どんなに優れたコンテンツであっても、誰も見ていない場所にひっそりと公開するだけではクチコミは発生せず、したがってリンクグラフもソーシャルグラフも成長せず、SEOの取り組みとして効果を発揮させることはできません。コンテンツにその潜在能力を十分に発揮させるためには、告知経路の整備が必要です。

SEOの2つのプラクティス

SEOの日々の取り組みは、新しいコンテンツを制作することです。しかしそれだけでは十分ではなく、コンテンツを公開したことを効果的に告知しなければなりません。制作したコンテンツをただネットの片隅にひっそりと公開するだけでは、思わしい効果を生むことは困難だからです。

  1. 新しい話題を提供する(新しいコンテンツを公開する)
  2. 新しいコンテンツを告知するための経路を整備する

読者に新しい話題を提供するようなコンテンツを制作するだけでなく、そのコンテンツを効率よく読者に届けるための告知経路を整備することもまた、重要かつ必要な取り組みです。この意味で、制作と告知は表裏一体であると言ってよいでしょう。

告知を受けることを許可した人々

効果的な告知を実施するためには、告知を受けることを許可した人々を多く確保することが必要です。告知を受けることを許可した人々とは、具体的には次のような人々です。

  • ニュースレター(メルマガ)の読者
  • RSSフィードの購読者
  • Twitterアカウントのフォロワー
  • Facebookページにいいね!した人々

これらの人々は、サイト運営側からの新しいコンテンツを公開したという告知によって、高い確率でコンテンツを見るためにサイトに再訪してくれる人々です。熱心なリピーターと言い換えてもよいでしょう。そしてこうした人々はクチコミの起点としても機能し、SEOの効果をより大きなものにしてくれます。

被リンクとソーシャルシグナル獲得の起点

コンテンツをクチコミで拡散させるためには、コンテンツそのものに魅力があることはもちろんですが、クチコミの起点となる人々に確実にリーチすることもまた重要です。そして、クチコミの起点となるのは、ここまで述べてきたような、告知を受けることを許可した人々です。

検索エンジンは実在の人間による評価を検索結果に活かすための試みとして、サイト外部からのシグナルを検索結果に利用します。それは被リンクであったり、ソーシャルシグナルであったりしますが、いずれにしても言えることは、それらはコンテンツがクチコミで拡散した結果であるということです。

  1. 新しい話題となるコンテンツを公開する
  2. 告知の受け取りを許可した人々にまず伝え、そこを起点としたクチコミの発生を促進する
  3. ウェブ上でのクチコミの結果として被リンクを受け取る
  4. 被リンクを受け取ることにより検索エンジンからの評価を高める

上記は、被リンクというシグナルを獲得することによって検索エンジンからの評価を高めるステップを簡略化して示したものですが、ソーシャルシグナルによる評価の獲得も同様のステップによってもたらされます。クチコミには起点が必要であり、それは告知を受けることを許可した人々なのです。

意識すべきもう一つのコンバージョン

商用のサイトの最終的な目標は、サイトへのトラフィックを売上げにつながる何らかのアクションに転換することでしょう。もちろん、一度のアクセスで即時にコンバートさせることができれば理想です。しかしそうした直接コンバージョンだけでなく、再訪につなげるためのアクションをとってもらうこともまた重要です。

再訪につなげるアクションとはつまり、ニュースレター(メルマガ)の登録であったり、RSSフィードの購読であったり、Twitterのフォローであったり、Facebookページのいいね!であり、そのようなサイト側からの告知を受け取ることを許可するアクションです。

告知を受け取ることを許可してもらうことは直接コンバージョンではありませんが、第二のコンバージョンとして意識しておく価値があります。なぜなら、それがソーシャルメディアや検索での露出を増やし、新たな訪問者との接点を作ることにつながるからです。

  1. 告知の受け取りを許可した人物の再訪が、クチコミの起点になる可能性を生じさせる
  2. クチコミが発生することで新たなユーザーとの接点が作られる
  3. ソーシャルグラフやリンクグラフの成長によって検索にも強くなり、新たなユーザーとの接点がさら増える

サイト運用やSEOの成功を計る指標はいくつか考えられますが、告知を受けることを許可した人々を増やす、というのもその一つに加えるべきでしょう。この人々がトラフィックを誘導する呼び水になり、サイトはより機能するようになるからです。そしてそれは、最終的な目標である「買ってもらう」ことにも貢献します。

買ってもらう、の前の目標

ウェブサイトの運用では、どうしても直接コンバージョンを重視しがちです。これは、ウェブはアクセス解析などによる計測が容易であるため、主に広告などの費用対効果を見極めやすいということが理由でしょう。それ自体はウェブの優位性でもあり、一概に悪いこととは言えません。

