サーチマーケティングには、検索者と検索エンジンの意図に基づくごく基本的な戦略があります。基本を知っておくことでサーチマーケティング、とりわけSEOはぐっと楽なものになりますが、残念ながらこの基本はSEOのプロを自認する人々の間でもあまり知られていないようです。この記事ではその基本をわかりやすく解説します。

検索意図とサーチマーケティングの基本

私たちが検索するときの意図(目的)は、一般的には次の3種類に分類されます。カッコ内はクエリの種類(検索キーワードの種類)を示しています。

  • 情報や知識を探したい(インフォメーショナルクエリ)
  • 特定のサイトに移動したい(ナビゲーショナルクエリ)
  • 購入や予約など取引したい(トランザクショナルクエリ)

サーチマーケティングはこの3種類の検索意図が出発点になります。結論からシンプルに説明すると、それぞれのクエリに対する考え方は次のようになります。

インフォメーショナルクエリ
主として潜在客が使うため、検索ボリュームは大きい反面、コンバージョン率は低い。正確で役立つ知識となるコンテンツを自然検索で露出させて膨大なトラフィックを得るとともに、信頼できる情報源として検索者との間にエンゲージメントを構築する
ナビゲーショナルクエリ
前段のエンゲージメント構築の結果として、またはクチコミや広告の結果として、会社名やショップ名、ブランド名などでの指名検索という形でもたらされる。最もコンバージョン率が高く、サイト運営者にとっては勲章のような意味がある
トランザクショナルクエリ
主として顕在客が使うため、検索ボリュームは小さい反面、コンバージョン率は高い。購買への洗練されたシナリオを持ったセリングページ(最適化したランディングページ)をリスティング広告で露出させ、確実なクロージングを狙う

インフォメーショナルクエリをSEOで狙い、トランザクショナルクエリをリスティング広告で狙う、というのはあくまで基本であって、常にそうしなければならないというものではありません。しかしこの基本を良く理解していなければ、様々な無理や無駄が発生してしまいます。順を追って説明します。

検索エンジンによる検索意図の理解とその対策

ここからは簡単なストーリーを用意し、それを例としながら、検索からコンバージョンにいたる推移を見ていくことにしましょう。最初に知っておきたいことは「検索エンジンは検索意図をある程度理解している」ということです。例にするストーリーは次のものです。

飼っているペット健康不安から、ペットの食生活が健康に与える影響に懸念を感じ始め、よりよいペットの食生活についてよく知りたいと思った。

まず「ペットフード+安全性」というキーワードで検索してみます。これはクエリの種類としてはインフォメーショナルクエリです。探しているのはペットフードの安全性に関する知識であって、特定のペットフードではありません。この検索結果のスクリーンショットは以下のようなものです。

検索結果「ペットフード+安全性」

この検索結果ではまず、広告の表示が控えめであることに着目してください。また、自然検索の結果にはセリングページ(販売を目的としたページ)もほぼ表示されません。表示されるのは、環境省、農水省、Wikipedia、ペットフード協会、2ちゃんねるまとめ、個人サイトのコンテンツなど、セリングではないものばかりです。サイト内の深い階層に置かれたページが多いことも特徴です。(注:コンテンツとセリング

この検索結果からは、検索エンジンがこのクエリはインフォメーショナルクエリであると理解し、知識となるコンテンツを表示させる意図が強く働いていることが推察されます。インフォメーショナルクエリであることを理解した上で、次のような調整を自動的に行っているのでしょう。

  • 広告の表示を控えめにする
  • 情報や知識を得られるコンテンツを優先して表示する
  • 階層が深くても情報の置かれた場所をピンポイントで示す
  • 販売を目的としたセリングの表示を減らす

インフォメーショナルクエリの自然検索結果への露出は、販売を目的としたセリングでは困難です。これは「調べ物をしてるときに売り込みは見たくない」という検索者の意図であり、それを汲んだ検索エンジンの意図でもあるためです。端的に言って、インフォメーショナルクエリの検索結果にセリングを露出しようとする努力が報われることは少ないでしょう。

インフォメーショナルクエリの検索結果へのセリングの露出が難しい一方、情報や知識を提供するコンテンツの露出を多くするのは容易であり、確実な方法もあります。それは、客観的中立的な立場から、より幅広く詳しく正確な情報を掲載するようにすることです。こうしたページは高く評価されやすいだけでなく、様々なキーワードの検索において高い頻度で検索結果に表示されます。

では別のキーワード「ペットフード+無添加+国産」で検索した場合どうでしょうか。この意図は無添加で国産のペットフードを探したいというものであって、トランザクショナルクエリです。この検索結果のスクリーンショットは以下のようなものです。

