Google のペンギンアップデートやパンダアップデート以降、リスク回避の観点から、そうしたペナルティの対象になりにくいSEOが強く求められています。しかしSEOのリスクは、ペナルティの対象になりやすい不正な手法だけではありません。むしろそれは末節に過ぎず、より根本的なリスク回避が必要です。

4種類の流入経路

まず最初に確認しておきたいことは、サイトへのトラフィック流入経路の種類についてです。サイトへのトラフィック流入経路というのは、大まかには次の4種類しか存在しません。これらのそれぞれの経路について、開発し、最適化していくことで、サイトのトラフィックは増大し、得られる成果もまた増大していきます。

  • 広告
  • 再訪
  • クチコミ
  • 検索

これらの流入経路を整備していくとき、特定の経路に過度に依存することのないように注意しなければなりません。インターネット上では、集客経路に大きな変化が起きることは日常であり、日々の検索アルゴリズムの変化などはその典型です。

特定の経路に強く依存していれば、変化にともなうダメージは大きなものになります。流入経路の偏りはサイト運用上の大きなリスクなのです。特定の経路に集客を強く依存してしまうのではなく、様々な経路を持ち、リスクを分散することが必要です。

特定の流入経路に強く依存することを避け、4種類の流入経路のそれぞれをバランス良く開発していくことで、環境の変化に耐えやすい体力あるサイトに成長します。また、バランスの取れた流入経路の開発は、相互に作用し合って全体のパフォーマンスも向上させます(参考:トラフィック増加の循環を作り出す)。

安易な集客手法としてのSEO

先述した4種類の流入経路のうち、最も簡単に結果を出せるのが検索です。SEO業者の多くは「SEOは複雑で困難なものだ」などと言いますが、これは事実ではありません。他の流入経路の開発に比べればSEOはずっと簡単であり、それは多くのサイトが集客を検索に強く依存している現状からも明らかです。

SEOは他の流入経路に比べて結果を出すのが楽ですから、多くの運営者は易きにつき、他の経路を無視してSEOばかりに注力します。そして結果が出ればゲーム勝ったような快感があるために、より一層SEOに傾倒していくという悪循環です。

そうしたことを繰り返した結果できあがるのは、検索アルゴリズムの変化の影響を強く受けやすい脆弱なサイトです。ペンギンアップデートやパンダアップデートの影響が致命傷になるようなサイトはその典型です。

しかし見落とされがちですが、ペンギンやパンダに補足されるような不適切なSEOだけがリスクなのではありません。集客を検索に強く依存することそのものがリスクなのです。

アルゴリズムが常に変化し続けている以上、その変化の影響を受けることはどんなサイトにとっても避けられないことです。また現在の Google の独壇場がいつまで続くのかは誰にもわかりません。集客を自然検索に過度に依存すれば、環境変化の影響を強く受けるのは当然のことです。

集客をSEOに頼り切っているサイトは少なくありませんが、そのようなサイトには必ず、多かれ少なかれ悲劇が訪れる運命にあります。検索を取り巻く環境は常に変化しているからです。悲劇を避けるためには、特定の経路に依存しない集客を実施していかなければなりません。

特定の経路に依存しない集客を

先述したように、4種類の流入経路をバランス良く開発することで、それぞれの経路からの相互作用によって全体の集客パフォーマンスは向上します。そのことについて少し詳しく説明しましょう。

広告
手早く確実に利用客(初回利用者)を獲得できる。利用客は将来の得意客(複数回利用者)候補であり、会社や店舗にとって最大の資産となる。広告はその資産を獲得するための投資となる
再訪
再訪者はサイトの集客数の基盤となる。同時に、クチコミの起点は常にサイトへの再訪者でもある。また再訪を獲得するためには、定期的に新しい話題を提供することが必要であり、これはコンテンツ資産の蓄積につながる
クチコミ
ソーシャルメディア上での共有やブログからのリンクなど、ユーザーの自発的な行動を通じてコンテンツを流通させることができる。ユーザーとの関係構築が不可欠であり、強固な関係を築けばそれは大きな資産になる
検索
何らかの必要に迫られて調べ物をしている人にリーチし、解決策を提示することができる。これを繰り返すことで、信頼できる情報源としての評価を獲得することができる

