SEOは有効なマーケティング手法にもなり得ますが、数多くのデメリットを抱えており、決して万能というわけではありません。短期的に見れば、SEOはメリットよりもデメリットのほうが多いと言っていいほどです。業者の甘言に踊らされることなく、欠点にも目を向けた上で長期的な視野を持ってSEOに取り組んでいくことが必要です。

調べ物をしているユーザーはコンバートしにくい

多くのSEO業者が「検索を通じて集客できるユーザーは興味や関心、動機が高いためコンバートしやすい」というようなセールストークを使っていますが、これは業者にとって都合のいい言い方であり、半分は真実ではありません。検索者が検索対象に興味や関心があることは確かですが、それがコンバージョンにつながるかどうかはまた別の問題であるからです。

日頃の私たちが検索エンジンをどう使っているかを思い返せば明らかなことですが、検索は基本的に調べ物に使うものです。実際に、この記事を読んでいるあなたも、今日だけでもすでにかなりの回数の検索を行ったはずですが、検索で見つけたサイトで何か買い物や申し込みをしたでしょうか? おそらくただの一件たりともしていないはずです。

アクセス解析を見ると検索からのコンバージョン数はそれなりにある、という意見もあることでしょう。しかしそれはほとんどの場合、サイトへのトラフィックが検索経由に大きく偏ってしまっているために、検索経由のコンバージョン数(率ではなく)が多いということに過ぎません。仮に、被リンクからもたらされるトラフィックが検索経由と同数程度あれば、コンバージョン数は被リンク経由のほうが有意に多くなるはずです。

検索はあくまでも情報を探す目的で使用されることが大半なのであって、多くは買い物や申し込みのためではありません。SEOの実施によって集客できるユーザーの大半は情報問題解決(調べ物)をしているだけであり、コンバージョン率はそれほど高くはなりません。

集客を検索に依存しすぎることはリスクになる

先の例のように、サイトへのトラフィックが検索に大きく偏っているというサイトは決して少なくありませんが、それが事業運営上の大きなリスクに直結していることには留意すべきです。なぜなら検索結果の順位は不動のものではなく、様々な要因によって変動する不安定なものだからです。

  • 検索エンジンのアルゴリズム調整によって順位が変化する
  • 主要ポータルサイトは検索システムを数年に一度変更する
  • キーワードが競合しているサイトの努力によって順位が入れ替わる
  • 今後より優れた検索エンジンが登場すれば、多く利用される検索システムが現在とは異なるものに移行する
  • 予期しないことでペナルティを受けてしまうことがある

上記の各項が、順位の変動を引き起こすリスク要因あり、今までにも起こり続けてきたことです。これらは常に存在するリスクであり、集客や売上をSEOだけに過度に頼っていれば、順位の低下は経営不振に直結し、経営上の危険となることは忘れてはなりません。

フィード購読者やメルマガ購読者のようなリピーターを増やしたり、実トラフィックをもたらす被リンクを構築したり、各種の広告を利用するなどのように、複数の集客経路を開発させることが、サイト運用や経営の安定化のためには不可欠です。

質の良くないユーザーが集まりやすい

SEOはクリックごとの課金や成果に応じた課金が必要となる各種の広告とは違い、内製している限りトラフィックを得ることに対する直接の費用は発生しません。このためコンバージョンに直結しない集客にも積極的に利用できるというメリットがあります。情報発信検索者との対話といった使い方は、このメリットにかなう適切な使い方です。

しかし一方で、SEOによって集客できるユーザーの大半は一見客であり、それは短期にコンバージョンを狙う場合には欠点となります。商品やサービスの説明に要するコストや、会社やブランドに親しんでもらうまでの時間的コストなどを考慮すると、彼らを顧客にするためのコストは非常に高くつくためです。

また彼らは、その商品やサービスに関するよい助言者に恵まれておらず、仕方なく検索しているのかもしれません。場合によっては、同種の商品やサービスを提供していた業者から見限られ、難民のようになってしまった人々かもしれません。SEOが成功し、このような人々が大挙してサイトに押し寄せてきた場合、以下のようなことも起こり得ます。

  • 成約につながらない不毛な問い合わせへの対応に追われるようになる
  • ほとんど反応が期待できない資料の発送に追われるようになる
  • 価格比較のための見積もり請求ばかりが多くなる
  • 同業他社が切り捨てたような不良顧客を引き受ける羽目におちいる

