クチコミは内部犯行が起点になる

クチコミをどう発生させるかというテーマは、ソーシャルメディアの影響力が高まった現代において、多くのマーケターの課題になっていることでしょう。この記事では、クチコミの発生についての新たな視点を紹介するとともに、企業内をクチコミの発生源にするための意識づけ・環境作りに言及します。

クチコミの起点はどこか

マーケティングにおけるクチコミの役割は、ターゲットとなる人々のコミュニティ内でポジティブな話題を拡大浸透させ、その結果として製品やサービスの販売を促進する、というものです。どんな製品やサービスを扱っていようと、ターゲットとなるコミュニティがの中でポジティブな話題として拡がることが知名度の向上や販売の拡大につながることは確実です。

では、そのクチコミの起点はどこになるのでしょう? 従来であれば、それはイノベーターやアーリーアダプターのコミュニティだったり、影響力の大きいユーザーだったり、といった文脈で語られてきました。しかし、今日紹介する3 Tips to Get Your Hive Buzzing : The Messaging Timesというエントリでは、クチコミの発生源を、製品やサービスを生み出している企業の内部であるとする別の視点を提示しています。

クチコミを発生させる3つの方法

少し詳しく見ていきましょう。このエントリでは「クチコミを発生させる3つの方法」といった感じで、クチコミを発生するための3つのステップが次のように紹介されています。

1. 実質の価値を創造する
価値が高いかのように偽ることはできません。なぜなら人々は、製品やサービスの価値を計る客観的な基準を持っており、どれだけ生活が楽になるか、代金に対して割安かどうか、生命を維持するために必要かどうか、といった基準で価値を計るからです。うわべだけのマーケティングでは実質価値を補償することはできません。
2. その価値の創造はチーム全員で取り組む
チームのすべてのメンバーが、創造のプロセスの利害関係者になるべきです。もしその価値を創造する役目をチームの全員で担っていなければ、チーム内でその価値に愛着を示したり、お互いに讃え合ったりすることはないでしょう。
3. 創造された価値をチーム全員で大いに賞賛する
価値を創造したそれぞれの要素がいかに重要だったかについて、定期的に賞賛の意を示しましょう。それぞれの努力がどれほど価値の創造や絶え間ない改善に役立ったか、といった具合に。

つまり、全員参加で価値を創造することで、まずは製品やサービスを生み出している企業の内部にポジティブなメッセージを充満させ、そこから外部へとクチコミを拡散させていく、というのがこの意見の中心です。企業内部から外部へとクチコミが拡散していくことについては、次のように説明されています。

他者とコミュニケーションするとき、私たちの態度や感情は言葉遣いに現れます。自分自身では客観的でポジティブであるように意識していたとしても、本当の感情を伝える言葉を隠しきることは困難です。また、ボディーランゲージはしばしば、表面的な言葉とは裏腹の真実を相手に伝えてしまいます。

受付係、コピーライター、販売チーム、技術者または経営陣などといった参加者たちが、製品やサービスの価値に真の意味で参加していなかったとしたら、その状態で外部とコミュニケーションを取ったとしても、創造された価値についてのポジティブなメッセージが外部に伝わっていくことはないでしょう。

クチコミを生む企業風土とは

このエントリは、次のように結ばれます。

Buzz is an inside job. How is your hive?

およその意味は「クチコミは内部犯行である。あなたのクチコミ発生源はいかがか?」といったものです。hiveとは本来、鳥などの巣を意味する言葉ですが、セス・ゴーディンの「バイラルマーケティング」以降は、クチコミの発生源となるグループのことを指すようになっています。通常 hive(ハイブ)は、製品やサービスを売り込むターゲットとなるコミュニティと同一視され、クチコミ・マーケティングは、そのターゲットコミュニティをクチコミの発生源(hive)とすべく仕込みます。

しかし今日紹介したエントリでは、hive は企業内であるということを前提としており、企業内から企業外部へとクチコミを広げていく、というプロセスを説明しています。つまり、次のような要因が満たされれば企業内が hive となり、自然とクチコミが外部にも拡がっていくだろう、というわけです。

  • 製品やサービスに関わるすべてのメンバーが、その製品なりサービスなりに愛着や責任を持っている
  • チームとして共にそれを創り上げた仲間を、お互いに誇らしく思っている
  • 製品やサービス、仲間たちを心から賞賛し、自ら話題にしている

その製品なりサービスなりがクチコミに乗って拡がるかどうかは、その製品なりサービスなりを作っている人たち自身のありかたに依存する、というわけですが、これは事実であるように思います。その製品なりサービスなりを作っている人たち自身が、上のリストで挙げたような状態だったならば、そうした気持ちはおのずと外部にも伝わるでしょうし、外部の人々の間でも話題に上りやすいだろうと思えるからです。

いいクチコミは良好な内部環境から。さて、あなたが所属する会社や、あなたが携わっているプロジェクトはどうですか?