成果に直結するSEO、とか、コンバージョンを重視したSEO、といったアピールは、SEO業者やウェブ制作会社のセールストークとして頻繁に見かけます。しかしこれは一種のポジショントークであり、売上げの確保はリスティング広告を中心にするほうが効果的かつ効率的です。

売れるキーワードでのSEOが招く悪循環

コンバージョンに直結しやすい検索キーワード、いわゆる売れるキーワードでのSEOは困難なものになりがちです。詳細については後述するとして、困難になってしまいがちになる理由だけを挙げると次のようになります。

  • 上位のランキングを獲得または維持することが困難
  • 上位のランキングを獲得できても効果を最大化しにくい

短期で売上げに直結するキーワードではリスティング広告を積極的に活用すべき、というのは検索マーケティングにおける常識です。しかしSEOにこだわりを持つ人々(このサイトの読者のように)の中には、リスティング広告を活用する視点を忘れていることが多いようです。

SEOの効果が最大になるのは、調べ物をしている人々の関心に一致させるコンテンツを発信し、知識提供による顧客育成のために使うときです。短期のコンバージョン獲得は不可能ではありませんが向いてはいません。適切な使い分けが必要です。

それでもなお売れるキーワードでのSEOにこだわった場合、どうしても陥りやすい悪循環があります。これは失敗するSEO、効果のないSEOの見本のようなもので、およそ次のようなものです。

  1. アクセスが少ない
  2. 少ないアクセスを高率でコンバートさせようと売り込みに必死になる
  3. さらに検索者の文脈と乖離する
  4. アクセスがより一層少なくなる

検索マーケティングのごく初歩的な部分を理解していれば、こうした間違いは起こさないはずですが、現状はまだまだ理解されないことが多いようです。少し基礎的なことになりますが、確認していきましょう。

検索キーワードには4種類ある

まず前提として検索の目的からみた検索者で解説している通り、検索キーワード(検索クエリ)はその意図によって次の4種類に分類することができます。

1. インフォメーショナル検索クエリ(Informational queries)
情報探索のための検索。検索対象は幅広く、適切な検索結果も検索者によって異なる。
例: 「自転車 + パンク修理 + 方法」「スルメイカ + パスタ + レシピ」
2. ナビゲーショナル検索クエリ(Navigational queries)
特定のサイトやコンテンツに移動するための検索。
例: 「2ちゃんねる」「YouTube」
3. トランザクショナル検索クエリ(Transactional queries)
購入やダウンロードなどの意図のもとに行う検索。
例: 「楽天 + 空気清浄機 + セール」「アップルストア + MacBook」
4. コネクティビティ検索クエリ(Connectivity queries)
サイトとの接続性を確認するための検索。主にサイト管理者が行う。
例: 「site:www.mydomain.com」「link:www.mydomain.com」
(詳しくは特殊な検索式とコネクティビティクエリを参照)

ここで話題にしているいわゆる売れるワードは、上記で言えば3の「トランザクショナル検索クエリ」に相当します。この種のクエリは、そもそも買い物を意図したものであるため、コンバージョンに結びつきやすいのは確かです。しかしここで注意したいことが3点あります。

  • 確実にトランザクショナル検索クエリと判断できるクエリは、他の検索クエリに比べるとボリュームが極端に小さい
  • 確度の高いトランザクショナル検索クエリ(つまり売れるキーワード)での検索は、確実に露出しなければ機会損失が大きい
  • 露出させる限りは極限までコンバージョンレートを高める施策が必要になる

この3点に注意しながら、もう少し具体的に見ていきましょう。

自社の売れるキーワードを知る

自社にとっての売れるキーワードの見つけ方についての詳細は心理的段階に応じたSEOとリスティング広告の併用で解説していますが、ごく単純に説明しておくと次のようになります。

  • 「製品やサービスのジャンルや名称 + 購入」のような形で、商品を表すキーワードと、購入意向を表すキーワードとのand検索になるようなもの
  • 購入意向を表すキーワードは他に、予約、申し込み、在庫、送料無料、販売、通信販売、相談、問い合わせ、割引、特価、セール、などがある
  • 店舗や事務所を探している場合には「製品やサービスのジャンルや名称 + 地名」のような形で、商品を表すキーワードと、地名を表すキーワードとのand検索になる

アクセス解析を見ても、この種のキーワードによるアクセスが高い確率でコンバージョンに繋がっていることが確認できるはずです。そこで短絡的に「ならばこうしたキーワードをSEOで集中的に狙えば良いのでは?」と考えることは、冒頭で述べた悪循環の始まりです。