しかし、直接コンバージョン以前に必要な目標があることを忘れてはいけません。他媒体に目を向ければ、大手企業が巨大な費用を投じているマス広告のほとんどは、直接コンバージョンを狙ったものではないことがわかります。ではそれらは何を目的にしているかと言えば、次のようなことです。

  1. 知ってもらう
  2. 覚えてもらう
  3. 親しんでもらう
  4. 信頼してもらう
  5. 話題にしてもらう

「買ってもらう」というのは、上記のようなことの後に狙うことです。これは現状のウェブにおいても同様で、例えば直接コンバージョンを狙う最適化されたランディングページのようなものであっても、上記のステップの主要ないくつかを1ページの中で一気に進ませようと試みるものです。

しかしあくまでも、最適化されたランディングページで直接コンバージョンを狙うのは、通常の購買行動から見れば極端な例です。通常なら時間をかけて、まずは知ってもらい、そして覚えてもらい、親しんでもらい、信頼してもらい、そして買ってもらう、というステップを進みます。その途中で話題にしてもらうことができればさらにいいでしょう。

こうしたステップの中で重要な役割を果たすのが、ここまで述べてきたような「告知を受け取ることを許可した人々」の存在です。告知を受け取ることを許可した人々の存在が、その他の、買ってもらう前の段階にいる人々にアプローチすることを容易にするのです。これがクチコミの威力です。

クチコミの発生を誘発するための施策

告知を受け取ることを許可した人々を増やすためにできることは、先述したように、訪問者をニュースレター(メルマガ)の登録や、RSSフィードの購読や、Twitterのフォロー、Facebookページのいいね!へと誘導することです。これがトラフィック増加の第一歩であり、SEOにおいては被リンク構築やソーシャルシグナル獲得の基礎となります。

このとき、より多くのクチコミの発生を目指すのであれば、誘導先の優先順位も考える必要があります。ごく単純に言って、ソーシャルメディア上で受け取った告知のほうが、それ以外の経路で受け取った告知よりも、その場で再共有しやすい、という点には注意を向ける価値があるでしょう。

つまり、クチコミの発生を優先するのであれば、ニュースレター(メールマガジン)やRSSへの誘導よりも、TwitterアカウントのフォローやFacebookページのいいね!へとより多く誘導したほうが、その場でシェアしやすいのでよりよい、ということです。こうしたことに留意し、優先順位をつけて取り組むとよいでしょう。

積極策としてのFacebook広告

告知を受け取ることを許可してもらうための施策というのはこれまで、そう積極的に実施されてきませんでした。あくまでも主目的は本来のコンバージョン(決済や問い合わせなど)へと誘導することであり、告知の受け取りを許可してもらうことはその次、という位置づけです。

告知を許可するアクション(各種の購読など)を引き出すための施策そのものも地味なものが多く、ウェブページ上に配置した登録フォームや Like Box の位置や誘導コピーなどを工夫する、といったものが中心で、そう積極的なものではありませんでした。もちろん効果も限定的です。

ところが今は、Facebook広告があります。Facebook広告を使えば、自前のページ上からの誘導にとどまらず、多くの人々が集うFacebook上で、興味をもってくれそうな人々を狙って、積極的かつ効率的にFacebookページにいいね!を集めることができます。

その費用は2013年5月現在、Facebookページへの1いいね!あたりおよそ35円から100円程度です。これは、継続的にリーチできるユーザーの獲得費用としては破格の安さであると筆者は感じます。ましてこれは、クチコミの起点として極めて機能しやすいプラットフォーム上での話です。こんなに素晴らしいものはありません。

とはいえおそらく、今後Facebook広告に参入する企業が増えてくるにつれて、広告費用は上昇し、効率は落ちていくでしょう。それは今までリスティング広告が歩んできた状況と同じことです。それは問題でしょうか? 確かに、競争が激化してから参画するのなら問題でしょう。

しかしFacebook広告に関しては、リスティングほどの問題はありません。広告出稿をやめたら何も残らないリスティング広告と違って、多くの競合が参入し効果が下がってしまう前に集めたいいね!は、出稿を停止した後にも残るからです。むしろ競合の増加やそれにともなう非効率化は、参入障壁が上がるという意味で、先行する者にとって好ましいくらいです。

低価格で効率よくFacebook広告を配信できる今は、あなたのビジネスからの告知を受け取ることを許可してくれる人々、クチコミの起点となってあなたの提供する話題を広めてくれる人々を増やすチャンスです。こうした環境はをうまく使えば、SEOやその他のマーケティング施策は劇的に速く、そして楽になるでしょう。

ただし注意すべき点もあります。それは、Facebookページで共有されるコンテンツが低品質だったり、Facebookページの運用がしっかりしていないような場合、同じ予算を広告に投入したとしても、優れたコンテンツを共有しきちんと運用されているFacebookページほどの効率は上がらないということです。コンテンツそのものの魅力を避けて通るわけにはいかない、というのは広告でも同じなのです。