中小企業がソーシャルメディアを活用する必要性が叫ばれて数年が経ちましたが、迷走が続く状況にはあまり変化がないようです。なぜ迷走するのか、なぜうまくいかないのか。この記事ではFacebookとTwitterを中心に、混乱と迷走にいたる原因を整理し、そこから脱却するためのごくシンプルな方法を考察します。

1. うまくいかないソーシャルメディア活用法

まず最初に、実際によく見られるもののうまくいかないソーシャルメディア活用法を以下に挙げてみましょう。いずれも「中小企業のためのソーシャルメディア活用セミナー」的なものを通じて「ソーシャルメディアコンサルタント」的な肩書きの方々が頻繁に推奨されている手法です。

  • Facebookページや公式アカウントのようなものを形だけ整える
  • いいね!数やフォロワー数の少なさを気にして、内輪でいいね!しあったり相互フォローしたりする
  • ファンを作る・増やすとの目標を掲げ、内容は二の次でとりあえず友達やフォロワー数をやたらと増やす
  • どこかのカリスマ担当者(カリスマ中の人)のようなものを目指して、目立ちたがりのお調子者を演じる、または演じさせる(大半はスベる)
  • トレンドに乗り遅れまいとして、これから流行りそうだけどまだ誰も使ってないようなサービスを片端から試す
  • 情報発信が重要であるとして、ソーシャルメディア上で自画自賛や宣伝を一方的に繰り返しばらまく
  • 自分から「いいね!」やRTすることで自分もしてもらえるようになるとの理由でやたらに「いいね!」やRTを乱発する

これらの手法はことごとく、人と人とのつながりという考え方や、双方向性のメリットといったこと無視しており、少し乱暴な言い方をすれば、「知らない相手に自分の宣伝を一方的に伝えるための試みの集合」であると言えます。残念ですが、どこをどう好意的に解釈しても、こんなものがソーシャルメディアの有効な活用法であるとは思えません。

これらが何に似ているかといえば、スパムメールマーケティングです。これらは無差別爆撃に近い方法論であって、およそ、エンゲージメントが不可欠なソーシャルメディア上での行動として的確なものとは言えません。しかも、時間はかかるし効果もわかりにくく、非常に非効率的であるように思えます。では、どのような活用法ならうまくいくのでしょう?

2. 個人が個人として普通に使えばいい

ここで筆者が提示したいのは、極めて省力的で簡単かつ有意義、そして無駄もなく、何よりも実行する人にとって楽しく充実したやり方です。要するに「普通に使う」ということです。

最近ある場所で、河野武さんが「キャバ嬢がメールで指名客の様子伺いをして存在を思い出させたり、アパレルショップ店員がお客さんと友達感覚でメール交換しながら新入荷商品の情報を伝える、というようなことは以前からあったが、ソーシャルメディア活用というのはこうしたことの延長線上にある」というようなことを言っていました。筆者もまさにその通りだと思います。

ソーシャルメディアはその性質上「一人一人が、所属組織内外の人々と、自分のペースで自然に交流を深める」ことに適しています。これをビジネスへの活用に応用するなら、上記の例を踏まえたごく一例として、以下のような形が考えられるでしょう。

  • 店員が常連客とつながり、関係を深める
  • 営業社員が取引先担当者とつながり、関係を深める
  • 生産者がバイヤーとつながり、関係を深める
  • 社長が社長仲間とつながり、関係を深める

これらはどれも、何ら特殊なことはありませんし、もっともらしく「活用法」などと言うほどの大層なものでもありません。しかし効果は確実にあります。徒労感も少なく、むしろ楽しく充実したものであるかもしれません。エクストリームな使い方を覚える必要もありませんし、最新のトレンドやサービスを追う必要もなく、そして、無限に数を追うようなものでもありません。

3. 数を追うよりも、大切な人との関係を深める

例えばあなたが小規模な飲食店や小売店の店主であると仮定してみてください。そしてその店には、すでに少数の常連客がいるとします。彼ら常連客は、彼ら自身が頻繁に来店してくれるだけでなく、たまには彼らの友人を連れてきてくれたりもします。

この前提で、同じリソースを割くのであれば、見知らぬ不特定多数に広告的なリーチをするよりも、その少数の常連客との関係をより深めることに注力するほうが、短期的にも中長期的にも価値が高い、というのは明らかでしょう。リソースが限られている中でマス広告的に数を追うほうを選べば、そのぶんだけ大切な常連客への対応がおろそかになってしまう、という意味で逆効果ですらあります。

ソーシャルメディアを使えば、より大切な人を、より大切にする、ということが可能です。これを活用せずして、なにを活用せよというのでしょう?

