SEOのメリットとデメリットとは?SEOのデメリットを回避する

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SEOのメリットとSEOのデメリット

SEOは有効なマーケティング手法にもなり得ますが、数多くのデメリットを抱えており、決して万能というわけではありません。SEOのメリットとデメリットを理解し、慎重にデメリットを避けながら積極的にメリットを享受しましょう。そのためには、PVではなくターゲットに焦点を当てる必要があります。

概要

よく「SEOは費用対効果に優れた集客手段である」と言われますが、当然のことながらすべてのサイトで費用対効果に優れるなどということはありません。費用対効果の優劣はサイトによって異なります。そして、競争の激しいキーワードを狙う場合や、利益率やLTVが低い製品やサービスを扱っている場合などでは、費用倒れはごく普通に起きます

SEOも数ある集客手段の一つに過ぎません。人的にも金銭的にも費用がかかりますし、結果は競合の影響を受けます。業種業態や担当者の適性によっても結果は大きく変わり、望ましい結果がまったく得られないこともあります。多くのデメリットの中から少ないメリットを活かせるかどうかを冷静に判断する必要があるでしょう。

SEOのデメリットと問題点

SEOにはあまり語られることのないデメリットが大量にあり、それらの一つ一つが深刻な問題です。以下に示す各デメリットをよく確認し、自社の事業にとってSEOが必要なのかどうかよく精査しましょう。SEOが不要なケースも多いはずです。

短期的な成果は期待できない

技術的なマイナス要因がありそれを修正した場合や、そもそもSEOがまったく意識されていなかったような場合を除けば、SEOが短期的な成果をもたらすことはほとんどありません。小さな効果が出るまでに数ヶ月(1〜3ヵ月)を要し、期待する結果が出るまでには半年から1年程度の期間を要します。期待するほどの結果が得られないこともあります

このため少なくとも1年程度の間は、費用倒れを覚悟しておく必要があります。また結果が出るまでに時間がかかるという性質上、PDCAサイクルを高速に回すこともできないため、成長もゆるやかです。SEOに取り組む企業には、利益を期待することなく長期間にわたってSEOに投資でき、ゆっくりした成長に耐えられる体力が求められます。

すぐに売上が欲しい場合や、素早い成長が必要な場合は、まずリスティング広告を使いましょう。リスティング広告は即時に反応が得られるため、PDCAサイクルを回し最適化する期間も短く、数週間からの短期間で費用対効果をプラスに転換できます。時間をかけてSEOに取り組むのはその後です。

また「時は金なり」を忘れてはいけません。あなたがじっくりとSEOに取り組んでいる間に、リスティング広告を活用する競合他社がどんどん成長しながらあなたの潜在顧客を根こそぎ刈り取ってしまう可能性にも目を向ける必要があるでしょう。SEOの「すぐに結果が出ない」というデメリットは、企業によっては致命的です。

結果について何の保証もなく制御も不能

検索結果の上位がとれる保証はありません。上位がとれたとして、それを維持できる保証もありません。上位がとれない可能性もあります。SEOが常にプラスの効果をもたらすという保証はなく、しばしば裏目に出ます。単に評価が下がるだけでは済まず、ペナルティを課されることもあります。不安定であることはSEOのデメリットの一つです。

検索エンジンのアルゴリズムや競合サイトの取り組みをコントロールする方法はありません。自社が最適化に使用するキーワードが正しいものである保証もありません。契約したSEO業者が有能である保証もなく、有能だったとしても望ましい結果を出せる保証はありません。契約先を誤れば、契約以前にはあったトラフィックや売上まで失います。

よく「SEOは上位表示に成功すれば中長期的に無料のトラフィックが得られる」と言われますが、これは事実ではありません。少なくとも筆者の1999年から四半世紀におよぶ経験の中では5年以上安定して検索トラフィックを獲得し続けたサイトはなく、すべてのサイトがどこかの時点で乱高下を経験します。SEOに頼り切ることは重大なリスクです。

維持コストが半永久的にかかる

一時的にSEOが成功したとしても、検索流入を維持するためには、コンテンツを新鮮に保ち続け、競合他社と競争に勝ち続け、アルゴリズムの変化に対応し続ける必要があり、そのための人的コストが半永久的にかかり続けます。環境が変化し続けている以上、停滞は後退を意味し、対応し続けなければ現状すら維持できません。

よく「SEOは自分でやれば無料」などと言われますが、金銭的コストはともかく、人的なコスト負担はかなりのものです。これも理由の一つとなって、多くの中小零細企業では経営陣のどなたか(多くは社長か次期社長)が睡眠時間を削って時間外労働でSEOに取り組んでいます。このコスト面でのデメリットを軽視することはできません。