検索結果「ペットフード+無添加+国産」

先ほどの検索結果画面と大きく違うポイントとしてまず気付くのは、広告の表示面積でしょう。広告が表示される領域が大幅に拡大し、画面上部の目に入りやすい部分のほとんどが広告に埋め尽くされました。次に自然検索の結果ですが、すべてがECサイトへのリンク、しかもトップページばかりとなりました。ここでわかることは次の3点です。

  • トランザクショナルクエリの検索結果画面においては、広告の表示領域を拡大し、広告クリックへと強く誘導する意図が見える
  • 自然検索の結果は下部に追いやられ、しかも似たり寄ったりのショップばかりになり、クリックすべきリンクを判断しにくい
  • 自然検索のリンクとリスティング広告のコピーを比べると、自然検索は雑多で過剰な印象を受け、リスティング広告のほうはすっきり見やすく魅力的に見える

このような検索結果画面からより多くのクリックやCVを獲得したいのであれば、最適な解は「良い位置に広告を出稿する」となるでしょう。これは検索エンジンの収益モデルそのものに関わることですから、ある意味で当然の結論です。また、この画面において自然検索での露出を狙う場合の取り組み、つまりSEOは、次のような理由で困難ものとなります。

  • 広告によって自然検索結果は下部に追いやられるため、上位ランキングを獲得しても高いクリック率は望みにくい
  • 競合ページの作りはどれも似たり寄ったりで、サイトのトップページが表示されやすいため、ページの作りよりもドメインの信頼度やリンクポピュラリティなどがランキングに強く影響する
  • 競争が熾烈であり、中にはスパムまがいの施策をとる競合もいるため、上位ランキング獲得は難しく、安定もしにくい
  • SEOを気にしすぎるとセリングページとしての機能(スムーズにコンバージョンにつなげるシナリオ設計)が狂い、CVRを下げる結果になりやすい

このように、トランザクショナルクエリにおいては、表示位置をある程度コントロールでき、よく最適化されたランディングページへと誘導できるリスティング広告が優位です。一方SEOは、表示位置の不利やランキング獲得の難しさや不安定さなどから、どうしても劣位に置かれます。

SEOの典型的なストーリー

検索意図に基づくクエリの種類によってSEOとリスティング広告を使い分けるという話をしてきましたが、ここまでのところSEOだけでコンバージョンまで結びつけるというストーリーは出ていません。ここで、SEOにおけるコンバージョンまでの典型的なストーリーを、ここまでと同様ペットフードを例に紹介します。

潜在客から見込客へ
ペットに健康不安があり、ペットフードの安全性に興味が出る。検索で有用な情報源となるページを探し(インフォメーショナルクエリ)、見つけた有益なページをメモ代わりにソーシャルメディアに投稿しながら、何日かかけて知識をつけていく。
見込客から利用客へ
数日後、自分のペットには安全なペットフードが必要であることを確信する。それまで学んできた中で、最も信頼のおける情報を提供してくれたサイト名で検索し(ナビゲーショナルクエリ)、そのサイトで販売している商品の中から1つ選んで買い求める。
利用客から顧客へ
前回購入した商品のストックがなくなる頃、サイト名と商品名でand検索し(トランザクショナルクエリ)、より容量の大きな商品を購入。体調を回復したペットの写真を撮ってブログに投稿し、同じ関心を持っている読者に商品を勧める。

これは簡略化したストーリーですから、現実がここまでうまくいくとは限りませんし、購入に際して多くの知識を必要としない日用品(例えば台所洗剤)や、緊急の問題(例えば水道トラブル)などの場合には、このようなステップを踏むことはまずないでしょう。

しかし購入側に知識が必要で、ある程度慎重に吟味して選ぶ商品やサービスでは、上述のようなステップを踏むことは珍しくありません。消費者に知識が必要な商品やサービスほど、購入前の調査は綿密に行われます。そのとき消費者が求めるのは、中立的客観的に書かれた正しい知識を提供するコンテンツです。業者の我田引水(セリング)に知識としての価値はありません。

このストーリーでは、購入者側はすべて自分の意思で自発的に情報収集し、自分の判断に自信を持って商品を購入しています。また販売者側は、売り込みではなくコンテンツを軸にした知識の提供によって、潜在客を顧客まで育て上げています。これがSEOの典型的なストーリーです。

  • 検索経由での潜在客の集客
  • ソーシャルメディアでのコンテンツの拡散
  • 情報源としての信頼の獲得とエンゲージメントの醸成
  • ニーズが顕在化した時点での指名買いの獲得
  • 満足とリピート購入の獲得
  • 評判と被リンクの獲得

