SEOの本質は、検索者視点に立った情報発信にあります。検索者にとって役立つ情報があれば、検索者は自発的にそれを探してサイトに来訪してくれます。しかしそれを実現するためにはいくらかの発想の転換が必要であり、またそもそも、向いているサイトとそうでないサイトがあります。これらを整理し、効果的なSEOの基礎を作るのがこの記事の目的です。

SEOの本質を理解する

SEOとは英語の Search Engine Optimization の頭文字をとった略語であり、日本語では「検索エンジン最適化」となります。これをもう少しわかりやすく説明するなら、SEOとは検索者が探している情報を発信し、検索を通じて検索者に届けることです。

前提 1(情報探索行動としての検索)
情報検索とは、検索者が新たな知識を得るための情報探索行動である
前提 2(検索エンジンの役割)
検索エンジンは、探している情報が得られる場所へと検索者を誘導するサービスである
SEOとは
SEOとは、検索者が探している情報を発信し、検索エンジンを通じてその情報を検索者に届けることである

検索エンジンのアルゴリズムは、新技術の投入やチューニングが頻繁に繰り返され、日々進化を続けています。この進化の目的は「検索者にとって適切な検索結果を返すこと」です。具体的には、検索エンジンは次のような方向性を持って進化を続けています。

  • 検索キーワードにより関連の高いコンテンツを表示する
  • より幅広く、より新しい情報を検索対象に取り入れる
  • そのときの人々の関心や話題の傾向に沿ったコンテンツを表示する
  • ユーザーの個人的な意図や動機や環境により適合するコンテンツを表示する
  • 検索キーワードに関連する幅広い種類のコンテンツを表示する
  • 検索の操作や検索結果の画面をより使い勝手のよいものにする

こうした進化によって、SEOはより単純に、より容易なものへと変化し続けています。なぜなら、こうした進化が進めば進むほど、私たちは検索エンジンではなく人間のユーザーに対して有益高品質なコンテンツを作ることに集中でき、それが正当に評価されるからです。

SEOの本質は検索者視点に立った情報発信です。特定のキーワードにおける検索結果においてより上位のランキングを狙うのであれば、検索結果に表示される他のページと比較して、より正確で、より詳細で、より新鮮な情報を、よりわかりやすい形で提供することを目指さなければなりません。

SEOが持つ3つの優位性

SEOの優位性は、主に3つの要素で構成されます。それは次のものです。

  • 能動的・主体的に情報探索する人々にリーチできる
  • 集客数や成約数が増加してもコストが変化しない
  • 価値に永続性があり蓄積されていく

能動的・主体的に情報探索する人々にリーチできる。ウェブはプル型の(必要な情報をユーザーが自分の意思で能動的に取得しに行くタイプの)メディアであるとはよく言われることですが、これはSEOの特長そのものです。SEOは検索者の意思に沿うことで成立するものだからです。

例えばプッシュ型の例として、各種のウェブ広告はユーザーに望まれて表示されているとは限りません。同様にソーシャルメディア上で共有されるリンクについても、つながりのある他のユーザーが共有したものが見えるというだけのことで、表示されることとユーザー自身の能動性や主体性との間に関係はありません。

その一方で検索結果は、ユーザーがキーワードを入力して実行しない限り表示されることはありません。極めて能動的かつ主体的、そして個人的なものです。関心の高いユーザーに、関心が高まったタイミングで、完全に自分の意思でサイトを訪れてもらえるということは、SEOが持つ大きな優位性です。

集客数や成約数が増加してもコストが変化しない。露出や誘導に費用のかかる広告の場合には、集客や成約を伸ばそうとすれば広告費用もそれに応じて増加するため、単に新たな知識を得るだけの目的で検索する人々に広告を露出するのは、費用対効果の面から得策とは言えません。

広告では成果に直結しにくいターゲットへの露出は避けなければならない一方で、SEOはトラフィックそのものは無料であるという特性から、単に新たな知識を求めているだけで特に成果につながらないような人々に対しても積極的に露出していくこと可能です。これもSEOの際だった優位性につながるものです。

価値に永続性があり蓄積されていく。制作したコンテンツは検索やソーシャルメディアや被リンクを通じて半永久的にトラフィックを呼び込み、受け取った一本一本の被リンクはサイト全体のランキングを押し上げます。こうした優位は発信したコンテンツ量に比例して蓄積されていき、減ることはありません。

サイトに蓄積されたコンテンツや被リンクは、サイトの知名度や信頼性、トラフィック、ロイヤリティなどに影響するという意味で、一種のブランドを形成する要因であり、オンラインにおける資産であると考えることができます。こうしたものを効率的に形成していけるということも、SEOが持つ大きな優位性です。

情報発信によって可能になること

他のメディアとの比較においてウェブが優れている点は、掲載できる情報量に制限がないことです。電波媒体には時間という枠があり、紙媒体には面積という枠がありますが、ウェブにはそうした枠はありません。

