作っただけで放置されているサイトが効果的に働くことがまずないことは、今や誰でも知っている常識です。にもかかわらず、ウェブ制作会社のサイトの大半は放置されています。この現状から脱出することが、ウェブ制作会社が生き残るための第一歩ではないでしょうか。一緒に考えていきましょう。(宣伝を含む記事です)

地方企業のウェブ活用

企業がウェブサイトを活用して収益につなげていくにあたって重要なことは、日々の運用です。新しい商品や役立つコンテンツを追加したり、コピーやレイアウトを見直したり、広告出稿を最適化したり、またはサイトの後ろの営業や製造や流通を整備したり、といった様々な施策があってはじめて、収益が生まれます。

ウェブサイトからの収益をさらに向上させたい企業は、さまざまな手法をウェブや書籍や勉強会などで学び、自分たちの状況に当てはめ、さらなる工夫を凝らし、実施と検証を繰り返します。この時代の話ですから、多くの企業にとってウェブの活用は社の命運を賭けた一大事業であり、その取り組みは必死です。

こうした傾向は地方に行けばいくほど顕著なもので、地方企業の創意工夫や熱心な勉強ぶりには目を見はるものがあります。地方、特に大都市圏に属さない地方では、もともと近隣の市場規模そのものが小さく、ネットを使って外部に打って出ざるをえない環境であるためです。

講師としての僕が見ているもの

こうした状況を受けて、各地の商工会や産業支援を担う財団法人、行政などを中心に、それらが主催するセミナーや勉強会などに僕が呼ばれる機会も、この十年と少しの間にだんだんと増えてきました。

僕が受け持つそれらのセミナーの受講者層は、主催が商工会または行政の場合には中小企業の経営者ないし後継者、主催が財団の場合にはEC事業者の店長兼経営者、といった顔ぶれであることがほとんどです。彼らに共通しているのは、ネット事業だけでなく会社そのものにも責任を持つ人々であるということです。

これらの受講者のほとんどは、高い意欲と深い知識を持ち、責任感と主体性、実行力を兼ね備えています。経営者であり、会社の命運を賭けてウェブサイトの運用を担当されている方々ですから、こうした特徴を備えているのは当然と言えます。

僕のセミナーが夕方ごろ終わり、その後すぐ事務所に戻ってさっそくサイトを修正する、というような受講者だって珍しくはありません。1分早く取り組めば1分早く儲かる、というのがその理屈です。こうした人たちに空論は通じません。話す僕のほうも真剣です。

僕は講師業は本業ではありませんが、しかしこうした環境で講師を務める機会に恵まれるのは刺激的なことで、緊張感とやりがいの感じられる好きな仕事の一つです。また(趣味のバイクで)各地に出かけていくのは楽しいものです。したがって地方での講演の仕事は(たとえギャラが安くても)お断りすることは基本的になく、機会は増えていく一方です。

とはいえ暢気に楽しんでばかりもいられません。懇親会などの場で個々のサイトの具体的な施策内容を聞くと、僕などでは脱帽するほかないような緻密な施策を実施しているような受講者に出会うこともあります。つまり受講者のレベルは確実に上がってきているのです。

地方の中小企業は困っている

熱心にウェブの活用に取り組んでいる地方の中小企業は数多く、全国津々浦々まで無数に偏在しています。その彼らが、一様に困っていることがあります。それは「相談相手になってくれる専門家が近くにいない」ということです。

僕などのような専門家らしき人の話を一方的に聞くだけの機会なら、商工会や財団が定期的に用意してくれます。またウェブを検索することでも、専門家のサイトで大まかな指針や戦略を学ぶことができます。しかしそうした場で学べることは、企業ごとの個別の事情に合わせた具体的なものではありません。

自社内で実施していた施策に行き詰まったり、困難な課題や問題が発生したり、などといった個別具体的な事案で誰かに相談したいと思ったとき、彼らには身近な相談相手がいないのです。そこであるとき僕は、こう提案してみたことがあります。

「ウェブ制作会社ならお近くにもあるでしょう。そちらに相談されてみたらいかがですか?」と。そして返ってきた答えに僕は衝撃を受けました。その答えとは次のようなものです。

繁盛店運営のコツを大工さんに相談する人がいますか? 私はサイトの活用で困っているのであって、制作で困っているのではありません。それに日々の修正なら私自身でやりますし、少し難しいことでも楽天ビジネスで安く早く済ませることができます」

つまりウェブ制作会社には何も用がない、ということです。制作会社は運用に関して何も知らないし何もできないので、まったく当てにならない、と言われました。サイトを活用できているように見える制作会社なんて見たことがない、とまで言われてしまいました。

高い眼識を持つ経営者たち

ウェブを活用して会社を支えている中小企業が数多くある一方で、外部から見てウェブサイトを有効に活用できているように見えるウェブ制作会社はほとんどありません。これでは、ある程度の成果を内製で出している会社が、相談する相手としてウェブ制作会社を選べないのも無理はありません。

