SEOとリスティング広告の違いを理解し、両者をうまく使い分けながら併用することで、サーチマーケティングの効果をさらに高めることが可能になります。この記事では、検索者の心理的段階に着目し、SEOとリスティング広告の使い分けと併用について解説します。

SEOとリスティング広告の違いと使い分け

コンバージョン率を向上させるために最も重要なことは、購買意欲の高い消費者だけにターゲットを絞り込んで集客することであり、これはリスティング広告(PPC広告)が得意としていることです。

一方でSEOは、情報を発信することで情報を探している人々に効率的にリーチでき、そのトラフィックは無料であるため、中長期的な顧客育成に適しています。情報提供を通じて潜在顧客にリーチし、さらなる情報提供を通じて見込み客へと段階を進ませることが、SEOの主な役割です。

PPCの役割
すでに購買に向けた心理的段階が十分に高まっている見込み客を狙い撃ちし、コンバージョンを獲得する
SEOの役割
まだ購買に向けた心理的段階が低い潜在顧客に幅広くリーチし、情報提供を通じて心理的段階の向上を促進する

上記をふまえ、検索者の心理的段階に応じてリスティング広告とSEOを適切に使い分ければ、検索マーケティング全体の効率は格段に上昇します。心理的段階が高い検索者だけをリスティング広告で狙い撃ちし、それ以外はSEOでフォローするというのが基本的な戦略です。

購買行動における心理的段階とは

詳しくはSEOによるコンバージョンの獲得と向上で紹介していますが、このサイトでは、消費者の購買行動における心理的段階を5段階に分けて考えています。この記事ではその5段階のうち、次に示すの最初の3段階について主に扱います。

1. 現状への疑問の発生
何かのきっかけを得て、それまで疑問を感じていなかったことに対して疑問を感じるようになった段階。解決すべき課題がありそうだということに気付いているだけで、まだこの段階では問題やニーズは具体化していない
2. ニーズの具体化
疑問を形作っている問題またはニーズが明確になり、問題を解決する、またはニーズを満たす商品について考え始める段階。いくつかの商品やサービスについて調査を始める
3. 解決策の決定
購入すべき商品やサービスが明確になり、いつ、どこで、いくらで購入するかを検討する段階。販売店の情報やセール情報などを調査し、購買を決める

検索者の心理的段階による違い

心的段階が高い検索者と心理的段階が低い検索者のそれぞれの特徴と違いを整理します。

  • 心理的段階が高い(購買意欲が高い)検索者
    • リスティング広告であれSEOであれ、高いコンバージョンレートが期待できる
    • リスティング広告を積極的に使うことによってより大きな成果が期待できる
    • 検索者全体に占める割合が低く(数が少なく)、少数の検索者を多数の業者で奪い合う構図になるので、SEOの難易度は高く、リスティング広告のクリック単価も高くなりがち
  • 心理的段階が低い(購買意欲が低い)検索者
    • コンバージョンレートは低く、クリックのほとんどは購買はつながらない
    • リスティング広告の露出やクリックは無駄な予算消化につながる一方、露出やクリックを減らすことで高効率化できる
    • SEOによる無料のトラフィックで対応すれば費用がかからない
    • 情報提供によって集客しやすいので、SEOとの親和性が極めて高い
    • 検索者全体に占める割合が高く(数が多く)、検索回数が多くキーワードの種類も幅広いため、コンテンツの質と量に応じてトラフィックが増えるなど、SEOが容易
    • 心理的段階が進むまでの時間を使って、SEO(適切な情報提供)によるリーチを繰り返せば、検索者との間に信頼度と親密度を醸成することが可能

検索者の心理的段階は検索キーワードに現れる

検索者の心理的段階は、検索に使用するキーワードに現れます。心理的段階によって、検索キーワードが変化するのです。まずは具体例を見てみましょう。以下は、ジムニー(自動車)のタイヤのアップグレードを検討している場合の例です。

「1. 現状への疑問の発生」の段階
「ジムニー + タイヤ」
「2. ニーズの具体化」の段階
「マッドテレーン + 性能 + ジムニー」
「3. 解決策の決定」の段階
「ジオランダーMT + 185/80R16 + 価格 + 大阪」

上記の例では、漠然としたキーワードで1の検索をしているうちによりオフロード性能の高いタイヤの情報に触れ、2ではオフロードタイヤがもたらす性能の変化について調べ、3では具体的な商品名とサイズをもとに大阪での価格を調べています。