せっかくウェブサイトを運用していくのであれば、情報発信は積極的に実施していくべきです。それはウェブというメディアの強みを活かすことでもあるためです。情報発信によって可能になることには、主に次のものがあります。

  • ユーザーに自分の意思でサイトを訪れてもらうこと
  • 潜在客を教育し、見込客へと育成すること
  • 購買前の時点からロイヤリティを形成すること

ユーザーに自分の意思でサイトを訪れてもらう。同じ情報を取得するにしても、その情報への関わり方がユーザーにとって受動的なものであるか能動的なものであるかの違いは、その情報に対する関心の強さや理解の深さに大きく影響します。

同じ情報であっても、一方的に配信されてくる広告を通じて接触する場合と、自分の意思で検索した結果として接触する場合では、後者のほうが関心が強く深く理解できることは間違いありません。

潜在客を教育し、見込客へと育成する。広告、とりわけインターネット広告のほとんどは、すでにニーズの固まった見込客にリーチし、成約をとることに大きな強みを持っています。しかしこれは言い換えれば、すでに熟した果実をただ収穫しているだけにすぎません。

一方で、情報を発信しそれを求めている人々の助けになるという考え方は、情報の提供を通じて地を耕し、種を蒔き、水をやるという顧客育成を指向するものです。潜在客にリーチし見込客へと育成するという意味でSEOは、育成型・農耕型のアプローチです。

購買前の時点からロイヤリティを形成する。役立つ情報を提供している会社と、役立つ情報を一切提供していない会社があった場合、どちらがより多くのノウハウを持ち信頼に足るように見えるか、というのは消費者としての判断に大きな影響を及ぼします。

さらに加えるなら、その会社が提供している情報が過去に何らかの役に立ったという経験がある場合とない場合では、感じるロイヤリティには大きな違いがあります。情報発信によって得られるこれらの優位性を最大化するのがSEOの取り組みです。

必要な視点

SEOに必要なのは検索者の視点です。情報を探索している検索者は、解決すべき何かしらの問題を抱えていて、それを解決する助けとなる情報を求めています。売り込みのメッセージを求めているわけではありません。

多くの企業のサイトではこの認識に錯誤があり、自分たちが伝えたいメッセージ(その多くは単なる自画自賛の売り込み)だけをサイトに掲載しています。その結果が、このウェブ上にあふれているチラシの集合体のような企業サイト群です。

検索者の視点で問題解決に役立つ情報を発信する
サイト運営者の視点で伝えたいメッセージを発信する

検索には4種類の目的があり、そのうち最も多いのがインフォメーショナル検索(情報探索を意図した検索)です。SEOはこの情報探索のコンテクストにおいて、検索者に情報を届けることを目的としています。

検索の目的には他にナビゲーショナル検索(特定のサイトやコンテンツに移動するための検索)やトランザクショナル検索(購入やダウンロードなどの意図のものとに行う検索)があり、それらの検索意図であれば、売り込みのメッセージは検索者のコンテクストと一致するでしょう。

しかしここで認識しておきたいことは、検索利用の大多数を占めるインフォメーショナル検索において、売り込みのメッセージは検索者のコンテクストと一致せず、それを無理に表示させようとする行為はある意味でスパムに近いということです。

自社の売り込みのメッセージをサイトに掲載することそのものは当然のことであり、間違いではありません。検索者の意図によってはそれらを確実に検索結果に表示させることもまた重要です。

しかし、検索者の意図や文脈を無視して営利目的のメッセージを露出しようとすることは、そのサイトのSEOがスパム的なものになっている危険が大きいことに注意すべきです。検索者の役に立つ情報を発信することを意図しないSEOは、限りなくスパムに近いものです。

スパム
受け手の承諾なしに一方的に配信される営利目的のメッセージ
スパムでないもの
人が自分の意思に基づいて能動的に取得する情報

上記は一般的なスパムの定義です。この定義に従えばすべてのマス広告はスパムに分類されてしまうので、その意味でこの定義は少し厳しいかもしれません。しかし情報過多といわれる現代においては、情報の受け手による承諾の有無は少し厳しく判断するくらいでちょうどいいとも言えます。

この記事の冒頭でも述べたように、SEOの本質は検索者視点に立った情報発信です。したがって、情報発信を指向するサイトにとってはSEOはよい取り組みになり得る一方、そうでないサイトにとってはSEOはあまりよい解決策にはなり得ません。

適したサイトとそうでないサイト

SEOは基本的に、情報発信を強く指向するサイトだけに適した集客手法です。情報発信を指向しないサイトにとってはマイナスでさえあり得ます。このことをよりよく理解するために、現実世界の小売業の例を見てみましょう。

よい魚屋さん(または八百屋さんでも肉屋さんでも)とはどのようなものでしょうか。品質に優れた商品を手ごろな価格で提供できるというのは前提として、おそらく多くの人が次のようなことを考えるはずです。