コンバージョンレートが低い

検索者の圧倒的多数は「単に調べ物をしている人」であり、SEOで集客できるのもこの人々です。検索エンジンを使って能動的に情報収集し、知識を形成している段階の人にリーチできるのはSEOの数少ないメリットの一つです。しかし知識形成はマーケティングファネルでいう認知または検討の段階であり、コンバージョン率は決して高くありません。

コンバージョンを狙うのであれば、より確実性の高いリスティング広告でファネルの下部を狙うほうが効率的です。コンバージョンの獲得におけるSEOの効果は、SNSや広告など他の集客手段との相乗効果で高まっていくもので、SEO単体ではそれほど目覚ましい効果はないことに注意すべきでしょう。

高品質コンテンツの作成難易度が高い

SEOに必須の高品質なコンテンツは、専門知識を持った人物が多くの時間や労力を投入することでやっと作成できるものです。競合性の高いトピックにおいては、コンテンツの品質において競合サイトに勝ち続けるのは多くの時間的・労力的な負担がかかります。Googleは高品質なコンテンツの作成について次のように説明しています。

高品質のコンテンツを作成するには、時間、労力、専門知識、才能 / スキルのうち少なくとも 1 つが十分にあることが必要です。コンテンツが事実として正確で、記述が明確で、内容が包括的であることを確認してください。

Google 公式 SEO スターター ガイド(2023年12月7日版)1

文章や図版の作成には向き不向きがあることも忘れてはいけません。自社の担当者に文章や図版の作成における適性が不足している場合、または競合サイトの担当者の適性が高い場合には、その差を埋めることは困難です。少々の差であれば努力で埋めることも可能でしょうが、圧倒的に才能に差があるような場合、苦戦は必至です。

文章にしても図版にしても、専門知識や経験を十分に反映した下書きを作成できれば、外部のライターやデザイナーに仕上げを依頼し、完成時の品質を高めることも可能です。しかしこの場合、高い品質を求めれば求めるほど費用がかさみ、またやりとりの回数が増えて労力も増えていきます。適性のある担当者が有利であることは変わりません。

ウェブ検索で探さない商品は露出できない

ウェブ検索で露出できるのは、ユーザーがウェブ検索で探しているものだけです。私たちの普段の消費行動をふり返ればわかるとおり、製品やサービスを探すときに使用するのはウェブ検索とは限らず、むしろそれ以外の場所で探していることのほうが多いものです。例えば次のような形です。

  • 画像で探す – 画像検索やショッピング検索やInstagramを使って、製品画像を見ながら探す。服飾品などが典型。
  • 地図で探す – GoogleマップやYahoo!地図などの地図アプリを使って、現在位置や目的地の近くで探す。ドラッグストアやカフェなどが典型。
  • モール内で探す – Amazonや楽天市場にアクセスし、サイト内検索を使って製品を探す。消耗品や日用品などが典型。
  • クチコミで探す – 各種SNSや価格コムやアットコスメなどのクチコミサイトを使い、評判を見ながら探す。家電品やガジェット類やコスメなどが典型。
  • 専門サイトで探す – 求めている製品やサービスを専門に扱うサイトで探す。宿泊予約サイトや、中古車情報サイト、賃貸住宅情報サイト、飲食店情報サイトなどが典型。

このようにウェブ検索を使わずに別の場所で探す製品やサービスにおいては、SEOは無力であるか、良くても限定的な効果があるだけです。自社が扱う製品やサービスがウェブ検索とは別の場所で探されていることが明らかな場合、SEOはほとんど何の足しにもなりません。探されている場所で露出することを検討しましょう。

SEOのメリットと優位点

ここまで見てきたようにSEOには重大なデメリットが数多くある一方で、明確なメリットは少数です。この少数のメリットをうまく活用できるかどうかが、SEOの成否を分けます。あなたの事業にとってSEOが重要なら、SEOのメリットを享受できるように戦略を切り替えていく必要があるかもしれません。

信頼が得られる

SEOの最大の特長のひとつは「単に調べ物をしているだけの人」にリーチできることです。各種の広告では調べ物をしてる人をターゲットにすることは費用対効果の面から現実的ではありませんが、SEOならそれができます。これは、検索者が関心を持った分野について知識を形成する段階から関係を構築していけるということを意味し、具体的には次のようなメリットがあります。

  • 専門性をアピールできる – 検索者の質問に的確に回答することで、知識や経験や課題解決力や専門性をアピールできる。この繰り返しによって良好な評判を構築できる。
  • 信頼感を醸成できる – 検索結果の上位に表示されている状態はGoogleが推薦しているように見えることにより、検索者との間に信頼感を醸成できる。
  • 知識形成の段階から関係を築ける信頼性が高く、しかも検索意図を満たすコンテンツを発信することで、検索者が知識を形成している段階から関係構築を開始できる。

