ユーザー行動とは? クリック率や直帰率、滞在時間のSEO効果

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ユーザー行動のSEO - クリック率や直帰率、滞在時間による評価

ユーザー行動とは、実際のユーザーの行動(検索結果上でのインタラクションデータ)を検索結果の順位づけに用いるスコアリングアルゴリズムです。検索結果画面に表示されたURLの中から、ユーザーがどのURLにアクセスし、どのURLにアクセスしなかったか、検索結果画面に戻ってきたか、戻ってこなかったか、戻ってきたならそれはどの程度の時間を経過したあとだったかなどを追跡し、その後の検索結果に反映させます。

ユーザー行動のSEOへの影響

多くの検索エンジンは、実際のユーザーの行動を検索結果の順位づけに用いるスコアリングアルゴリズムを実装しています。検索結果画面に表示されたURLの中から、ユーザーがどのURLにアクセスし、どのURLにアクセスしなかったかを追跡し、その後の検索結果に反映させます。基本的な考え方は次の通りです。

  • クリック率 – 検索結果に並んだURLの中で、クリック率の高いURLとクリック率の低いURLがある場合、検索ユーザーが前者をより有用と判断しているとみなす。
  • 直帰率 – 検索結果に並んだURLの中で、直帰率の高いURLと直帰率の低いURLがある場合、検索ユーザーにとって後者のほうがより有用だったとみなす。
  • 滞在時間 – ユーザーが検索結果に並んだURLをクリックしてから再び検索結果に戻ってくるまでの時間(リンク先URLの滞在時間)がより長いほうが、検索ユーザーにとってより有用だったとみなす。

クリック率や直帰率、滞在時間は、検索エンジンがユーザーから直接的に得るフィードバックの一つであり、検索エンジン各社はこれを追跡・記録しています。これを直接的にランキングに利用することもあれば、ランキングの正当性の確認に使うなど、その使い方は検索エンジン各社によって異なります。以下はその例です。

Bing

Microsft Bingは検索結果ランキングにユーザー行動を使用していることを公表しており、ウェブマスター向けガイドラインの中で「ユーザーが検索結果にどのように接するかを考慮すること」の例として以下のような説明を行っています。

  • ある検索クエリ(検索キーワード)に対して、ユーザーは検索結果をクリックしたか。クリックした場合はどの検索結果か。
  • ユーザーはクリックした検索結果に時間を費やしたか、またはすぐにBingに戻ったか。
  • ユーザーは検索クエリを調整したり、作り直したりしたか。

Bingウェブマスター向けガイドライン1

Google

検索結果の順位づけにクリック率を考慮することについてGoogleは、これまで再三にわたって否定しています2。その理由としてGoogleは、botによる自動的な操作や、外国の低賃金労働者による人為的な介入になど「ノイズの混入が避けられない」ことを挙げているのですが、これは次の理由で奇妙です。

  • ノイズの影響のほとんどは検索連動型広告では解決できているのに、オーガニック検索では解決できないというのは考えにくい。
  • Bingはノイズの影響に対応できているのに、Googleに同じことができないとは考えにくい。

ユーザー行動を「直接的には」検索ランキングに反映させていないとしているGoogleですが、匿名化して集計されたインタラクションデータ(ここにクリック率や検索結果への直帰率、リンク先での滞在時間が含まれていると考えられます)を用いた機械学習を行っているといい、次のように説明されています。

匿名化して集計したインタラクション データに基づいて検索クエリと検索結果の関連性を評価することもしています。インタラクション データをシグナルに変換して機械学習することで、関連性をより正しく推定できるようになります。

コンテンツの関連性 – ランキング結果 – Google 検索の仕組み3

直接的な利用か間接的な利用か

多くのSEOスペシャリストが「Googleはユーザー行動のデータをオーガニック検索結果に反映させている」と考えている4一方で、Google自身の発表にあるようにユーザー行動を「直接的には」使っていないことを信じるだけの根拠もあります。

Googleが処理する検索クエリのうち15%程度はそれまでに一度も検索されたことのない新しいものであるといいます(2013年から2017年5)。こうしたクエリに対して直接的にユーザー行動を適用することは不可能です。すでに発表されているとおり、機械学習によるパターン認識を用いて、検索意図やユーザー行動を類推しているのでしょう。

また2015年のウェブマスター オフィスアワー6でジョン・ミューラー氏が述べていたように、クリック率などのユーザー行動は「大きな視点で見れば意味があるが、個々のページの単位ではノイズが大きすぎて意味がない」という指摘も重要です。無限のクエリ、無限のページを扱うには、ユーザー行動の直接利用には無理があるのです。

