SEOと一口に言っても、その取り組みには性質の異なる二種類があります。マイナスをゼロにする取り組みと、ゼロにプラスを加えていく取り組みです。これらはそれぞれ目的も手段も異なり、したがって対象となるサイトも異なります。これらの違いを知り、自分のサイトの現状に合った施策とは何かを知れば、すべきことは整理され、制作の方向性は容易に定まるでしょう。

「マイナスをゼロへ」と「ゼロをプラスへ」

SEOの話題を追っていると、次々に新しい話題が飛び込んできます。矢継ぎ早に投入されるアルゴリズムの変更や、次々に登場する便利そうなツールやプラグイン、新しいSEO手法といったものです。しかしそれらの断片的な話題をいくら集めても、では実際「自分のサイトにどう活かすか」という答えは得られにくいのが現状でしょう。

しかしSEOはもっとシンプルなものです。「自分のサイトにいま必要な施策」と考えれば、それほど多くの選択肢はありません。ノイズに惑わされることなく、まっすぐの道をまっすぐ進むだけで、成果はきちんとついてくるものです。

迷いようのない道

多くの情報が溢れている状況が、自分のサイトに必要な施策を見極めることを難しくしているのは間違いないでしょう。しかし、そう複雑に考える必要はありません。SEOの作業内容は、実際はもっとシンプルです。SEOの施策は大まかには次の二種類しかなく、それを状況に合わせて選ぶだけなのです。

これらの違いを知り、自分のサイトの現状ではどちらに取り組めばよいのかを知れば、ちまたに溢れるSEO情報のうち、自分に必要な情報だけを取捨選択することが容易になります。場合によっては、そもそもSEOに取り組むべきではないと気付くかもしれません。以下の項では、上に紹介した二種類の取り組みのそれぞれについて解説します。

マイナス評価を正当な評価まで引き戻す施策

技術的なアプローチが採られるこの施策は、言い換えれば「テクニック指向SEO」です。何からの技術的な問題が原因となって検索エンジンからの評価が下がってしまっている場合に、その問題を特定し、技術的に解決していくというのがこの施策です。

ペナルティを受けているケースが典型ですが、そのサイトが抱えている問題が深刻なものであればあるほど、短期間に目覚ましい結果を出すことができます。一方それほど深刻な問題を抱えていないサイトであれば、わかりやすい結果を得ることは難しいでしょう。どちらにしても、このテクニック指向SEOでは、そのサイト本来の評価を引き出す以上の価値はありません。

目標
検索エンジンによる正当な評価を妨げている要因を特定し、それらをサイトから排除する。ペナルティの解除などもこれに含む。
対象となるサイト
検索エンジンからの評価に問題を抱えているサイト。
作業内容
URLの正規化、サイト内リンクの最適化、薄いコンテンツの統廃合、インデックスの制御、不自然な被リンクの排除など、検索エンジンを意識した技術的な作業が中心。テクニック指向。
作業者の知識や能力
検索エンジンのクロールやインデックス、ランキングアルゴリズム、ガイドラインなどに関する知識のほか、ウェブサイトの制作・運用に関する知識が必要。ウェブマスターツールや検索結果、アクセス解析などから得られるデータが有用。検索やウェブに関する技術に明るい人物であれば、外部の人間が代行することができる
作業期間
ほとんどの場合、比較的短期間に集中して終えることができ、一度実施してしまえばそう頻繁にやる必要はない。ただし頻度こそ高くないものの、時には、アルゴリズムの変更によって以前の施策が意味を失ったり、また別の新たな施策が必要になることもある。
作業難易度
正解の存在する技術的な課題の解決が中心になるため、知識があれば比較的容易といえる。ただし例外的なケースとして、数万ページを超えるような規模の大きいサイトや、オリジナルの特殊なCMSを使用している場合、またコンテンツを運営側がコントロールできない場合(UGCなど)では、問題を特定したり解決策を探ることの難易度は高くなる。
効果
大きな問題を抱えているサイトなら短期間に劇的な効果がある一方、問題のない、または問題の小さいサイトであれば、目覚ましい効果はほとんど期待できない。
重要性
検索エンジンが賢くなるにつれて重要性が下がる傾向にある。
コスト
期間も限られ、正解の存在する技術的課題を解決することが中心であるため、コストは比較的低い。

このテクニック指向のアプローチの価値は、検索エンジンが賢くなるにつれて下がり続けていることに注意してください。数十万ページを超えるような大規模なサイトであれば依然として有効ですし、ペナルティを受けているようなサイトでは必須の取り組みです。しかしそうでない一般のサイトにおいては、現状それほど大きな価値はなく、とりわけ深刻な問題を抱えていない小規模サイトであれば、この施策はほとんど効果を発揮しません。

ゼロの上にプラス評価を積み上げていく施策

実践的なアプローチが採られるこの施策は、言い換えれば「プラクティス指向SEO」です。検索者に対するサイトの価値そのものを高めていくために、検索者の質問に答えるコンテンツを継続的に作成し、かつ、その告知経路を開発し続けていくことに主眼が置かれます。サイト運営者自身の事業に関する知識が問われるため、インハウスで実施するのが適切です。

この施策で短期間に目覚ましい効果を上げることはほとんど不可能で、結果を出すには長期間を要します。長期戦を覚悟して、継続的な実践(プラクティス)を日常の業務に組み込む必要があるでしょう。検索者を中心としたサイト訪問者に対して役立つ情報を提供することを通じて、知名度や好印象の形成、ひいては顧客育成を指向するようなサイトに限って有効な手法であり、顧客育成を重視しないサイトにおいては非効率な施策と言えます。