製品やサービスの購入を検討しはじめる以前の、知識を形成している段階から関係を構築できることは、検討段階に入ったときに有利になります。この特長は、契約時点では結果のわからない無形のサービス(コンサルタントやデザイナーや医師や弁護士など)において特に有利に働きます。自社の事業がこれらに該当する場合にはSEOのメリットは計り知れません。

自分でできる

SEOには特別な資格は不要で、年齢制限もなく、個人事業でも法人でも、予算があってもなくても、誰でも自由に参入できます。たった一人で取り組む場合でも、必要なのは適性と時間であり、それ以外に多くの不足があったとしてもそう不利にはなりません。こうしたことをまとめると、SEOのメリットは次のようになります。

  • 規模を問わない – SEOは、個人であるか法人であるかや、事業や予算の規模の大小を問わず、誰でも参入できる。個人事業や小規模企業が有利になるように進めていくこともできる。
  • 一人から始められる – SEOの作業内容は一人だけでできることが大半であるため、個人事業はもちろん、事業上の権限さえあれば企業内でもたった一人で進めていくことができる。
  • 結果は適性しだい – SEOで結果が出るかどうかは、予算や人員の多寡よりも、担当者の努力と才能と労力の影響が大きい。担当者に適性があれば、一人でも有利に進められる。

E-E-A-T評判の重要度はYMYL領域を中心に上昇傾向です。このことは、専門性の低い部署がコンテンツ作成をしたり、コンテンツ作成能力がなく外注に頼るような企業が厳しくなっていく一方で、自社の事業領域についての高い専門性を備えた事業主や経営者がコンテンツを作成する個人事業者や小規模企業にとっては大きなメリットです。

ピンポイントに届く

SEOの特長の一つは「ボリュームが小さすぎて広告ではターゲティングできない層にリーチできる」ことです。Googleで検索されるキーワードの実に15%は、それまで一度も検索されたことのない新しいキーワードだそうです2。これはロングテールのキーワードでの検索が非常に多いことを表しています。

小企業が検索ボリュームの大きなキーワードを中心に狙うことは、多くの場合誤りです。検索ボリュームの大きなキーワードはターゲットが広すぎ、また上位表示の難易度が高すぎるからです。難易度が低く、関心が絞り込まれたロングテールのキーワードを狙うことで、自社のターゲットに確実にリーチできます。このポイントに関連したメリットは以下の通りです。

  • 難易度は低いが有効なキーワードはある – ロングテールのキーワードは上位表示の難易度が低いため、速く確実な露出を期待できる。
  • 特に関心の高い人々にリーチできる – 検索数は少ないが具体性が高いキーワードで検索するような関心の高い少数の人々にリーチできる。
  • 業界内でのプレゼンスを高められる – その業界に特有のニッチキーワードに最適化することで、業界内での存在感を向上させることができる。

広告収入で運営されているPV至上主義のメディア系サイトのSEOでは、検索ボリュームの大きいキーワードを狙っていくことが基本です。多くのオウンドメディアサイトもそれに追従しています。しかし一般的な商用サイトでは無駄にPVを追う必要はありません。潜在的な顧客にリーチできればそれで十分なのです。

まとめ

事業を安定成長の軌道に乗せたい場合、SEOに頼り切るのは賢い策ではありません。SEOには一切の保証がなく、不安定で計画性に欠けるからです。堅実な成長を目指すなら、リスティング広告を始めとする各種の広告をうまく活用して計画を前に進めながら、SEOでプラスアルファを狙う形がベストでしょう。

また、一般の商用サイトの場合、検索ボリュームの大きなキーワードを狙うことよりも、難易度が低く関心が絞り込まれたロングテールのキーワードを狙い、自社が提供できる価値にぴったり合ったターゲットだけに確実にリーチする戦略を採るべきです。過度にPVを追うのではなく、ターゲットとの信頼関係の構築を目標としましょう。

このような戦略を採ることで、SEOのデメリットである不確実性を減らすと同時に、より速く、確実に、安定的にターゲットにリーチできるようになります。自然と結果もついてきます。コストばかりかかって結果がともなわない無駄な施策をやめて、堅実に結果を出す施策でメリットを享受していきましょう。

脚注

  1. Google 公式 SEO スターター ガイド(2023年12月7日版 Wayback Machineアーカイブ) ↩︎
  2. Google on Twitter: “Fun fact: 15% of all Google searches have never been searched before.” ↩︎