せっかくビジネスブログを運営するのであれば、通常の企業サイトではできないこと、ブログという体裁でなければできないことを中心に運用すべきです。よくある間違いは「売上げアップ」を企業ブログの短期目標にしてしまうこと。これでは通常の企業サイトと何ら変わらず、ブログならではの良さがスポイルされてしまいます。

企業の宣伝を自画自賛をわざわざ見たい読者はいない

企業ブログなりビジネスブログなりというものを始めるにあたって、その目的を明確にしておくというのは重要なことです。しかし、驚くほど多くの人が、その目的を錯誤しているように思えます。例えば、企業ブログの目的としてよく挙げられるものに「販売促進」「売上向上」がありますが、これらは重大な誤りにつながる危険があります。

なぜなら、宣伝や自画自賛ばかりのブログを喜んで訪問する読者なんていないからです。そもそも自己宣伝や自画自賛は、ブログではなく通常のサイトで思う存分やればよいものです。そしてブログでは、自己宣伝や自画自賛ではなく、ブログだからこそできることをするべきです。

以下に、「ブログだからこそできること」を中心とした企業ブログの目的の例を挙げてみます。これは僕がざっと書き出したものにすぎず、実際にはこれ以外にもまだあるでしょうが、大まかな方向性は表現できていると思います。

  1. セールス抜きに読者にとって役に立つ情報を公開する(そしてそれを見てもらう)ことで、読者が企業に対していだく信頼感を向上させる
  2. 定期的に再訪してくれる読者を集め、読者が企業に対していだく親近感や親密度を向上させる
  3. 消費者やその他の関係者と直接的なコミュニケーションをとることによって、今後のためのフィードバックを受け取る
  4. より多くの読者を集めることで、業界や関連業界内での発言力や発言機会を増大させ、存在感を高める
  5. 被リンクを集め、ブログを含むサイト全体のリンクポピュラリティとドメイン信頼度を向上させる

これらに共通の重要なことは「宣伝臭くないブログにする」ということです。たとえ企業が運営するものであろうと、ブログはセールスとは切り離して考えるべきだ、というのが僕の考えです。上記の各項目をよく見直してほしいのですが、ブログはセールスというよりはむしろ、ブランディングの一環としてのほうがよりよく機能します。

中長期のブランディングと短期のセールスは分けて考える

ブログというものは、売り上げを積み上げることよりも、購読者数や信頼度や被リンクのような無形資産を積み上げていくことのほうにより適したメディアです。そして、そうやって積み上げた無形資産は、時間をおいて間接的に、売り上げにも貢献するでしょう。

ブログの読者にとってもらいたいアクションとはどんなものかを考えてみると、それは「読者自身のブログで内容に言及する」であったり「ソーシャルメディアの公式アカウントをフォローしてもらう」であったり「ソーシャルメディアで友人たちと共有する」などです。こういうことを宣伝臭いブログに望むのはとても困難ですが、普通のブログならそう難しくはありません。

マーケティングとセールスを混同し、ブログをブランディングではなくセールスに使用するとどうなるか、ということを、先の5項目と対比する形で以下に示してみましょう。

  1. どんなに役立つ情報でも、それがセールスと同時に語られれば、その信頼性は大きく割り引いて読者に受け取られてしまう
  2. 企業のセールスに対して親近感を持ち、何度でもその宣伝を見るために宣伝臭いブログ訪れるようなことは、ブログ読者に期待できない
  3. セールスばかりするブログとはコミュニケーションは成立しない(というかコミュニケーションしたいと思う人はまずいない)
  4. セールスばかりの企業ブログでは、そこに多数の読者を引きつけることは難しいし、そこでなされる発言に影響力を持たせることはさらに難しい
  5. まるっきりのセールス用コンテンツにリンクするという殊勝な人はまずいない。したがってそういうブログはリンクポピュラリティの向上への寄与は限りなく小さい

よくある企業ブログの失敗例が並ぶ結果となりましたが、現実はこんなものでしょう。こんなブログをやっていても疲れるだけですから、多くの企業ブログが放置されてしまいがちなのも無理はありません。

企業サイトと企業ブログを適材適所で使い分ける

一方で、このような考え方には反対意見もある、ということも紹介しておかなければなりません。ブログの目的として購買や資料請求や問い合わせを設定することを薦めるような人々からは、僕が示したような考え方は反発の対象になります。

反論の根拠となるのは、短期的な売り上げに対する効果です。先に僕が薦めたようなやり方に従うと、短期的には、アクセス数あたりの売り上げ(コンバージョンレート)が下がったり、ブログに投下した手間に対する売り上げ(費用対効果)が下がったりします。これを根拠に、セールスに直結するようなブログをやるべきだ、というのです。

おそらく、こういう反論というのは、Webは良くも悪くも数字が見えやすいメディアであるために起こるのでしょう。確かに数字だけを一見すると、彼らの言い分も正しいように思えてしまうかもしれません。

しかし僕の考えはもう少し違います。つまり、短期的なコンバージョンレートだの費用対効果だのというものを追うのであれば、それはサイトと広告でやるべきだと思うからです。少なくとも、そこにはブログの出番はない。

短期的にコンバージョンレートを高めたいなら、サイト内には購買なり資料請求なり問い合わせなりといった目的に応じたランディングページを用意し、そこに広告を使って購買しそうな人だけを狙い撃ちする形でに集中的に集客すれば、コンバージョンレートは上げられます。

短期的な費用対効果を向上させたいのではれば、ブログのような悠長な施策ははじめから無視し、広告やランディングページの最適化にありったけの手間を投入すればいい。これで費用対効果があがらないはずがない。

ここで強調しておきたいのは、広告や通常のサイトで出せる成果とブログで出せる成果は異なっている、ということです。ブログをやるのであれば、ブログならではの成果を上げることを考えるべきです。ブログならではの成果を狙うのでないなら、悠長にブログなんかやらなければいい。

世の中には「ビジネスブログの目的は売り上げアップ」的な言説がたくさんある(そしてそのほとんどはブログやその周辺のツールやサービスを売りたい業者が声高に叫んでいる)ようですが、そうしたものに惑わされてはいけません。

企業ブログをやる場合には、セールスばかり盛り込んで無駄になるブログをやるではなく、ブランディングを目的とし、企業イメージを高めるようなブログを展開していただきたいものです。自己宣伝や自画自賛で塗り固めた(面白くもない)コンテンツは、わざわざブログを使わずとも、通常の企業サイトでいくらでも発信できるんですから。