現時点でウェブを活用して成果を出している中小企業のほとんどは、経営者か後継者が自らの手でサイトを改善し続けています。制作そのものも外注せず内製している会社も少なくありません。EC事業者に限れば、うまくいっているところのほとんどは内製と言っていいでしょう。

個人的に僕は、この状況を好ましいものであると考えています。ウェブというものは、それを活用する必要がある人や会社が自分で活用するのが本来の姿であるからです。おそらく、こうした内製化の流れは今後も変わらないか、または加速していくでしょう。

僕がそう考える理由のほとんどは、今から7年前の2006年に「中小企業のWeb制作業界への期待と実際」という記事に書いた通りです。この時代を生き残る中小企業にとってウェブサイトのデザイン(設計)は事業のデザイン(計画)とほぼ同義であり、ウェブサイトの運用は事業の運用とほぼ同義なのです。

前段で紹介した記事を書いた当時にはまだ少数派だったかもしれない「ウェブを活用する中小企業」は、それから7年が経過した2013年の今、すでに主流に近いところに位置しつつあるというのが、講演を通じて数多くの事業者と出会う機会を持っている僕の実感です。

そして、彼らの目は非常に肥えています。ごく単純に表現すれば「儲かっているサイトを見分ける目を持っている」ということです。向上心を持ち、情報収集を怠らず、そして厳しい目で毎日のように自社や競合のサイトを検証しているのですから当然です。

ウェブ制作会社は、彼らの眼識にかなうようなサイトを運営できているでしょうか? もしできていないなら、そのままで彼らから声がかかる日が来ると思うでしょうか?

ウェブを活用できないウェブ屋さん

ウェブサイトの活用には、手間や時間などのコストがかかります。有用なコンテンツを定期的に追加して潜在客を集めたり、セールスシナリオを洗練させてコンバージョン率を向上したり、といった取り組みのすべてでコストが発生します。もちろん広告で見込客を集めることもです。

そうしたコストがどれだけ投入されているかを見れば、そのサイトで儲かっているかどうかを判断することができます。つまりコストを割かれないサイトは、儲かっていないからコストを割かれないのであり、逆にコストを投入されているサイトは、儲かっているから投資されているのです。

内製でサイトを運用している中小企業の経営者は、上述のような視点で他のサイトを見ています。多くのウェブ制作会社は自社のサイトを作りっぱなしで放置していますが、このような視点に基づいてそうした制作会社を見たとき、どう見えるか考えたことがあるでしょうか?

  • この会社はサイトに投入するコストを投資だと考えていない
  • この会社はサイトにコストを投入しても無駄だと考えている
  • この会社はそもそもサイトを活用する能力を保有していない

これが中小企業から見たウェブ制作会社です。ウェブの活用で困ったときの相談相手として適切でないのは明らかでしょう。多くの中小企業にとってウェブへのコスト投入は、明日の顧客を創り、明日の利益を創るための、身を切るような投資です。自社のサイトの運用すらままならないようなウェブ制作会社には任せられないのは当然です。

サイトを放置しているその制作会社は、実際はクチコミだけで仕事が回っている人気の会社なのかもしれません。またはコンペで常勝の実力ある会社なのかもしれません。大手の下請けを堅実にこなす安定した会社なのかもしれません。そうした事情で自社サイトにまで手が回らないだけかもしれません。

しかしそうしたことは、どんなに優れた眼識を持ってしても外部からはわかりません。また背景にどんな事情があったとしても確かに言えることは、手をかける価値がないからそのサイトは放置されているということであり、その状態では能力を疑われたとしても釈明は難しいでしょう。

制作会社はどう考え、どう動くか

もしそうであれば非常に残念なことですが、もしかしたら地方の多くの制作会社の人は、僕がここまで書いてきたようなタイプの中小企業を見たことがないかもしれません。もしそうであれば、中小企業のほうもまた、あなたの制作会社を知らないでしょう。つまり接点がないのです。

内製で成果を上げている中小企業からすれば制作会社など眼中にない、という現実があるのであれば、制作会社はいやでも彼らの眼中に入るように仕込むところから始めなければなりません。彼らが求めることが自分たちに欠けているのであれば、それを補い、高める努力が必要です。

すべてのB2Bビジネスは、生き残る企業をクライアントにしなければ、自分たちのビジネスも先細りになり、いずれは死を迎えることになります。つまり極言すれば、儲かっている企業から求められる会社にならなければ先はないということです。これは制作会社も同じです。

地方のウェブ制作会社は転機を目前にしています。今こそ、生き残る潜在客に目を向け、それらの求めるところに合わせて自分たちのやり方を見直す時が来ているのです。それを現実のものとして成功させるために考えるべきことは何でしょうか。

  • 潜在客である中小企業の課題や問題は何か
  • 中小企業が制作会社に求めることは何か
  • 自分たちはどんな企業に何を提供できるのか
  • その実現のために何を考え、何をすべきか

事業を営む以上は考えていて当然の基本的なことばかりですが、突き詰めて考え、さらに日々きちんと実践していくとなると、そう簡単なことではありません。だからこそ、やれば競合に差をつけ、優位に立つことができるのです。