インフォメーショナルクエリに注力したSEOで検索者が求める知識をコンテンツとして提供していくことは、上記のようなメリットをサイト運営者にもたらします。潜在客を集め、知識を提供することを通じてエンゲージメントを築き、ニーズが顕在化した時には指名買いしてもらう、という一連の流れの中心は、知識を提供するコンテンツです。

クエリごとの検索ボリュームから見る戦略

インフォメーショナルクエリをSEOで狙い、トランザクショナルクエリをリスティング広告で狙うというのがサーチマーケティングの基本であると、この記事の冒頭で述べました。この理由は、単に相性や役割だけの話ではありません。クエリの種類ごとの検索ボリュームも、この基本を後押ししています。

下のグラフは検索ボリューム全体に占めるそれぞれのクエリの種類の割合で、その内訳はインフォメーショナルクエリが85%、ナビゲーショナルクエリが10%、トランザクショナルクエリが5%、となっています。

クエリの内訳

このデータは、以前ある発表会の中で某検索エンジンポータル運営会社によって非公式に示されたものですので、示せるソースはなく、またおそらく数値も正確なものではありません(そもそもクエリの種類を厳密に区別することはできない)。このため大まかな傾向をつかむ参考程度にとどめて考える必要がありますが、感覚値とはほぼ一致するのではないでしょうか。

私たちが日常的に検索エンジンを利用するその内容を思い返せば、大半の検索は調べ物を意図したインフォメーショナルクエリであり、たまにブックマーク代わりにサイト名で検索するナビゲーショナルクエリがあり、購入や申し込みなどを意図したトランザクショナルクエリによる検索は滅多にありません。グラフに示した数値は正確なものではないにせよ、傾向としては合っているように思います。

こうした傾向をふまえて考えれば、サーチマーケティングの基本的な戦略は次のようになります。

  • 検索ボリュームが大きく、即時のコンバージョンは期待できないインフォメーショナルクエリは、有料のリスティング広告ではなく自然検索で露出を狙う
  • 検索ボリュームが小さく、即時のコンバージョンが期待できるトランザクショナルクエリでは、有料のリスティング広告でクリック率の高いポジションを確実に狙う

あくまでこれは基本であって、例外的には、多大な出費を覚悟しながらリスティング広告でインフォメーショナルクエリを狙うケースもありますし、不確実性の高いSEOでトランザクショナルクエリを狙うこともあります。しかし基本は基本、例外は例外です。サイトのサーチマーケティングを考えるときには、まずは基本の戦略から試すことをおすすめします。

よくある間違いは、リスティング広告と同じようにSEOでもトランザクショナルクエリだけを狙うことです。SEOのプロを自認する人々の中にもこうした間違いを犯す人が多数いますが、これにはいくつもの問題があります。代表的には次のような問題です。

  • 検索ボリューム全体の5%(おそらくそれ未満)しかないトランザクショナルクエリだけを狙うことは、はじめから検索ボリューム全体でインフォメーショナルクエリが占める85%(おそらくそれ以上)を捨てているに等しい
  • トランザクショナルクエリだけを狙うことはつまり、すでにニーズが顕在化した見込客だけを狙うということであり、潜在客に接触する機会と、潜在客を見込客へと育成する機会の両方を捨てているに等しい
  • トランザクショナルクエリにおいて自然検索の上位ランキングを獲得・維持することは困難で、かつ成功しても高いクリック率は望めない。SEOのコスト(主に手間と時間)に照らして費用対効果がどこまで合うか不明瞭

また、トランザクショナルクエリの自然検索結果の上位には販売サイトのトップページが多く見られますが、これはほとんどの場合、トップページ単体を調整した結果というよりは、サイト全体のポピュラリティや信頼度を高めた結果です。それを実現するためには、インフォメーショナルクエリに対応する優れたコンテンツをサイト内に多く持ち、高い評価を得ることが必要です。

つまりトランザクショナルクエリにの自然検索上位を獲得・維持するためにも、まずはインフォメーショナルクエリに対応する優れたコンテンツが必要なのであって、この意味でもSEOはインフォメーショナルクエリに注力していくことが結果的に早道となるということです。そして、インフォメーショナルクエリに対応するSEOは簡単です。

もしあなたのサイトのSEOの基本的な戦略に誤りがあるなら、即時に見直し、今まで捨てていた多くの検索トラフィックと潜在客に目を向けるべきです。そして今までの、すでにニーズが顕在化した見込客を刈り取るだけの運用に加えて、ニーズが顕在化する前の潜在客から育成していく運用を始めることで、より多くの利益を獲得するべきです。