簡単なSEOを選ぼう。難しいSEOは捨てよう

SEOが難しいと感じているのであれば、結果を出しにくい施策にばかり取り組んでしまっていることを疑ってみる必要があります。SEOには、困難で結果を出しにくい施策と、簡単で結果を出しやすい施策があります。同じく時間や労力を使うのであれば、結果を出しやすい簡単な方法を選択することで、効率的かつ確実に成果を高めていくことが可能になります。

難しいSEOと簡単なSEO

ここ数年の検索エンジンの進化を経て、「SEOはかつてないほど簡単になった」という人々がいる(筆者もその一人です)一方で、「SEOはかつてないほど複雑で困難になった」という人々もいます。簡単に感じる人と難しく感じる人、この二者の違いはなんでしょうか?

結論から言えばこの違いは、検索結果に露出させようとするページの違いです。より具体的には、セリングを検索結果に露出させようとする場合にはSEOは難しく、コンテンツを検索結果に露出させようとする場合にはSEOは簡単である、ということです。(参考:コンテンツの定義

簡単なSEO
検索者の質問に対する答えとなるコンテンツを検索結果に露出させる
難しいSEO
セリングを検索結果に露出させる

ほとんどの検索は質問であり、検索者が検索結果に求めているのは、その質問に対する答えです。検索結果に求められているものは、検索者に不足した知識を補い、抱える問題や課題を解決に導く解決策が示されたコンテンツです。そうしたコンテンツを提示する限り、SEOは簡単です。

検索者が答えを求めているのと同様に、検索エンジンもまた検索者が求める答えを検索結果に掲出しようとします。サイト運営者もまた、素直にその流れに乗って、検索者の質問に答えるコンテンツを作ればよいというだけのことです。一方、検索者や検索エンジンの意図に反するもの(セリングなど)を露出させようとすれば、SEOは難しくなります。

成功するSEO
検索者の目線に立って検索の意図を考え、検索者にとって適切なコンテンツを提供し、それを検索結果に露出させる
失敗するSEO
自社の都合で検索者の意図を歪曲して理解し、自社にとって都合のいいセリングを検索結果に露出させる

SEOが成功するか失敗するかを分けるポイントは、検索者が検索するその目的について、自社の都合で考えるか、検索者の立場で考えるか、ということにかかっています。検索者との関係構築をどう考えるかによって結果が左右される、と言い換えてもいいでしょう。

インフォメーショナルクエリに注力

多くの事業者は、消費者は商品やサービスを探して検索していると考えていますが、これはほとんどの場合誤りです。事実、検索クエリのほとんどは情報を探すためのもの(インフォメーショナルクエリ)であり、購買や取引を意図する検索(トランザクショナルクエリ)は少数に過ぎません。

検索において、商品やサービスを探して、またはそれらを購入する意図を持って検索することもたまにはありますが、情報探索型の検索に比べれば、割合としてずっと低いものです。クエリの種類を理解した上で、次のように考えるとわかりやすいでしょう。

インフォメーショナルクエリ
情報を探すための検索(検索の大多数を占める)において求められることは、自然検索の結果に検索者の質問に答えるコンテンツが提示されることである。この傾向は音声による質問形式で行われる検索の普及を受けて強まっている
トランザクショナルクエリ
購買や取引を意図する検索は、少ない検索回数を多くの競合が奪い合う状況にあり、検索結果を巡る競争が極めて激しい(結果が不安定)。また、コンバージョン獲得に最適化したランディングページはSEOに不向きである(後述

インフォメーショナルクエリにおける検索結果での露出を狙うのであれば、SEOは簡単です。検索者の質問に答えるコンテンツ継続的に追加またはアップデートし、より詳しく、より正確に、より丁寧にしていくことで、容易に自然検索からのトラフィックを集めることができます。

一方、トランザクショナルクエリ(コンバージョンにつながりやすいキーワードでの検索)にSEOで対応するのは困難です。コンバージョンの獲得に最適化したページを検索結果に確実に表示させることは、SEOよりむしろリスティング広告の得意分野であり、SEOの得意分野ではありません。

自然検索(オーガニック検索)
インフォメーショナルクエリ(コンバージョンにつながりにくい/検索回数が多い)は無料のトラフィックが得られる自然検索で対応し、検索者との接点を構築すると同時に信頼を獲得していく
有料検索(リスティング広告)
トランザクショナルクエリ(コンバージョンにつながりやすい/検索回数が少ない)は有料検索のリスティング広告と最適化されたランディングページで対応し、確実にコンバージョンを獲得していく

ここで重要になるのはSEOとリスティング広告の使い分けです。コンバージョンにつながりにくく検索数は多いインフォメーショナルクエリに対応するために有料の広告を使うことは、多くの場合現実的ではないはずです。SEOはそうした検索に対応する場合に威力を発揮します。

セリングを露出させる難しさ

コンテンツを検索結果に露出させることは容易である反面、セリングを露出させることはそう簡単ではありません。検索エンジン(ここではGoogle)は検索結果において、明確に「お役立ち情報」を優先しているからです。SEOのベストプラクティスを解説するGoogleの品質に関するガイドラインに、次のような文があります。