ただ、直接的であるか、機械学習を通じた間接的なものであるかの違いはあっても、ユーザー行動(クリック率や直帰率や滞在時間など)がランキングに影響していることはすでに公表されています。実際のユーザーを相手にしているウェブマスターとしては、ユーザー行動の改善を目指さない理由はありません。

RankBrainとポゴスティッキング

GoogleのRankBrainとは、ユーザーが入力した検索キーワードの意味やその背後の検索意図をよりよく理解し、より満足度の高い検索結果を返すための機械学習による検索アルゴリズムです。RankBrinは言葉とそれが表す概念を理解することで、検索ユーザーが探しているものを的確に見つけます。以下はGoogleによる説明です。

Google が 2015 年に導入した RankBrain は、Google 検索にはじめて導入されたディープラーニング のシステムです。Google 検索初の AI システムであるということに加え、私たちが “言葉” と “概念” がどのように関連しているかを理解するにあたり、非常に革新的でした。これらの関係性を人間は本能的に理解できますが、コンピューターにとっては複雑な課題です。RankBrain は、検索語句が実世界の概念とどのように関連しているかをより広く理解することにより、以前は探すことができなかった情報を見つけることができるようになりました。

Google Japan Blog: Google 検索を支える AI 技術7

SEOの観点で重要なポイントは、RankBrainがユーザーの満足度にしたがって検索結果を調整する機能を持った機械学習アルゴリズムであることです。RankBrainは、クリック率や直帰率、滞在時間といったデータを使って、ユーザーにとってより満足度の高いリンク先を検索結果の上位に引き上げ、満足度の低いリンク先を下位に押しやります。

検索結果のポゴスティッキングの図

上の図はいわゆる「ポゴスティッキング」を模式化したものです。ポゴスティッキングとは、検索ユーザーの行動を表すSEOの俗語で、検索結果に表示されたリンクをクリックしては検索結果に戻ることを繰り返すユーザーの行動をいいます。最初のリンク先に求めるものがなく、検索結果に戻り、次のリンク先に移動し、また検索結果に戻る、という動作がポゴスティッキングです。

RankBrainはこのポゴスティッキングを監視し、ユーザーにとっての検索結果の満足度を高めるために利用しているといいます8。ポゴスティッキングの最後にたどりついたリンク先の順位を引き上げ、途中のリンク先の順位を押し下げることで、ユーザーの満足度を高めようとするのです。これはユーザー行動が機械学習アルゴリズムに利用される例です。

まとめ

検索結果リストの中で、自サイトのURLのクリック率を上昇させ、直帰率を下げ、滞在時間を向上することができれば、得られるものは決して小さくありません。そのデータが検索エンジンのランキングにどう使われるかを別にしても、単純にアクセス数とユーザーの満足度に直結するからです。

  • 検索結果からのクリック率が高い – そのURLで提供されているコンテンツや機能が検索意図に合致するだろうとユーザーが判断したことを示す。優れたコンテンツや機能と、それを的確に表すタイトルやスニペットが存在することが強く示唆される。
  • 検索結果に戻る割合が低い – 検索意図が満たされれば(つまり用が足りれば)ユーザーはそれ以上検索しない。ユーザーが検索結果に戻ってこないことは、そのURLにアクセスすることで検索意図が満たされ、検索をやめたことが強く示唆される。
  • すぐには検索結果に戻ってこない – 検索結果に戻ったとしてもある程度以上の滞在時間の後になるサイトは、そこに注目に値するコンテンツや機能が存在し、それが検索意図を一定以上満たすものであることが強く示唆される。

ユーザー行動の改善には結局のところ、ユーザーの検索意図を満たす優れたコンテンツ(情報を求めている場合)または機能(ECサイトやツールの場合)と、それを的確に表すタイトルやスニペットの存在が不可欠です。これらはどんな形であれランキングに影響します。強く意識しながらSEOに取り組むとよいでしょう。

脚注

  1. Bing Webmaster Guidelines | Bing Webmaster Tools ↩︎
  2. The biggest mystery of Google’s algorithm: Everything ever said about clicks, CTR and bounce rate ↩︎
  3. コンテンツの関連性 – ランキング結果 – Google 検索の仕組み ↩︎
  4. Googleの検索ランキングに閲覧やクリックなどの行動データは影響する? SEOプロの結論はこれだ! | JADEのSEOプロフェッショナル相談室 | Web担当者Forum ↩︎
  5. Google reaffirms 15% of searches are new, never been searched before ↩︎
  6. 2015/01/13 English Google Webmaster Central office-hours hangout – YouTube ↩︎
  7. Google Japan Blog: Google 検索を支える AI 技術 ↩︎
  8. Google RankBrain: The Definitive Guide ↩︎