これらはコストがかかるばかりで収益にはつながらない例です。SEOによってこのような事態に陥ることもよくあるということもよく認識しておいたほうがよいでしょう。特に中小零細企業においては、不良客の増加によって不毛な問い合わせが殺到し、その対応に追われて仕事が回らなくなってしまったケースも多々あります。

基本的に、SEOで集客できるような一見客は理想の顧客像とは一致しません。ほとんどの場合、理想の顧客像とは「自分自身が熱心なリピーターで、なおかつ新規の顧客も紹介してくれるような顧客」のようなものであるはずで、これは一見客ではなくリピーターであることが前提となります。

  • リピーターの維持コストは顧客獲得単価よりも費用対効果に優れる
  • ライフタイムバリューの観点から、リピーターの増加には収益の増加と安定化が期待できる
  • 熱心なリピーターは優秀な営業マンとなり、新規の顧客を連れてきてくれる。このケースでの顧客獲得単価はゼロに近い
  • 熱心なリピーターによるクチコミがウェブ上で行われた場合、それは被リンクの増加につながる

リピーターを維持し、関係を構築していくことには上記のようなメリットがあり、これらは新規顧客の獲得よりもはるかに強力です。とりわけリピーターからのクチコミほど威力のある顧客獲得経路は他にありませんが、そうしたことは一見客ばかりが集まりやすくなるSEOには期待しにくい性質のものです。

短期的にはコストパフォーマンスが悪い

SEOの作業内容とは端的には「検索者が調べていそうな情報を発信し続ける」ということに尽きます。情報発信によって検索者の知識形成に寄与し、その体験を通じてブランディングやエンゲージメントの醸成を狙っていくのがSEOの真骨頂です。これをまとめると次のようになります。

  1. 検索者が探していそうな情報を、
  2. 高品質なコンテンツとして発信し、
  3. コンテンツを通じた対話によって検索者の知識形成に寄与
  4. 検索者との好ましい関係を構築していく

こうしたことは長期的には確実にプラスに働きますが、手間も時間もかかることもまた確実です。しかもその負担を引き受けるのは、SEO業者でもWeb制作業者でもなくサイト運営者です。なぜなら、検索者が知るべきことに関する知識を充分に持っているのは、そのサイトで扱うテーマにおける専門家であり、それはSEO業者やWeb制作業者ではなく、サイト運営者であるからです。

また、検索者の大半を占める調べ物をしているユーザーをコンバートにまで導こうとする場合、上記のプロセスに加えて下記のプロセスが必要となりますが、これも即効性は期待できません。

  1. 検索者の問題を解決するために十分な情報を提供する
  2. サイトやコンテンツを印象づけ、ブックマーク登録やフィード購読、メルマガ登録などを促し、再訪につなげる
  3. コンテンツページから製品やサービスの紹介ページに誘導し、魅力を伝え、興味を持ってもらう
  4. 競合する製品やサービスとの比較材料を提供し、選んでもらう
  5. 買ってもらう

いずれの場合も適切な情報発信は不可欠であり、それには多大な時間や手間がかかります。こうしたことを乗り越えて、検索者との関係構築やエンゲージメントの醸成を狙うのであれば、SEOは素晴らしい解決策になりますが、短期的な成果ばかりを求めるのであれば、広告などその他の集客手法を活用したほうが結果的には効率的である可能性は高いでしょう。

慎重に内容や価格を比較するユーザーが増加する

商品やサービスの内容や価格を比較するようなことは、実店舗で行う場合には購入者にも手間や時間がかかりますが、検索を使っての比較ではそうした手間や時間は大幅に軽減されます。また地理的な制約も時間的な制約もありません。ユーザーは好きなときに、好きなだけ比較することができます。

このため検索からの集客数が増加すれば、価格や内容を慎重に比較するユーザーが増えやすくなります。それだけなら特段の問題はありませんが、こうしたユーザーの増加が問題を引き起こすこともあります。

例えば、比較のためだけの見積もり依頼や資料請求、問い合わせなどが増加し、事業者側からすれば反応数が向上したように見える場合であっても、実際には売り上げにはつながっていないばかりか手間ばかりが増えていた、というケースがあります。このケースは決して少なくないだけでなく、SEOがうまくいっていると勘違いしていることすらよくあります。