ここでまず留意しておかなければならないことは、検索クエリのほとんどは情報探索のためのインフォメーショナル検索クエリであり、トランザクショナル検索クエリは検索される回数そのものが少ないということです。

これは考えてみれば当然のことです。私たちは日常的に検索を使いますが、その目的の大半は調べ物であり、買い物を意図したものではありません。私たちは一日に何十回も検索しますが、一日に何十回も買い物はしません。それはあなたの顧客も同じです。

なお検索ボリューム(検索数)については無料のAdWordsキーワードツールで大まかに知ることができますので、自社にとって効果のありそうな売れるキーワードについて調査してみるとよいでしょう。売れるキーワードの検索ボリュームは意外に少ないことに気付くはずです。

それぞれのキーワードの検索ボリュームが小さいということはつまり、売上げの最大化のためには、より確実な露出と、より高いコンバージョンレートが求められるということです。確実な露出は、アルゴリズムの影響を受けるという性質からSEOでは不可能です。そしてコンバージョンの最適化も、SEOではうまく実施しにくい理由があります。

売るLPと知らせるLPの違い

SEOでトランザクショナル検索クエリでの上位表示を狙うにあたって問題になるのがランディングページです。売るために最適化されたランディングページと、情報を伝えるために最適化されたランディングページは、性質が異なることに注意しなければなりません。

知らせるためのランディングページ
検索者が探している情報が中心。検索の文脈とコンテンツの文脈が一致しやすいため、検索結果のランキングにおいても良好な位置を確保しやすく、クリック率も高い
売るためのランディングページ
購買意欲の高い訪問者をコンバートさせる目的が中心。購買を力強く後押しするセリングメッセージで構成され、訴求からクロージングへと流れるようなシナリオを必要とする

知らせるためのランディングページと売るためのランディングページの違いは上記のようなもので、明確に異なる性質を持っています。そしてこの性質の違いが、SEOの難易度(特にランキングにおける上位表示の難易度)に強く影響します。

売るためのランディングページはその性質上どうしても情報が薄くなりがちです。訴求からクロージングに至るシナリオを洗練させ強化させればさせるほど、情報と呼べるものは少なくなっていきます。「今すぐ買ってくれ」というメッセージは情報ではないからです。

高品質なコンテンツとはどのようなものかの中で述べたとおり、情報とは「受け手の知識に変化を及ぼすもの」のことを言います。つまり、受け手がそれまで知らなかったことを新たに知ったというときの「新たに知ったこと」が情報です。

「今すぐ買ってくれ」というメッセージを受け取っても、メッセージの受け手の知識は変化しません。つまりそれは情報ではないということです。情報の薄いページはユーザーからも検索エンジンからも情報の入手先としての評価は受けにくく、したがってSEOでの露出は困難なものとなります。

つまり、売るためのランディングページについては、リスティングからのランディングを中心に考え、自然検索からのランディングは意識しないようにしたほうが、売る機能の最適化が効果的になるということです。ここを混同すると、検索マーケティングそのものが機能不全に陥ります。

少ないパイの奪い合い

すでに購買意欲の高まった見込客を狙って釣り上げることは、短期の収益確保の観点からは非常に重要ですし、それを実現する方法もあります。この漁場をみすみす他社に譲るのは惜しいですから、参戦すべきなのはいうまでもありません。

しかしSEOで参戦するのは賢い戦略でしょうか? 優良な潜在客の数は限られている上に、すべての競合他社が同じ獲物を狙っているという過酷な状況です。競争の激しさはそのまま、SEOの難しさでもあります。

  • 売れるキーワードの検索ボリュームは小さく、検索ランキングをめぐる競争は激しい
  • 売るためのランディングページは情報が不足しがちであるため、知らせるためのランディングページに比べてSEOでは不利になる
  • SEOを有利に実施するためにページを作れば、それは知るためのランディングページになってしまい、セールスが弱くなる
  • より売れるキーワードを探したり、より売れるようにランディングページを最適化したり、といった作業をSEOで実施するのは、時間がかかりすぎるだけでなく不確実性が高すぎる
  • 売れるキーワードの細かなバリエーションのすべてをSEOでカバーするのは不可能に近い

上記が、SEOにおいて売れるキーワードにこだわるべきでない理由です。こうした不利な状況にあることを自覚しないまま、売れるキーワードにだけこだわったSEOを続けると、その結果としてもたらされるものは冒頭で述べたような悪循環であり、サイトの機能不全です。

こうした機能不全を避けるためには、目標設定の時点でSEOの目標とコンバージョンを関連づけないようにすることがおすすめです。SEOではサイト全体の訪問者数の増加を目標に設定し、コンバージョンの目標とは独立させるのです。