もう一つ別の例を見てみましょう。次の例は、購入意図はないままなんとなく素麺について調べていて素麺には種類があることを知り、1のような検索をして知った半田素麺に興味を持って2の検索を行い、最終的にどうしても欲しくなり3の検索を経て購入しています。

「1. 現状への疑問の発生」の段階
「そうめん + 種類」
「2. ニーズの具体化」の段階
「半田そうめん + 特長」
「3. 解決策の決定」の段階
「半田そうめん + 通販 + 箱」

このように、消費者の検索キーワードは購買への心理的段階によって変化し、心理的段階が低いほどキーワードは漠然としたものになり、心理的段階が高まるにつれてキーワードは具体的で詳細なものになっていきます。これをまとめると次のようになります。

「1. 現状への疑問の発生」の段階
検索の目的:単なる調べ物
キーワード:広範囲をカバーする漠然としたもの
「2. ニーズの具体化」の段階
検索の目的:より具体的な情報の検索
キーワード:製品やサービスの性能や特長など
「3. 解決策の決定」の段階
検索の目的:販売店の検索
キーワード:特定の商品名やブランド名に加えて、地名や店名などの複合

心理的段階に応じて使われる複合キーワードの具体例

複数の単語を組み合わせたand検索の形で行われるキーワード検索では、メインのキーワードと同時に使用されるサブのキーワード(複合キーワード)に心理的段階による変化が現れやすくなります。

例えば同じく「そうめん」について検索する場合でも、「そうめん + 生産地」と検索する場合と「そうめん + 島原 + 手延べ + 即日発送」と検索する場合を比べれば、後者のほうがより心理的段階が高い(購買意欲が高い)ことは明らかです。

この複合キーワードに着目し、SEOとリスティング広告を使い分けることによって、検索マーケティングの効果を大きく向上させることができます。ここからは、心理的段階ごとに使用されやすい複合キーワードを分類し、その具体例を示していきます。

「1. 現状への疑問の発生」の段階における複合キーワード

心理的段階の低いこの段階での検索は、購買意欲は小さいかまたはまったくなく、ほとんどは購買とは別の意図で検索しているものと考えます。このため即時のコンバージョン獲得はほとんど期待できません。

したがって、ここで紹介するキーワード群には次のような使用法が適切です。

  • SEOにおいてはコンテンツ制作のヒントにする
  • リスティング広告では除外キーワードに指定する

以下に複合キーワードの具体例を示します。

DIY系
方法、手法、やり方、作り方、自分で、実践、DIY、自作、改造、カスタマイズ、修理、リペア、レストア、メンテナンス、チューニング、手入れ、整備、掃除、清掃、クリーニング
情報探索系
意味、とは、常識、ノウハウ、ハウツー、秘密、秘訣、裏技、コツ、テクニック、トリック、使い方、マニュアル、活用法、資料、データ、統計、グラフ、チャート、白書、リスト、リンク集、辞書、辞典、用語集、Q&A、FAQ、よくある質問、よくあるご質問、ヘルプ、画像、写真、動画、図面、書籍、本、参考書、wikipedia、ウィキペディア
無料系
無料、フリー、ダウンロード、コピー、割れ、割れ物
求職系
就職、転職、募集、求人、人材、アルバイト、パート、正社員、派遣
教育系
セミナー、トレーニング、講座、学校、スクール、教育、カリキュラム、ハンズオン、試験、受験、資格、ライセンス

上記のリストの中で、特に「DIY系」「情報探索系」としたもののほどんどは、SEOで面白いほど集客できるボーナスワードです。ぜひ、これらのキーワードを使ってコンテンツを作ることを試してみてください。

「2. ニーズの具体化」の段階における複合キーワード

この段階は、問題またはニーズがある程度は明確になり、商品やサービスについて調査をしている段階です。検索者に対して十分な情報を提供することができれば、コンバージョンの獲得が期待できます。