次に、比較の対象になる機会が多くなれば、それに比例して比較検討の結果選ばれなかったという例も増加していき、これが問題になることもあります。もともと比較の対象ですらなかったものが、比較してもらった結果として選ばれなかったというだけなら損得なしですが、選ばなかったという事実を消費者がWeb上に共有した場合には、評判管理上の問題へと発展します。本来であれば発生しなかったネガティブ情報が、SEOの結果として生まれることになるためです。

慎重な比較を行うユーザーに買ってもらうためには、商品やサービスの内容や価格が競合他社のそれよりも優れている必要がありますが、商品やサービスの良さや価格については、SEOやユーザビリティのようなWeb上の施策だけで対応できるものではありません。経営全体の課題として取り組んでいく必要が生じてくることには留意が必要です。

安易なSEOは検索者とのエンゲージメントを破壊する

検索者にとって有益なコンテンツを発信するのではなく、短期的な成果を狙って売り込みばかりで役立つ情報に乏しいページを検索結果に露出しようとするケースもよくあります。こうしたケースでは、事業者と検索者との関係は簡単に破壊されてしまいます。

  • 上位に表示されていたからクリックしたのに、求めていた情報がなかった
  • 情報を探してサイトにアクセスしたのに、何かを売りつけようとする宣伝しかなかった

検索エンジンを使用する人のほとんどすべてはこうした体験を持っているはずですが、こうした体験をもたらしたサイトに好印象を抱く検索者は皆無であると言っていいでしょう。自発的かつ能動的に検索という行為を行った結果、自分の望むものとは違う検索結果を見せられれば、落胆するのは当然です。

情報発信や有益なコンテンツ作りにフォーカスせず、検索者の期待に反するページを露出しようとするSEOは、検索者の体験を貧しくし、エンゲージメントを破壊します。こうしたことは検索者にとって望ましくないだけでなく、サイトを運営する側のブランドにとっても重大なダメージです。

キーワードによっては難易度が極めて高い

インターネット以前であれば電話帳や情報誌で集客していた業種業態や、下半身関係のようなクチコミが期待できない業種業態、単価やライフタイムバリューが高く顧客獲得単価を高く設定できる業種業態などを中心に、SEOの競争が激化しており、上位表示が極めて難しい状況になっています。

  • クチコミが期待できないもの(美容整形、浮気調査、債務整理など)
  • 高単価の商品(不動産、自動車、住宅リフォームなど)
  • リピート率が高いもの(健康食品、消費者金融、各種保険など)
  • 従来なら情報誌で集客していたもの(転職情報、旅行情報、賃貸情報、中古車情報など)
  • 従来なら電話帳で集客していたもの(引っ越し、フラワーギフト、水道トラブルなど)
  • コンプレックス商品(ダイエット用品、ダイエット食品、かつら・養毛・育毛など)

これらの業種業態やそれらの主要なキーワードにおいては、SEOでの集客が成功した場合に得られる利益が大きい反面、難易度は非常に高くなっています。この難易度に打ち勝って競合サイトを押さえ、SEOにおける成功を収めるのは容易なことではありません。こと集客ということに関していえば、広告など他の集客手法との費用対効果をシビアに見ていく必要があるでしょう。

デメリットや欠点を知った上で取り組んでいく

多くのWeb制作業者やSEO業者が、SEOは費用対効果に優れた理想的な集客手法であるかのようにアピールしていますし、多くのサイト運営者もまたそれを信じていることが少なくありません。しかしここまで述べてきたように、SEOには数多くのデメリットや欠点があります。

  • SEOに過度な期待をするべきではないし、検索からの集客に依存すべきでもない
  • 短期的な成果をSEOに求めれば、検索者にとってもサイト運営者にとっても不幸な結果を招く
  • SEOは良質なコンテンツの制作と表裏一体であり、手間を省いて実施できるような近道はない
  • 主体的にSEOに取り組むべきはサイト運営者であって、SEO業者やWeb制作業者が助力できることは多くない
  • 競合との比較検討に勝ち抜くだけの商品力やサービス力がなければ、検索結果での露出拡大がそのまま売り上げに直結することはない
  • 検索者の期待に合わないコンテンツを露出することは、検索者とのエンゲージメントを破壊しブランドを毀損する可能性がある
  • キーワードによっては上位表示の難易度が極めて高い

SEOが持つデメリットをまとめると上記のようなものですが、これらを知らずに短期的で安易な施策を行えば、無駄な労力や費やしたり回収できない投資をすることになります。業者の甘言に踊らされて安易な方法に走るのでなく、これらを知った上で長期的な施策を行っていくことでが、よい結果をもたらすことになるでしょう。