましょう。
Web制作技術の一環としてのSEO
SEOを専門にあつかう業者による施策は、すでに完成しているサイトという制限の中で最大の効果を上げようとするものです。これは制限が大きいだけに、高度な経験的ノウハウが要求されます。
SEOの専門業者が提供しているSEOは多くの場合、サイトが持つ情報そのもののまずさやサイトの情報設計のまずさをHTMLのチューニングによって補うサービスです。HTMLタグをチューニングするだけのSEOでは、サイトの持つ問題点を根本的に解決する助けにはなりません。
しかし一切の制限がなければ、つまりサイトの新規制作やリニューアルのタイミングでSEOを導入するのであれば、それほどまでに高度なノウハウは要求されません。サイトの新規制作やリニューアルのタイミングでのSEO導入であれば、未経験の作業者がプロのSEO技術者以上の効果を上げることも難しくはありません。
まれに耳にする「SEO対策」という言葉に表れているような、後付けの対策は効率的ではありません。ウェブサイト制作技術の一環としてサイトの企画や設計の段階からSEOを組み込み、新規制作やリニューアルに合わせてSEOを実装することで、根本的な部分からの施策を確実におこなうことができます。
このサイトの利用者は、このサイト内であつかうウェブサイト制作技術としてのSEOを導入することで、企画段階からSEOと整合性の取れたサイト制作をおこなうことができます。このため、より確実なSEOの施策が可能になるでしょう。