この文面からもわかるとおり、筆者は上記のいずれの経路についても、その開発はサイトの無形資産を形成するための投資であると考えています。サイトの成長とはつまりこうした資産を蓄積していくことであり、サイトの運用とはそのための日々の様々な取り組みのすべてであるという認識です。

同じリソースを投下して取り組むのであれば、環境の変化によって将来には無駄になるような施策にばかり注力するのではなく、変化に強く将来への投資として積み上がっていく手法に選択的に取り組んでいくべきです。目先の流行や最新動向に振り回され、場当たり的な対策を繰り返すような取り組みは推奨できません。

リピーターに再訪をうながし、クチコミを発生させるためには、新しいコンテンツを追加することが必要です(参考:サイトのアクセス増加に更新が必要な5つの理由)。また、新しく追加したコンテンツを見てもらうためには告知経路の整備が欠かせず、それにはソーシャルメディアでのつながりが必要です(参考:コンテンツの告知経路を整備する)。

このように各種の集客経路を整備していくことで、それらは相互に影響し合って全体のパフォーマンスを引き上げます。そしてもちろん、様々な環境の変化に対するリスクの分散にもつながります。またそうした取り組みは、実施したぶんだけサイトの資産として積み上がっていき、すべてが将来への投資として機能します。

この考えの背景。危機管理と安定成長

SEOをテーマとしているこのサイトにおいてさえ筆者は、流入が検索に大きく偏ることを恐れ、それ以外の経路、特にクチコミ(リンク経由やソーシャル経由)とリピート(固定のリピーターを確保する)の開発に力を注いでいます。このことは記事「インデックスの整理で検索流入が二倍になった話」でも少し触れました。

自分でも多少の自覚があるのですが、客体的に見て筆者は、特定経路への依存、とりわけ検索流入への依存を恐れすぎるきらいがあるかもしれません。しかしそれには理由があります。筆者には環境の変化によって検索流入を大きく増減させた経験が数え切れないほどあり、そうしたリスクから自衛しなければならないという意識が強く働くようになったためです。

筆者は今まで、一般によく使われる検索エンジン(典型的にはYahoo! Japanが採用している検索システム)が移り変わる場面を何度も見てきましたし、意図せずペナルティを受けたことも一度や二度ではありません。そうした大きな変化ではなくても、アルゴリズムの変化で検索流入が変化することなど日常です。

こうした経験を積み重ねれば、筆者でなくとも誰でも、自分が運営するサイトやクライアントのサイトの集客が検索だけに強く依存するようなことは避けるべきだと考えるはずです。少しばかり逆説的ですが、筆者はSEOの専門家であるために、自然にSEOの危険性にもまた、強く注意が向くのです。

職業上、筆者は数多くのサイトのアクセス解析を見る機会がありますが、流入全体に占める検索の割合が7割から8割にのぼるサイトは珍しくありません。これでは、検索エンジンの調整次第でたちまちトラフィックの半数以上を失う危険があり、実際に、大半のトラフィックを失ってから相談してくる運営者もいます。

こうしたことは筆者の感覚でいえば、安定した成長を目指すサイト運営者としてあり得ないことです。率直に言って、なぜそこまでSEOに依存してしまうのか理解に苦しむほどです。検索流入は他の経路からの流入と連動して増加することが理想であり、そうでなければ安定したサイト運用は望めません。

したがって筆者は(意外に思われるかもしれませんが)SEOとして受注した案件であってもほとんど必ず、広告やソーシャルメディアの活用を強く提案します。それはSEOをうまく実施していくため(先述の相乗効果が得られるようにする)でもあり、同時に、環境変化に対する備え(リスク分散)でもあるからです。