ここで重要なのは「大切な人との関係をより深める」という考え方です。この、大切な人との関係をより深める、というここそ、従来のメディアを通じてではできなかったことであり、ソーシャルメディアでこそすべきことです。それを忘れて「Facebookマーケティング」とか「Twitterマーケティング」とか言ってマス的なアプローチを採用するのは、ある意味滑稽ですらあります。

余談ながら付け加えると、ソーシャルメディアの活用について語るときに、戦略や戦術といった軍事用語を使用するのは、いささか不似合いです。大切な人と関係を深めようというときに、誰かと戦う必要があるでしょうか? 戦略や戦術を駆使して攻略すべき敵とは、一体何を想定しているのでしょうか? これらの軍事用語は本末転倒を引き起こしかねません。

4. 見込み客の集客におけるソーシャルメディアとの関わり

大切な人との関係を深めるだけでなく、これから大切な人になるかも知れない未知の人にリーチしたい、という考えも、当然あることと思います。見込み客を集客したい、というような場合です。寒いコンサルタントの言説に洗脳されている方々であれば、このような場合にこそ、積極的にソーシャルメディアを使うことで目的は実現できる、と考えるかも知れません。

しかしその考えも再考が必要です。ソーシャルメディアを自ら使って未知の人々にリーチする方法というのは、この記事の冒頭うまくいかないソーシャルメディア活用法の項で挙げたような方法が主であり、賢い方法とは言えません。かなりの時間と労力を必要とし、その割にはあまり効果は望めないでしょう。

ではソーシャルメディアを使って見込み客を集客するいい方法がないのかと言えば、そんなことはありません。しかしそのためには、いわゆる「活用」からは視点を変えて考える必要があります。活用するのは誰なのか、という点を間違えてはならないからです。

5. 「共有」という特性を踏まえて活用のあり方を見直す

このサイト内のSMOによる被リンク構築でも触れていますが、ソーシャルメディアサイトのほとんどは、登場時に「○○共有サイト」という呼ばれ方をしていました。ソーシャルサービスとは、ユーザー間で何らかのネタ(意見や行動や写真や動画や位置情報など)を共有し、その共有したネタについて議論したり感想を述べたりして交流するサービスであるわけです。

ところが、ソーシャルメディアを「活用」する、という文脈では、どうしても自分が積極的にソーシャルメディアを利用するというイメージを抱きがちです。しかし、自分で自分の自画自賛ばかり一方的に発信・共有するのは、それはコミュニティへの「共有」ではなく、単なる無差別な「宣伝」、悪ければ「スパム」に過ぎません。

自分自身がいくら必死に自画自賛を発信してもそれは単なる宣伝かスパムですが、第三者があなたの情報をソーシャルメディア上に共有したならば、ここで話が変わってきます。その第三者の手によって共有された情報は、ソーシャルメディアの他のユーザーにとっては、意見や感想を表明したり、議論したりして、コミュニティと交流するための重要なネタへと進化します。

つまり、多くの人に知らせたい情報を持っている側(つまりは企業側)が注力すべきことは、ソーシャルメディアで他のユーザーたちにネタとして使ってもらえるようなコンテンツを投下する、というこの一点に尽きます。

他人が作ったネタを共有して遊ぶことを「活用」と誤解し実践するのではなく、私たちは、他のソーシャルメディアユーザーが楽しんで共有してくれるようなネタを自分で創り出し送り出していくことを「活用」ととらえるべきです。私たちはあくまでも、ネタ元として共有されることを目指さなければなりません。

そして、その楽しんで共有してくれる人というのは、それほど多くの人々である必要はありません。あなたにとって、あなたの会社にとって、大切な人が楽しんでくれれば、そしてその大切な人がその友人たちと共有してくれれば、それで私たちの目的は達せられるのです。

6. この記事のまとめ

  • 数の論理に支配されたマスマーケティング的な思考と使い方では、ソーシャルメディアをうまく使うことは難しい。下手したらただのスパムにまで成り下がってしまう
  • ソーシャルメディアは個人のためのツール。あくまでも個人としての立ち位置で、仕事上でも私生活上でも、自分にとって大切な人たちとの関係を深めることに注力すれば、それは私たちを豊かにしてくれる
  • 集客という観点で見れば、自分が他人のネタを共有して楽しむことは単なる遊びに過ぎない。自分が発信するコンテンツをソーシャルメディア上で第三者に共有してもらうことで、初めて収益に貢献する仕事となる