目標
検索者に対してサイトが提供できる価値を増やし続けていく。情報提供を通じた顧客育成が目標。
対象となるサイト
自社が保有している情報を広く一般に共有していくことを指向するサイト。
作業内容
検索者を意識し、彼らの質問に答えるコンテンツを制作し続けていくことと、その告知経路を開発し続けることが中心。これらの作業の結果として、自然な被リンクやオーソリティとしての評価も獲得する。長期間にわたって継続的に実践していくことが求められる。プラクティス指向。
作業者の知識や能力
サイト運営者の事業に関する専門性の高い知識を持っていることが前提。検索者を始めとするサイト訪問者が求めている知識を特定する洞察力と、それを文章や図版などを使用してわかりやすく表現するコンテンツ作成能力が必要。また継続が必要な上にすぐには結果が出にくいため、目先にとらわれずに粘り強く続けていける根気が必要。
作業期間
一時的なものではなく、継続して取り組んでいく必要があるため長い期間を要し、取り組みはサイトを運営している限り続く。
作業難易度
保有しているノウハウを表現していくだけという意味では難易度は低く、検索結果への露出は難しくない。一方、効果をすぐに実感しにくいため、モチベーションの維持という面では難しい。
効果
訪問者にとって役立つ情報を発信することを指向するサイトであれば、自然検索からの無料のトラフィックを安定的に得られるなど、中長期的に高い効果を発揮できる。ただし自社が保有しているノウハウを共有することを志向しない場合や、素人が少し調べた程度の知識で作成されたコンテンツを量産するような場合には、大した効果は得られない。
重要性
検索エンジンが賢くなり、より内容そのものの価値を判断できるようになるにつれて、重要度が上がっている。
コスト
時間や手間を継続的に投入する必要があるため、必然的にコストは高い。

このプラクティス指向のアプローチの重要性は、検索エンジンが賢くなるにつれて増していく一方です。ただしこれは日々の実践の積み重ねであり、即効性はありません。しかし続ければ続けるほど、提供しているコンテンツが増えれば増えるほど、自然検索からのトラフィックを確実に増大させていくことができます。

いまあなたのサイトに必要なのはどっち?

ここまで、SEOの2つのアプローチを紹介してきました。前者はサイトが抱えている問題の修復に関わるもので、作業者の知識と技術によって短期間に実施するテクニック指向です。後者はサイトの価値を高めていくためのもので、事業領域に関する専門性と表現力によって時間をかけて実施していくプラクティス指向です。

傾向としては、検索エンジンが賢くなるにつれてテクニック指向の重要性は減り、プラクティス指向の重要性は増しています。とはいえ、クローラビリティやインデクサビリティの確保といったテクニック指向の施策に、まったく意味がないわけではありません。テクニック指向のSEOは、いわばプラクティスの準備であり前提です。

もしあなたのサイトが技術的な問題を抱えているなら、それらを早期に解決しておくことで、そのあとのプラクティスがより効果的になるのは間違いありません。技術的な問題の多くは、短期間で集中して根絶することができます。サイトの技術面を健全にした上で、プラクティスを積み上げていくのが最善でしょう。

プラクティス指向のSEOを選ばないという選択肢

また、プラクティス指向のSEOには適性がある、ということにも注意が必要です。プラクティス指向のSEOは、検索者の質問に対する答えとなる有用なコンテンツ発信を通じて、検索エンジンからの評価をゼロからプラスへと積み上げていく施策です。これを効果的に実施していければ素晴らしいのですが、そのためにはサイト運営者の指向や能力が大いに関係してきます。

保有するノウハウをどんどん外に向けて共有し、検索者の質問にどんどん答えていくことを志向する企業であれば、プラクティス指向SEOは向いています。結果を出すのも簡単です。一方、秘密主義の企業や、発信するだけのノウハウを保持していない企業、またわかりやすく発信する能力のない企業であれば、SEOは向いていません。

もしあなたの会社が後者であるなら、SEOよりも広告や広報により注力したほうが効率的です。検索者が知りたがるような肝心のノウハウは秘匿したままで、自分に都合のいい自慢や売り込みだけを聞いてもらいたいのであれば、そもそもSEOでは勝負にならなりません。それは広告を使ってターゲットの目の前に提示するのが得策というものでしょう。

適性がある
保有しているノウハウをもとに、検索者の質問に丁寧に答え、知識を授けていくという姿勢でSEOを実施する会社
適性がない
ノウハウも表現力もない、またはあっても出し惜しみし、こちらが伝えたい自慢や売り込みだけを押しつけようとするような会社

大切なノウハウを惜しげもなく教えるような人の前には、教えを乞う人々が自分の意思で列をなすでしょう。これがSEOの姿です。そうではなく、自慢や売り込みに耳を傾けてほしいだけであれば、それは広告が十分な役割を果たしてくれるでしょう。そして、SEOよりも広告のほうが向いている会社は多いものです。そうした会社が、始めから負けが見えているSEOに注力するのは賢いことでしょうか?

さてここまで、テクニック指向のSEOとプラクティス指向のSEOについて説明してきました。いまあなたのサイトに必要なのはどちらのSEOでしょうか? また、あなたのサイトにプラクティス指向のSEOは向いているでしょうか? 今後のSEOの戦略を考える上で、できるだけ早い段階で、自分のサイトの方針を見極めていただきたいと思います。