この段階では、いかに消費者の情報ニーズに合った質の高い情報を提供するかが鍵となります。したがって、ここで紹介するキーワード群には次のような使用法が適切です。

  • SEOにおいてはコンテンツ制作のヒントにする
  • リスティング広告ではサイトごとの必要に応じて、部分一致に追加または除外キーワード指定をする

以下に複合キーワードの具体例を示します。

価格系
価格、費用、料金、値段
諸元系
性能、スペック、特長、特徴、長所、短所、欠点、欠陥、適合、適合表、対応、対応表、マッチング、バリエーション、オプション、アクセサリー、パーツ、サイズ、スピード、重量、カタログ、主要諸元、諸元表
比較・クチコミ系
選び方、選択、比較、人気、売れ筋、おすすめ・ランキング、口コミ・クチコミ、レビュー、インプレッション、評価、評判、感想、体験、経験
事例系
事例、ケーススタディ、実績
アフター系
寿命、耐久性、コスト、ランニングコスト、アフターサービス、アフターフォロー、サポート、保証、保障、補償、クレーム、苦情、不良、返品、返金、解約、退会、脱会
買い換え系
買い換え、乗り換え、バージョンアップ、アップグレード、互換性
B品・中古系
アウトレット、並行輸入、並行品、並行物、バルク、わけあり、訳あり、ワケアリ、訳アリ、B品、B級品、B級、型落ち、型遅れ、旧品、旧製品、旧型、旧モデル、新古、展示品、中古、ユーズド、セコハン、オークション、在庫処分、処分品
連絡系
地図、アクセス、マップ、電話番号、TEL、住所、所在地、メールアドレス、mail、問い合わせ先、連絡先

「3. 解決策の決定」の段階における複合キーワード

この段階は、購入すべき商品やサービスが明確になり、いつ、どこで、いくらで購入するかを検討する段階です。販売店の情報やセール情報などを調査し、購買を決定します。言い換えればコンバージョン直前の状態です。

したがって、ここで紹介するキーワード群には次のような使用法が適切です。

  • リスティング広告で部分一致に追加
  • キーワードに応じた適切なランディングページの制作
  • ランディングページに対するSEOの実施

以下に複合キーワードの具体例を示します。

即決系
予約、申し込み、入会、購読
緊急系
入荷、入庫、在庫、即納、即日発送、即日出荷、即日対応、翌日発送、指定日配達、指定日出荷、24時間
支払い方法系
クレジットカード、ローン、分割、月賦、割賦
店舗選び系
販売店、代理店、正規代理店、販売代理店、正規品、リテール、純正、ショップ、ディーラー、サービサー、専門店、専門、会社概要、会社情報、購入、販売、通信販売、通販
商談・下見系
相談、問い合わせ、商談、業販、ショールーム、展示場、商談会、デモ展示、店頭デモ、デモ店舗、デモ実施、展示店舗、店頭展示、展示販売、下見、サンプル、モニター、試供品
特価系
割引、クーポン、特典、キャンペーン、フェア、内覧会、展示会、即売会、展示即売会、特売、安売り、激安、特価、格安、セール、バーゲン

上記のリストの中で、特に「即決系」「緊急系」「支払い方法系」としたものは、すぐにも買う意欲にあふれたボーナスワードです。リスティング広告にSEOにLPOに、ぜひ活用を検討してください。

リスティング広告とSEOでコピーを書き分ける

ここまで紹介してきた検索者の心理的段階に応じた複合キーワードは、除外キーワード指定や部分一致指定といった使い方の他に、コピーライティングに応用することでも、SEMの効率を大いに向上することができます。ここでコピーの基本戦略についてまとめます。

リスティング広告のコピー
  • 心理的段階の十分に高い(コンバージョンへの意欲の高い)検索者だけが魅力的に感じ、クリックしたくなるようなコピーにする
  • 単に調べ物をしているだけのような心理的段階の低い検索者にとっては魅力がなく、(検索者と広告出稿者の両者にとって)無駄なクリックを発生させないようなコピーにする
SEOのコピー
  • 商品の販売ページではリスティング広告に準じる基準でコピーを書く
  • 情報提供ページでは、調べ物をしている検索者がクリックしたくなるようなコピーを書く

リスティング広告のコピーの書き方

リスティング広告で効果を上げるためのコピーは、次の2点を両方とも満たすものであることが理想です。

  • 心理的段階の高い検索者に対しては魅力的なコピー
  • 心理的段階の低い検索者が見ても魅力を感じないコピー

このように書くと相反する条件を克服しなければならず難しいもののように見えますが、先に紹介した「3. 解決策の決定」の段階における複合キーワードで挙げたキーワード群を含めながらコピーを書くだけで達成できます。例を挙げてみましょう。

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上の例を見ていただくのが最も分かりやすいとは思いますが、「3. 解決策の決定」の段階における複合キーワードで挙げたキーワード群を含めながらコピーを書くことで、次のような効果が得られます。

