SEOで集客できるユーザーのほとんどは「単なる調べ物をしている人」に過ぎず、即時のコンバージョン獲得は非常に困難です。しかしSEOを中長期的な顧客育成のプロセスと考え、潜在顧客の情報ニーズに応え知識形成に寄与することによって、コンバージョンの獲得や向上は狙いやすくなります。
検索と情報提供を通じた消費者との複数回の接触
マスコミュニケーションの時代ならいざしらず、現在では、企業の目線で企業が伝えたいことを伝えることは非常に難しくなっています。一方で、検索エンジンの進化により、消費者が探している情報を届けることは簡単になりました。
これをうまく活用しない手はありません。従来の消費者に対するメッセージの押しつけも、消費者が探している情報の提供も、企業やブランドの認知度や信頼度を高めるという同じ目的を持っています。同じ目的を目指すのであれば、より効果的な方法をメディアに合わせて選択すべきでしょう。
- インターネットのユーザーは、自分が抱える問題の解決やニーズの充足のために、能動的・自発的に情報を検索する
- インターネットのユーザーは質問の答えを探しているのであって、企業の自画自賛を探しているのではない
- 消費者が探している情報を的確に提供することができれば、心理的段階を前進させることができる
SEOをコンバージョンにつなげるためには、各心理的段階におけるユーザーの質問に向き合い、その答えとなる有益な情報の提供を通じて一人のユーザーと複数回にわたって接触していくことが重要です。検索からの訪問者は、通常複数回のランディングを経てコンバートするものだからです。
これは言い換えれば、SEOによるコンバージョン獲得とは、情報提供を通じて検索者という潜在顧客を見込み客へと教育していくという顧客育成のプロセスであるということができます。王様たる有益なコンテンツは、消費者と企業の両方を助けるものになるのです。
消費者の購買に向けた心理的段階とは?
よく知られた「AIDAモデル」や「AIDMA」モデル、そしてGoogleが提唱する「ZMOTモデル」など、消費者の購買行動をモデル化したものには既存のものが数多くありますが、これらのすべてに共通していることは「購買意向には段階がある」ということです。
次の5項目からなるリストは、SEOにおける心理的段階の遷移を示した筆者独自のモデルです。このうち1〜3は購買までの段階、4および5は購買後の段階です。
- 1. 現状への疑問の発生
- 何かのきっかけを得て、それまで疑問を感じていなかったことに対して疑問を感じるようになった段階。解決すべき課題がありそうだということに気付いているだけで、まだこの段階では問題やニーズは具体化していない
- 2. ニーズの具体化
- 疑問を形作っている問題またはニーズが明確になり、問題を解決する、またはニーズを満たす商品について考え始める段階。いくつかの商品やサービスについて調査を始める
- 3. 解決策の決定
- 購入すべき商品やサービスが明確になり、いつ、どこで、いくらで購入するかを検討する段階。販売店の情報やセール情報などを調査し、購買を決める
- 4. 問題解決に向けた行動
- 購入した商品やサービスを利用して問題を解決する段階。使ってみるまで知らなかった機能についての情報や、よりうまく使う方法、サポートなどの情報を調査する
- 5. 結果の検証との共有
- 購入した商品やサービスによって、どのように問題が解決されたか(解決されなかったか)またはニーズが満たされたか(満たされなかったか)を検証し、その体験を他者と共有する段階。ここで発信された情報は、第三者にとっての「1. 現状への疑問の発生」を引き起こす
消費者視点からのSEOの図解
下の図は、上述した購買行動の各段階に加えて、それぞれの段階で発生する代表的な質問、検索を通じた知識形成によって次の段階へと進んでいくこと、そして消費者とネット上のコンテンツとの関係を、消費者の視点から図示したものです。
この図が示していることの焦点は、インターネットのユーザーは質問の答えとなる情報を欲しているのであって、企業の自画自賛を欲しているわけではないということです。ネット上の消費者は能動的・自発的に問題を解決しようとしているからです。
であるなら、企業側がすべきことは、単なる売り込みの垂れ流しではない情報を発信することです。その情報は、その時その時の消費者の心理的段階における文脈に沿い、消費者が発する質問に対する答えになっている必要があります。
これを確実に実施することによって、消費者の心理的段階の前進を後押しし、検索からのトラフィックをコンバージョンへと結びつけていくことが可能になります。消費者が探している情報を提供することは、いわば顧客育成の一環でもあるのです。
顧客育成のプロセスにSEOを組み入れる
検索結果を舞台にマーケティング活動を行うという意味でSEOと共通点の多いリスティング広告ですが、これには顧客育成の視点がありません。種を蒔き、水をやり、花を咲かせ、果実を収穫するというプロセスのうち、果実を収穫する部分だけに特化しているのがリスティング広告です。
リスティング広告をうまく活用すれば、優良見込み客だけを狙い撃ちして集客でき、実際に非常に大きな効果を持っています。それらに加えて、以下のようなSEOの得意分野との組み合わせれば、より強力なコンバージョンの獲得が実現できます。
- 優良見込み客と呼べる段階に達していない潜在顧客を、無料のトラフィックを使って集客することができる
- 検索者全体に占める優良見込み客の割合は非常に小さいが、SEOではその他の大多数の検索者にリーチすることができる
- 潜在顧客に情報を提供していくことを通じて、潜在客から見込み客へ、そして見込み客から優良見込み客へと育成していくことができる
SEOとは、種を蒔き、水をやり、花を咲かせ、果実を収穫するというすべてのプロセスに影響し、そのすべての段階で、知識の提供を通じてユーザーとの関係を強化していくものです。あなたの制作するサイト、運営するサイトに、ぜひこの考え方を役立ててください。