情報が豊富で便利なサイトを作成し、コンテンツをわかりやすく正確に記述します。

この文の英語版の記述は「Create a useful, information-rich site, and write pages that clearly and accurately describe your content.」です。直訳すれば「役立つ情報が豊富なサイトを作成してください、そしてコンテンツを明瞭かつ正確に記述してください」というものであり、その要件は次の2点です。

  • 役立つ情報が豊富
  • 記述が明瞭かつ正確

これらの要件は、セリングページに必要なものとは大きく異なります。セリングページに求められることは、商品やサービスを魅力的に紹介し、訪問者を高い確度でコンバージョンに導くことです。そこに必要なのは、購入することで得られるメリットであり、魅力的なオファーであり、強力なクロージングであり、それらをスムーズに展開する洗練されたシナリオです。

厳しいテストを経て徹底的に最適化されたセリングページのよい見本は、健康食品や通販型保険の広告に設定されているランディングページで見ることができます(実際に見てみることをおすすめします)。それらはセリングページとしては極めて機能的ですが、しかし役立つ情報には乏しく、先述したコンテンツ品質の要件を満たしません。

つまり、セリングを最適化すればするほど、自然検索の結果には露出しにくいものになっていってしまうということです。だからといってその不利を避けようとして、ページにお役立ち情報や客観的に正確な情報を追加してしまえば、セリングページの本来の目的であるコンバージョンの獲得に向けたシナリオが弱くなる危険があります。

  • セリングページはコンバージョンの獲得のために徹底的に最適化する
  • コンテンツページは自然検索での露出拡大のために情報を充実させる
  • ページごとの役割を明確にし、どっちつかずの中途半端な内容にしない

ベストプラクティスは、上記のようにセリングとコンテンツを明確に区別し、それぞれの役割に沿って内容を最適化していくことです。まずは結果を出しやすいコンテンツの露出拡大に注力し、セリングへの誘導はひとまず広告とサイト内の動線に任せます。コンテンツ作りに注力しなければ、SEOは始まりません。

なお余談となりますが、セリングページにおけるSEOの難しさについては、少しばかり穿った視点もあります。検索サイトは、自然検索の結果からセリングを減らしてコンテンツを増やす合理的な動機がある、という視点です。その動機とは、検索エンジンの主要な収益源である有料検索(リスティング広告)の存在です。

検索エンジンはその収益確保の観点から、トランザクショナルクエリにおいては積極的に広告をクリックしてもらう必要があります。このために、自然検索の結果にはセリング(売り込み)よりもコンテンツ(教養や娯楽を提供する)を優先しているのではないか、という視点です。個人的に筆者は、この見方は大きく間違ってはいないと考えています。

無駄にならない施策に集中する

セリングページを上位表示させることを狙って、ページに様々な調整を繰り返す運営者は多いものです。しかしこうした努力は報われにくいだけでなく、あるときは効果的に働いたとしても、アルゴリズムのちょっとしたアップデートによって簡単に無駄になってしまう可能性があることに注意しなければなりません。

せっかく貴重な時間や労力を割くのですから、一過性で賞味期間の短い施策ではなく、長期間にわたって価値が持続し、将来に向けた投資となるような施策を実施したいものです。将来に向けた投資になる施策とはつまり、コンテンツの追加やアップデートです。これには次のような意味があります。

  • コンテンツそのものを資産として蓄積する
  • ソーシャルメディアに話題を提供し、新規訪問者およびリピート訪問者を誘引する
  • 参照や言及のリンクを獲得し、ドメインやサイト全体のリンクポピュラリティを高める
  • 検索を通じて検索者と接触する機会を増やす
  • 情報源としての専門性を深め、信頼性を高める

告知経路の整備と並行してコンテンツを追加すれば、目に見える結果をすぐに出すことができます。アクセス解析を見れば一目瞭然ですが、コンテンツを追加したぶんだけサイトへの入り口となるページが増え、確実にアクセスは増加していきます。一歩一歩は小さくとも、その積み重ねが将来の大きな差になるのです。

一度ついたその差は、一朝一夕に詰められるものではありません。だからこそ価値があります。

こうした取り組みを通じてドメインやサイト(または著者)が受け取る評価は、投入した時間や労力に比例して蓄積し、先んじて取り組んだサイトをより有利にします。そうして評価を獲得していけば、その結果として、検索結果にセリングが露出する可能性もまた高まります。まずはドメインやサイトや著者の評価を獲得しなければなりません。

コンテンツが少なく、したがって評価も蓄積されていないサイトにおいて、セリングページを自然検索の結果に露出させるのは難しいものです。しかし、そこでセリングページの調整にばかり労力をかけるのは誤りです。多くの場合、問題はセリングページではなく、コンテンツやその評価の不足にあるからです。

  • セリングページやトップページの調整にばかり注力しすぎていないか
  • コンテンツの質および量が不十分なために評価が得られていないのではないか

もしあなたが「SEOは難しい」と感じるのであれば、上記の二点をよく確認してみてください。セリングやトップページの調整にばかり注力しているなら、それは敢えて困難な道を選んでいるようなもので、結果が出にくいのも当然です。SEOをずっと簡単なものにするために、今後はもう少しコンテンツに注力するとよいでしょう。