  • 心理的段階が十分に高まっている検索者に対してはアクションのための最後の一押しを行う
  • 単に調べ物をしているだけの検索者に対しては「これは何かを売りつけようとする販売ページへの誘導広告であって、調べている情報の入手先としては適切でない」と認識させ、無駄なクリックを防ぐ

この方法を導入すると、クリック数やクリック率の減少といった変化が起きますが、これは無駄なクリックが減少した結果です。最終的には、コンバージョンレートの向上と顧客獲得単価の低下によって、費用対効果が向上します。

SEOのコピーの書き方

SEOのコピーライティング(title要素のライティング)の秘訣は、どれだけ集客してもコストが変動しないというSEOのメリットを活かして「コンバージョンレートは気にせずにとにかくトラフィックを集める」というのが基本となります。

商品ページなどアクションに直結しやすいページのタイトルはリスティング広告の場合と同様の方法で書けばよいのですが、それ以外の、特に情報提供のために作られているページについては、調べ物をしている検索者の集客が中心となります。

調べ物をしている検索者を効率的に集客するためには、次のような手順をとることが有効です。

  1. 「1. 現状への疑問の発生」の段階における複合キーワードで挙げたキーワード群を中心に、「2. ニーズの具体化」の段階における複合キーワードで挙げたキーワードを検討しながら、調べ物をしている検索者にとって役に立つコンテンツの案を出す
  2. リンクベイティングによる被リンク構築を参考にタイトルのコピーを考えつつ、同時進行でコンテンツの構成を考える

また、次の各ページも参考になるかもしれません。

心理的段階が有効でないケース

ここまで検索者の心理的段階に着目するSEMの具体的な手法について解説してきましたが、もちろん常にそれが正解というわけではありません。次のような例外もあります。

  • 大企業が潤沢な予算をもって行うような、サイトへの集客そのものが目的となっているタイプの広告キャンペーン(認知拡大やブランディングが目先のゴールとなっているもの)のように、ある意味「クリック数 ≈ コンバージョン」である場合
  • 消費者金融やクレジットカード、保険商品、健康食品などのように、極めて顧客生涯価値(LTV: ライフタイムバリュー)やリピート率が高いものを扱っており、顧客獲得単価を高く設定しても問題ない企業の広告キャンペーン
  • 水道トラブルやフラワーギフト、葬祭関連のように、緊急性が高く、消費者が入念な比較検討するだけの時間を持たない商品やサービスを扱っている場合

上記のような場合には、心理的段階はそう気にする必要はなく、とにかく露出とクリック数の最大化を目指して広告を出稿するという戦略もあり得ます。ただし、この戦略を適応できる企業はそう多くはないはずです。

広告予算がそう大きくない企業、利幅や単価の小さい企業、顧客獲得単価に厳しい制限のある企業であれば、検索者の心理的段階に着目し、より戦略的にリスティング広告とSEOを使い分けたほうが、より費用対効果が向上するでしょう。

ありがちなテクニックに潜んでいる方便

よくリスティング広告の運用のコツとして(主に広告予算を消化すればするほど大きな報酬を受け取るタイプの運用代行業者や広告代理店によって)語られがちなことに、次のようなものがあります。

  • 入札単価が低くなりがちなロングテール的キーワードを網羅するように広告を出稿することで、広告の平均入札単価を引き下げる
  • 見込み客をより多く誘導するため、見込み客にとって興味・関心の高そうなキーワードをできる限り網羅して広告入札する
  • 広告コピーは魅力的でクリック率を稼げるものを優先して表示する
  • SEOではフォローできるキーワード数に限界があるのに対して、リスティング広告にはその限界がないので、広告を出稿するキーワードを大量にすることで広汎な見込み客を誘導する
  • SEOでは難易度が高すぎて露出しにくい人気キーワードに入札することで、SEOの不備をリスティング広告で補う
  • 広告を1度だけクリックしてそのままコンバージョンに至ることは少なく、多くは複数の日にわたる複数回のクリックを経てコンバージョンに至るため、クリック率の高いキャンペーンについてはコンバージョンレートが低くても長期間にわたり継続して広告を出稿し続けることで、中長期的に効果が現れる

これらは一見するとどれも正しいものに見えますが、これらはいずれも心理的段階という視点を欠いているという点には注意が必要です。もしかしたら、コンバージョンにつながりにくいクリックも誘導することで、より多くの予算を消化しようとしている業者の方便かもしれません。