SEOのリスクを回避する

検索からのトラフィックを大幅に失ってしまうようなことは、いつでも起こりえることです。アルゴリズムの変化も、検索システムの入れ替えも、いつでも起きる可能性があるためです。そうしたときのダメージを低減する方法というのは、大まかには次の3種類しかありません。

  1. ペナルティを引き起こすようなSEO施策を避ける
  2. 特定の検索エンジンに特化したSEO施策を避ける
  3. 集客を自然検索からの流入に頼り切ることを避ける

1は短期視点ですぐにも実施しなければならない緊急のものであり、現状多くのサイト運営者が取り組んでいるものです。2は中期視点で取り組んでおいたほうがよいもの、3は長期視点で着実に取り組んでいく必要のあるものです。3についてもう少し説明します。

Googleのウェブマスター向けガイドラインにある品質に関するガイドラインの基本方針には、チェックポイントとして「検索エンジンがなくても同じことをするかどうか」という部分があります。これは一般に、スパム判定されることを回避するための指針として消極的な方向に理解されていることが多い(上記1の対策)ようです。

しかし筆者の見方は少し違っていて「検索エンジンがあろうとなかろうと、やるべきことはきちんとやる」というような積極的な方向に理解しています(上記3の対策)。つまり理想としては、検索エンジンがなくても運営が成り立つところを目指して取り組んでいく、ということです。

当然ですがSEOは万能ではなく、デメリットもあり、またここまで述べてきたように、強く依存してしまえばそれ自体がリスクにもなります。ほんのちょっとした環境の変化で悲劇に見舞われるような運営は、危機管理の意識に欠けていると同時に、安定成長の妨げでもあります。

また人によっては、ペナルティなどのSEOのリスクを分散するための方法として、複数サイトの運営を勧める向きもあるようです。しかし筆者はそれは勧めません。なぜなら、複数のサイトを運用することには、次のような問題があるためです。

  • 複数のサイトを運用すれば、運用のために投入される費用や手間などのリソースが各サイトに分散し、どのサイトも中途半端になってしまう
  • サイトを複数に分割していても、どのサイトも同じようなSEOを実施していれば、結局は環境変化の影響も同じように受けてしまう
  • いつペナルティを受けてもいいように予備のサイトを大量に持っておく、という発想そのものがスパミーで、安定成長を目指す運用とは相容れない

運用のリソースが限られているにもかかわらず、サイトをどんどん分割し、どのサイトもみな中途半端な運用しかできない、という例は驚くほど多いものです。サイトを育て、利用者を育て、事業を育てる、といった感覚が欠如しているのでしょう。5年後10年後に資産となるサイト運営を考えていれば、そうした手法は採らないはずです。

長期的な視点を持つ

ここまで述べてきたことは、とりたてて教条的なことでも、理想論や正論の類いでもありません。実際のこのサイトの運用方針や、筆者がクライアントに勧めることそのものであり、ごく単純な事実として、次のようなことを述べたに過ぎません。

  • 特定の集客経路に依存することはサイト運用上のリスクになる
  • 結果を出すのが簡単だからといってSEOにばかり注力するのではなく、他の流入経路にも投資することで、環境変化によるリスクを分散できる
  • 検索からの流入は、他の流入経路に投資した結果として後からついてくる

おそらくこのサイトの読者には、集客をSEOに頼り切ったサイト運営をしている人も多いことでしょう。しかし、サイトのトラフィックを安定して増加させることを望むのであれば、また、SEOをより確実に効率的に実施することを望むのであれば、他の流入経路にも目を向けていかなければなりません。

3年も5年も同じサイトを運営し、その間ずっと自分の選択で過度に検索に依存した集客をし続けておいて、アルゴリズムの大きな変化があるたびに「アクセスが激減して困っています」のようなことを言い出す人が多いことには閉口します。それは当然予想された結果だと思わないのでしょうか? もう少し長期的な視点がほしいものです。