デザインは、製品やサービスや企業自身を表します。製品やサービスや企業が熱狂に近い感情をにユーザーに対して抱かせるとき、ほとんど必ずデザインが介入しています。クールでセクシーなデザインに対する情熱を忘れてはいけません。

誰もがクールなものを見分けられる

トム・ピーターズはその膨大な著書のなかで、頻繁にデザインに言及しています。時にはD.A.ノーマンなどを引用しながら使い勝手などの機能性について言及していることもありますが、ほとんどは「めちゃめちゃクール」とか「グッとくる」のような調子で美しさやセクシーさに言及するものがほとんどです。

曰く「しれるほどカッコいいかーー勝負はそこだ」。彼は、製品であれ、ブランドであれ、人間であれ、それがクールかどうかを区別するために、我々が詳細なマニュアルを必要とすることはない、と吠えたてます。ただ見ただけで、ただ触れただけで、それがクールかどうかは誰にでもわかる、というわけです。

デザインが製品やサービスや企業自身を表す

トムピーターズがデザインにこだわるのはいつものことですが、この本は他の本とは少し様子が違います。「トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂」(トム・ピーターズ著)。薄い本ですがフルカラーで、彼のお気に入りのデザインを並べながら、さらには各界のリーダーたちの声を引用しながら、まるごと一冊デザインについて吠えまくります。

暑苦しいことこの上なく、しかしながら、彼のデザインに対する情熱は十分に伝わってきます。デザインにこだわる意味、デザインに投資する意味がいやというほどわかります。

トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂何十億、何百億ものドルが儲かっている(何兆ドルか?)。それがわかっている企業もある。ソニー、ナイキ、ジレット、アップル、ザ・ボディショップ、アマゾン、ノキア、ターゲット、ブルームバーグ。

これらの企業の経営者にとって、デザインに対する何のてらいもない狂信的な姿勢よりも重要なものは何もない、何もない(!!!)

ところが、ほとんどの(圧倒的多数!の)企業にはそれがわかっていない。だから本当にデザインで頭を悩ませることはない。頭がゆるんでいる企業は、簡単にいえば、「き・わ・め・て」重要なことを放り投げている。

つまりそのいわんとするところを要約すると、デザインは、製品やサービスや企業自身を表すものであり、その表すところは、品質や信頼性はもちろん、「クールかどうか」という差別化の根本にまで至る、というわけです。

クールさこそが差別化の根本である

僕はデザイナーとしての一面もありますし、デザイナーと協働することもありますし、何よりも一人の消費者です。ですから、デザインの重要性はそこそこ理解しているつもりです。例えば電器製品や服飾品のように、性能的にも機能的にも大した差のない商品を選ぶ場合、何で選んでいるかといえば、やはり「デザイン」でしょう。

もちろん、デザイン以前に機能性が十分に満たされていることは必須の条件です。日用品や消耗品では、どんなにデザインが良くても、明らかに性能の劣る商品を選ぶようなことはほとんどありません。嗜好品に近いものだったとしても、やはり性能の劣るものを購入する際には躊躇します。

しかし、機能性が同等もしくは我慢できる範囲内であれば、よりデザインのクールなものを選ぶ、というのは誰にでも経験のあるところでしょう。工業製品については、デザインの重要性は疑う余地もありません。

ウェブの世界でもデザインへの情熱を忘れない

話がややこしくなるのは、それが「WWW」の世界に移ったときです。ウェブの世界では、「クールなデザイン」を一目で見分けることができるほど、ユーザーは洗練されていません。一瞬クールだ、と思っても、機能性が極めて低いことに気づいたり、また逆に、最初はそれほどでもなくても、使っているうちに凄くクールだということに気付くこともあります(後者の例はGoogle マップなど)。

例えそれが未だ未開拓のウェブの世界であったとしても、デザインに対する情熱は忘れてはいけないと思うのです。何しろ、製品やサービスや企業が熱狂に近い感情をにユーザーに対して抱かせる時には、ほとんどの場合そこにデザインが介入しているからです。少々うざったらしい感じもしますが、この「トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂」では、そんなデザインを愛する気持ちを(いやでも)思い出させてくれる一冊です。