  1. 豊富な商品知識を持っていて、商品の選び方や活用法(調理や保存など)について適切なアドバイスができる
  2. 顧客の一人一人のことをよく知っていて、顧客の好みや家族構成などに合った商品提案やアドバイスができる
  3. 販売者と顧客の間に信頼関係が存在し、顧客は自分の意思で来店するだけでなく、時には他者に薦めたりもする

これを良い販売者のモデルと考える場合には、SEOとの親和性は極めて高いと言っていいでしょう。1は情報発信の質や量に関わることであり、2は検索者視点に立てるかどうかに関わり、3はロイヤリティに関わることだからです。

しかし上記のようなものは良いことばかりではありません。こうした良さを形成していくためには販売者の職能や人員が不可欠であり、それは消費者が負担するコストに転嫁されるという一面があるからです。

情報発信を可能とする職能や人員そのものを重大なコストと考えた場合、よい店の姿は変化していきます。例えば次のようにです。

  1. 豊富な商品知識に基づくアドバイスを行う人員を配置する代わりに、販売価格を下げる
  2. 顧客一人一人に合わせた商品提案を実施する代わりに、どんな顧客にも対応できるように品揃えを豊富にする
  3. 地道な努力によって顧客と信頼関係を築く代わりに、定期的に特売を実施しチラシで告知することで、価格優位と広範な集客で対応する

これは実際にスーパーマーケットが実施して効果を上げていることです。そしてその結果、特に郊外においては、前段に見られたようなタイプのよい魚屋さん(または八百屋さんでも肉屋さんでも)のほとんどは姿を消してしまいました。

ウェブに話を戻しましょう。言うまでもないことですが、情報発信にはコストがかかります。このコストをどう捉えるかによって、SEOの成否は決まります。サイトによっては、SEOに取り組まないという選択肢は大いにあり得るでしょう。

情報発信するコストやロイヤリティを高めるためのコストを販売価格に転嫁できない場合には、情報発信を指向せず、つまりはSEOを実施せず、価格と品揃えと広告で勝負するという方向性を打ち出すのは正解です。

より具体的には、代替品との比較で特長に乏しい商品や、どこででも手に入る商品を扱っているような場合、または商品点数があまりにも多いような場合などです。こうした場合、楽天やAmazonに出店し、広告で集客し低価格を競うというのは潔いと言えるでしょう。

SEOは決して万能ではなく、数多くのデメリットを抱えています。つまりすべてのサイトがSEOに適しているわけではないということです。デメリットを打ち消せるほどのメリットを享受できるサイトが取り組んでいくべきでしょう。

先んじて取り組むメリット

ここまで述べてきたとおり、SEOには検索者の視点が必要です。それは、自分たちが伝えたいメッセージだけを一方的に送り出すだけだった多くの企業にとって、サイトの運営姿勢を大きく見直すことを強いるものです。場合によっては大きな困難をともなうかもしれません。

しかし、ニーズの固まっていない潜在客にリーチする方法としてSEOが極めて強力なものであることは事実です。また、潜在客を見込客へと育てていくという点でも同様です。こうしたことに魅力を感じるのであれば、SEOに取り組んでいく価値があります。

とはいえ実際の問題として、情報発信はある程度の慣れがなければ難しいというのもまた事実です。時間や手間といったコストもかかります。人員の問題もあるでしょう。しかしそれらを理由にSEOを断念する前に考えるべきことがあります。

文章や図版などのアウトプットに自信がないなどといった問題、または出すべき情報とそうでない情報の線引きが難しいなどといった問題は、すべての企業が等しく抱えているものです。あなたの会社だけの固有の問題ではありません。

問題や困難はあったとしても、それらを解決して成果を出している企業がある以上は、それらはやらない理由にはなりません。結局のところ、先んじて取り組んだか、取り組んでいないかの違いでしかないのです。

先んじて取り組めば、先んじた分だけ早く、多くのメリットを享受することができます。作成したコンテンツは公開している期間中ずっとトラフィックを生み続け、受け取った被リンクの一本一本がサイト全体のランキングを押し上げるためです。リンクのマタイ効果も、先行するサイトにプラスに働くでしょう。

誰のためのサイトなのか

企業によっては、そもそも「サイトを誰のために運用しているのか」という根本的なことも考え直す必要があるかもしれません。この質問にたいていの企業は「ユーザーのため」と答えますが、本当でしょうか? 自分たちのために運用されているのではないでしょうか?

もし自信を持ってユーザーのためのサイトであると答えられるのであれば、そのサイトにはユーザーの役に立つ情報が豊富にあり、それを求めて来訪する検索者のトラフィックで十分に賑わっているはずです。つまりSEOが成功しているはずです。

もし検索トラフィックが十分でないなら、それは自分たちが伝えたいメッセージだけを掲載している証拠であり、サイトがユーザーのためになっていない証拠です。今からでも着手して、ユーザーが自分から探してくれるようなサイトへと生まれ変わらせるべきです。

そこで発信されている情報を求めて、ユーザー自らが探してくれるようなサイトを運用することこそが、つまりはSEOを成功させることなのです。