SEOにおいてコンバージョンを狙わないというわけではありませんが、あくまでSEOで狙うのは中長期の顧客育成に立脚したコンバージョンに設定し、積極的に獲得したい短期のコンバージョンはリスティング広告で狙います。

リスティング広告を活用する

見込客が使用するトランザクショナル検索クエリを確実にカバーし、よりコンバージョンに最適化されたランディングページを表示することで、より多くの売上げを立てたいのであれば、SEOよりもリスティング広告を利用するほうがはるかに効率的で確実です。

これは心理的段階に応じた使い分けの問題です。ここまで述べてきたSEOの不利な点に対して、リスティング広告には次のような利点があり、それらはSEOと互いに補完し合うものです。

  • 自社にとっての売れるキーワードを最小の手間で発見することができる
  • 売れるキーワードの検索ボリュームは小さく、したがってクリック数も少ないため、多大なコストを投入する必要がない
  • 自然検索における競争の激しさに関係なく、売れるキーワードで確実に露出することができる
  • 売るためだけのためによく最適化したランディングページに誘導することができ、より高いコンバージョン率を達成することができる
  • 売れるキーワードにどれほどのバリエーションがあったとしても、容易にすべてをカバーすることができる
  • 見込客の検索結果での露出を最大化することができる

余談になりますが、クリックごとの課金を嫌ってリスティング広告を敬遠する企業はまだまだ多いようです。多くのウェブ制作会社もまた、同じ理由でリスティング広告をクライアントに提案していないようです。これは非常にもったいないことです。

そもそもですが、リスティング広告がここまで普及し、ウェブ広告における主役の地位を長年守っている理由は、広告主にとってメリットが大きいからです。ごく単純に表現すれば広告主は儲かっているから出稿し続けているのです。

リスティング広告は、広告主が効果的でないと判断したら即時に停止することができます。効果測定も極めてシビアです。つまり儲からなければすぐに停止するものであり、あなたの競合を含め、続けている会社はすべて儲かっているということです。この事実は重く受け止めるべきでしょう。

また現状、どのような調査を見ても、またどのような実例を見ても、すべてのトラフィックソースの中で最も高いコンバージョン率を叩き出すのはリスティング広告によるトラフィックです。これはキーワードとコピーによる緻密なターゲティングと、コンバージョンに最適化されたランディングページの組み合わせが現時点での最良の解であることを示しています。

SEOとリスティング広告の役割の違い

ここで一度、SEOとリスティング広告の役割について表にまとめておきましょう。検索結果での露出という意味ではよく似たところのあるSEOとリスティング広告ですが、役割はまったく異なり、アプローチも異なります。

SEO リスティング広告
中長期視点での顧客育成 短期のコンバージョン獲得
情報提供に最適化したLP 販売だけに最適化したLP
トラフィックを最大化する 売上げを最大化する
読者やファンを作る 売上げや利益を作る
潜在客が対象 見込客が対象
耕し種を蒔き水をやる 刈り取る
継続的な情報発信 継続的な最適化

SEOは潜在客にリーチし、情報提供を通じて見込客へと育成するものであり、顧客育成や読者の獲得を目標にする農耕型のアプローチです。一方でリスティング広告は、購買意欲がある高まった見込客だけを狙い撃ちにし、確実にコンバージョンにつなげることを目標とする狩猟型のアプローチです。

これらは、どちらがより重要か、ということではなく使い分けて両立していくべきものです。ただし一般論としては、SEOより先にリスティング広告に取り組むほうが検索マーケティング全体のパフォーマンスが向上することは多いと言えます。その理由は次のようなものです。

  • まず売上げと収益を作り、体質を強化した後で、じっくり腰を据えてSEOに取り組むことができるようになる
  • 売れるキーワードをより緻密に知ることにより、その情報をSEOにも活用することができる
  • 緻密に最適化された売るためのランディングページをサイト内に持つことにより、サイト内で回遊しているトラフィックをコンバートさせる率が向上する
  • リスティングで入札するわけにはいかながいがSEOで集客したいキーワードを知ることができる

SEOの担当者がリスティング広告を知らないのは損です。というよりも、SEOとリスティング広告の両方を知らなければ検索マーケティングの全体像が見えてきません。冒頭で示した悪循環の例は、検索マーケティングの全体像が見えていないことから発生するものです。

このサイトで発信する情報はSEOに偏りがちですが、リスティング広告に関するよい情報源は他にありますし、このサイトのニュース機能を使って取得するのも有効です。専門性に特化することは悪いことではありませんが、他の領域を学ぶことで視野が広がることもあります。ぜひ試してみてください。