こうしたことを考え、実践していくためのヒントになりそうなことについて、僕は容易に知ることができます。講演に呼ばれることを通じて意欲ある中小企業との関わりがあり、彼らの声を聞く機会があるからです。そうしたヒントをウェブ制作会社の人々にそっと教えるようなセミナーが先月、岡山で開かれました。

考えるヒントを得るために

ここから後の文章は、地方のウェブ系セミナーイベント主催者に向けた宣伝ですので、興味のない方はここで離脱してください。自社サイトを作りっぱなしにしているのは問題だ、ということを胸に刻んで、頭と手を動かすことを始めるとよいでしょう。

僕は先月2013年2月、岡山で開催されているamplifizrというウェブ系イベントに呼ばれて「Webクリエイターに足りない、本当のSEOスキル」と題するセミナーを担当しました。ウェブ制作会社を対象とした内容で、次のようなことを趣旨としたセミナーです。

  • 効果的に機能するSEOのプラクティスとはどのようなものかを知る
  • 優良なクライアントはウェブ制作会社に何を求めているかを知る
  • ウェブ制作会社が優良なクライアントに恵まれるために何をすべきかを知る

この岡山でのセミナーの聴衆はわずか30名ほどと小規模なものでしたが、参加者によるTwitterでの実況ブログによるレポートなどを通じて、会場外からも多くの反響がありました。これは完全に予想外のことでした。次の理由で制作者向けにはニーズがないと考えていたためです。

  • 制作者は実装技術にしか興味がない。そしてSEOが過去、実装技術としての側面を強く持っていた頃には、制作者向けのニーズもあった
  • 現在ではSEOは実装技術としての優位性はほとんどなくなり、サイト運用におけるプラクティスとして優位性を発揮している。したがってセミナーのニーズは実装者から運営者のほうへとシフトした

冒頭から述べてきたように、最近の僕が呼ばれるセミナーは経営者兼ウェブ運用担当者向けばかりです。ウェブ制作者向けのものに呼ばれる機会も3〜5年くらい前まではそれなりにあったのですが、ここ3年ほどはほとんどなくなっていました。その理由も上述のようなものが予想できたため、特に疑問にも感じていませんでした。

ところが岡山でのセミナーでは、会場内外から予想外の反応がありました。その反応を見てニーズを確信したフォルトゥナの坂本さんが、大阪での再演版の開催を企画(5月11日)しました。

するとこれがまた予想外の大反響で、告知開始から数時間で用意した60席は満席となり、告知から24時間を経ないうちに追加で2度の増枠、最終的には会場のキャパシティの限度である111席まで増枠したもののすぐに満席、キャンセル待ちという状況です。

さらにこの状況を受けて、福井(4月20日)京都(5月18日)名古屋(5月25日)郡山(6月8日)札幌(6月15日)金沢(6月22日)静岡(7月13日)松山(7月20日)での再演が決定しています(この部分は適宜アップデートします)。

さて、僕は先にも述べたとおり講師業は本業ではありません。またセミナー開催なども本業ではありません。したがって自分でセミナーを主催することはないのですが、呼ばれれば喜んで出かけていって話します。そして、今この記事をお読みのあなたの地域にも出かけたいと思っています。

ウェブ制作会社自身のウェブ活用法に興味があり、各地のウェブ系イベント主催者とお知り合いの方は、この記事をその主催者に紹介し、再演版の開催を提案してみてください。今年の夏頃までに開催されるイベントに限って、基本的にお断りすることなく引き受けます受付は終了しました。なお諸注意は以下の通りです。

  • セミナーの内容は各地でのフィードバックを得ながら適宜アップデートし、常に最新のものをお伝えできるように努めます
  • 用意している内容はあくまでもウェブ制作者向けのものであり、その他の業種(例えばEC事業など)の参考になるものではありません
  • 本編の講演時間だけで最低でも90分を要します。質疑応答を含めると最低でも120分必要です。少し長めの枠を用意していただけると助かります
  • 希望者なら誰でも参加できるようなイベントでお願いします。社内研修や会員向け研修のようなクローズドセミナーはご遠慮ください
  • 謝金については基本的にはそのイベントの通常の規定通りで構いません。仕事というよりは趣味に近いものですから、薄謝は気にしないでください
  • 受講者数も特に気にしません。地方では大人数を集めることが難しいことは理解しています
  • 協賛をいただける企業さまも大歓迎です。各地のイベント主催者に取り次ぎますので、僕宛にご連絡いただければと思います。現在までに協賛の申し出をいただいた企業さまは次の通りです(オファーのあった順)
  • 僕への連絡はEメールFacebookアカウントへ、気軽に寄せていただければと思います。あまり丁寧なメッセージを送る必要はありません

ウェブ制作者に実装するスキルが求められるのは言うまでもありません。しかし現在、そのクライアントである中小企業がウェブサイトの活用に関して抱える課題は、実装に関するものだけにとどまりません。むしろ運用に関する課題を多く抱えています。

その運用面の課題を解決に導くことのできるノウハウを、ウェブ制作者は求められているのではないでしょうか。このテーマについて、多くの皆さんと一緒に考える機会を持てることを望みます。最後までお読みいただきありがとうございました。